この世界だと女性は結婚したら専業主婦をするのが普通みたいです
食事が終わったら私は自分のお部屋に戻りました。
そして勉強机の上にノートパソコンを立ち上げて、情報を検索してこの世界について改めて調べます。
スマホやタブレット、ノートパソコンなどの他に普通に紙の参考書なんかもあるし男女の比率が同じくらいな以外は”前”とあんまり変わらないみたい。
洗面所の蛇口を上げれば水やお湯も普通に出てくるし、食べるものもあんまり変わらないみたいだしね。
で、早速この世界の男女比率を調べてみたけど、この世界の男女比は男性110人に対して女性100人ほどで男性のほうが少し多いようです。
また男は働き女は家庭を守るという風潮が非常に強く、女性はほとんど結婚したら専業主婦として育児や家事、子どもの教育に専念して、男性は働いてお金を稼いでくるという”前”の世界とは反対な感じのようです。
ただそれもあって女性が働く場所は少なく、看護婦、保母、スチュワーデス、アパレルのデザインや販売、会社の受付やキャンペンガールなどといった女性がやったほうが良いと思われている職業やそれ以外だと教師、医者、ニュースキャスター、俳優や声優アイドルなどの芸能関係といった女性もやろうと思えばやれるといった職業程度みたいで、高校や短大を卒業したら花嫁修業をしつつ、お見合いをして結婚をするのが普通みたい。
これはこれで男女差別がまかり通ってる気はするけど、”前”の処世にとってきつい世界に比べれば天国のような世界ね。
男性は社会全体から保護される存在であるとか言ったことはまったくなく、逆に男性のほうが多いのもあって競争が大変みたい。
私としては”前”は高慢で女性を見下し、女性に対して態度が大きかったり、女性を毛嫌いしている方ような男性が多かったからこれはすごく嬉しけどね。
”前”の世界は男女比は概ね1:9ほどで女性が多く余っていた。
ただそれはここ最近100年ほどのことで、昔は”ここ”と同じように男性のほうが多かったらしい。
それもあって男性は高圧的か女性嫌い、家に引きこもっている場合も多かった。
国は一夫多妻制を推奨しているが、結婚できない場合でも精子バンクの精子を使っての人工受精なども推し進められていてここ最近ではその割合のほうが多くなっていた。
私の家も”前”は母は人工授精で姉や私を産んでいたから、父親はいなかったし。
で、男性は行政により生殖能力毎にランク分けをされている。
それにおり、男性のいる家族への生活・教育などに対しての補助金の支給額が異なる。
男性の生殖能力は精液の量、精液中に含まれる精子の数や運動能力生命力、子供が男になるY染色体を持つ精子のy精子の実数等によってきまる。
すべての卵子は一つのX染色体を持っており、Y精子と受精すると男児に、X染色体を持つ精子X精子と受精すると女児になる。
つまり性の決定には卵子は関係せず、精子次第である、Y精子とX精子の性質の違いを利用して、男児希望の場合はy精子と卵子とを受精しやすくすればいいということになるのだが、そんなに単純なことではない。
X精子は酸性に強く、Y精子はアルカリ性に強いという性質を持っています。
すなわち腟分泌液のように酸性の強いところでは強く、頚管分泌液のようにアルカリ性が強いところでは弱い。
また精液や精子量、あるいはY精子が減少している状態では、Y精子の方が膣内で淘汰されてしまい、X精子の方が生き残りやすくなるため生まれてくるのは女子ばかりとなる。
100年ほど前までは男性が射影した際の平均的な精液量は3ミリリットルほどで、その中に3億ほどの精子が含まれy精子は約2億ほど、子供が女になるx精子は1億ほどだったらしい。
だが最近は男性の精子料や精子数、そしてY精子の比率自体が落ちていたらしい。
この世界では一夫多妻制の推奨や、結婚できない女性への精子の提供のための精子バンクの精子による人工受精、行政により生殖能力毎のランク分けや男性への補助金といったものはないみたい。
その代わり行政によるお見合いの場などが用意されていて、結婚相手を探すのはそんなに難しいわけではないらしい。
もちろん相手を高望みしなければではあるみたいだけど。
あと”前”と違い高校での恋愛は推奨されているけども、不健全性的行為とか不純異性交遊と呼ばれる行為は少なくとも建前では禁止されてるみたい。
高校生でも恋人がいたりするのかぁ。
”前”とはおおちがいだね。
そして、ウォークインクローゼットの前に行き、扉を開けて中に入った。
中には服が入っているが、高校の制服を探すとすぐに見つかった。
可愛らしいデザインのセーラー服だ。
公立の高校にしてはずいぶんとデザインが良いというのは嬉しいよね。
乃木坂というグループアイドルの制服がこの制服を参考にしてるとか?
うん、制服が可愛くてよかったよ。
私は制服に着替えてお兄ちゃんのお部屋のドアをノックした。
「お兄ちゃん、高校の制服を着てみたから見てみて」
ガチャッとドアが開いてお兄ちゃんが顔を出し、制服姿の私を見て言った。
「うん、かわいいぞ。
馬子にも衣装ってやつだな」
「う、うん、ありがとうね。
ありがとう、お兄ちゃん。
じゃあ戻るから」
「ああ、わかった」
私は笑顔を取り繕ってお兄ちゃんにそう言うと自室に戻った。
馬子にも衣装……かぁ、
制服は可愛いけど、私はやっぱり可愛くないのかな……。
学校に行くのがちょっと憂鬱になってきたな。
ちなみに馬子にも衣装というのは、原義としては馬子のように下賎な者でも立派な衣装を着ると立派な人に見えることで、馬子というのは駄馬をひいて人や荷物を運ぶことを職業とした下賤とされる人なのです。
なので本来的には褒め言葉ではなく、失礼に当たる言葉、もしくは着慣れていない上等な服を着ている人を揶揄する言葉だったりします。