58 ……再構築完了
「『主の敵は、剣によって裁かれた』」
そこはまさに、神が支配する世界だった。
儀式の祝詞によって、そのまま現象が顕現し、言葉通りに世界は巡る。
あらゆる法則よりも先に、神のルールが先立つのだ。
宙から現れる光の剣は、出現、接近すれば、過程を無視して突き刺さっている。
回避もガードも無効の攻撃が、さも当然のように行われる。
しかも、
「オ、オオオオオオオオ!!!」
攻撃の一つ一つが、確実に『魔王』を削いでいく。
呪いを祓い、身体を抉る。
受けたことを無視できるダメージではない。
このまま手をこまねいていれば、削り殺されてしまう。
「コノ程度デェェ!」
「『無情の王、裁きの雷、摂理の翼。咎人は、その身を焼かれ、四肢を捥がれて、奈落へ落ちる』」
光の剣が現れると、気付けば両断されていた。
その傷口は焼けただれている。
再生能力は見せていなかったはずだが、いつ気付いていたのか?
これでは、再生し難い。
さらに、厳しく押し込まれる。
「!!」
光輝く騎士たちは、いつの間に現れたのだろう?
神官を囲むように顕現している。
込められた力の質は、明らかに異なる。
そして、
「ッ!?」
「『心臓は、奈落の獣の口へ投げられる』」
気付けば、心臓を突き刺されていた。
何度も受けたことで、ようやく『魔王』は気付く。
見えているだけで、剣や騎士は、存在していないのだ。攻撃して、ダメージを受けたことによって、それらの存在が確定する。
魔法で同じものを作ろうと思えば、脳が焼ききれるまで酷使しても、演算しきれない複雑な陣と演算が必要となってしまう。
それを、単体、なおかつ、祈りだけで為す。
この技術を、なんと呼ぶか?
それは、『魔王』すらマトモに見たことはない。
「ウッ!」
虚脱感が『魔王』を襲う。
現れた巨大な犬のような怪物が、抉りとった『魔王』の心臓を喰らったのだ。
再生し、心臓の機能を持つ器官は作った。
だが、かなり鈍い上に、エネルギーのかなりの部分が制限されている。
あの一連で、力の何割かが封印された。
あまりにも強力無比な力だった。
「『磔の聖人。逆さの十字架。贄の血は空へ登り、影は消えて、烏は墜ちる』」
祝詞と共に、儀式は進んだ。
この中にいる限り、決して逃げられない。
役割は既に与えられ、放棄することは出来ないのだ。今の『魔王』の役目は、処刑される罪人。
不可逆、不可避の劇だった。
全ての存在が、支配下に置かれている。概念のレベルで、生物に役目を負わされている。
(……コノ我ガ、支配?)
耐え難い事実だ。
全てを支配してきた『魔王』にとって、あり得てはいけないことだ。
頭の中で、血管が切れる音がする。
不届き者を相手に後手に回り続けざるを得ない、その状況が我慢ならない。
力の大部分が封印されているが、そのタガが外れかかったのを感じた。あまりにも強すぎる呪いが、外から付けられた封印を壊しかけている。
「ガィエエェェエエエエ!!!!」
「獣め……」
凝縮し、放出したエネルギーを推進力に、『魔王』は跳んだ。
暴れ狂う力を、真っ直ぐに据えた。
そのまま、神官の結界にぶち当たる。『聖域』に小さなヒビが入った。
怒りに任せて、結界をやたらめったら殴り付ける。
固すぎる結界によって殴る手が痛むが、再生しながら、さらに勢いをあげ続ける。
だが、神官には、些かの乱れもない。
冷徹な瞳で、『魔王』を見つめ続ける。
「『朽ちて滅ぶ。蘇る余地はなく、完全なる無を神は与えなさる』」
「ェェエエア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
「『第二章 滅亡の節 天啓の剣』」
全身に剣が突き刺さる。
滅多刺しどころか、原型すら残らない。
一つ一つの剣が、爆弾のように爆ぜ、焼き、対象の力を封じていく。
まさに、理不尽そのもの。
この中の空間は、完璧に、神官を通じたそれによってコントロールされていた。
「ア、アア……」
王から、瞳の光が消える。
完全に命が消えた時の反応だ。
幾千幾万という命の終わりを見てきた神官だから、断言できる。
完璧に、『魔王』は死んでいる。
そして、
※※※※※※※※
「我ハ、死ナヌ……」
「…………!」
再び、『魔王』は動き出す。
「……どういうことでしょう?」
「我ハ、死ナヌ!」
肉体が、再構築されていく。
あらゆる傷が、桁違いの速度で。
別の能力が使われていると、神官は判断する。
「貴方の力、色々と考察してきました。何かしら、貴方を『魔王』足らしめる力があると。ですが、やはり分かりませんねぇ。知っている人に聞けば良かった」
「神官ヨ! 貴様ハ、強者ナリ!」
「彼女は、貴方が私より強いと言った。ですが、やはりそうは思えませんね」
呪いの散弾が飛ぶ。
音速の倍以上の速度で、弾けた。
高位の結界だとしても、一瞬で犯され、溶け、貫通するだろう。
しかし、神官の前で、弾は止まっている。
一切気をやっていない様子から、破られるとはまったく思っていなかったのだろう。
神官の自信の程が、見て取れる。
「いや。全盛期より力は落ち、この迷宮を壊すために力を使い、何度も過去の異物と対決した。互角にやるには、削りすぎましたか?」
「見タイゾ! 貴様ノ死ヲ! カツテノ『勇者』タチニモ負ケテオラヌ!」
呪いを集める。
全てが体内へと収まっていく。
肉体が隆起し、翼が生える。
より一層、力が強まるが、まだ神官の余裕は崩れそうになかった。
さらに邪悪に、より強固に。
王の肉体が作り替えられていった。
「『主は、盾を掲げられた』」
「貴様ハ、カツテノ『賢者』ノヨウダ! 術理ヲ知リ尽クシ、世界ヲ知リ、ソシテ、ソノ目ハ野望ニ満チテイル!」
呪いと『魔王』の血肉によって、剣が作られる。
禍々しさは、明らかに普通ではない。
見ただけで、呪い殺されそうだ。
そんな劇物のような剣を振りかぶり、その膂力に任せて切り伏せた。
地平線の先まで切ってしまいそうな攻撃だ。
だが、呪いの刃先は、神官の数センチ先で止まる。
これでも、神官の結界を破るには至らない。
「『射られた矢は地に落ち、朽ちゆく。刃は折られて、錆びれ落ちる。野に咲く華に目を取られ、武器持つ愚者は、膝を折る』」
「貴様ノ大望、壊シテミタイ!」
それどころか、剣は半ばから折れた。
剣は再生しようとするが、途中で再生が止まる。
さらに、『魔王』は力を込めようとするが、逆に膝をついてしまった。
その姿勢から、動く事が出来ない。
戦意を挫かれる。精神にまで作用する、強い拘束の術だ。
術中にはまった『魔王』は、凄絶な笑みを神官へ向けていた。
「『緩やかに、穏やかに。消えゆき、落ちゆき、灯火の如く吹き消えよ』」
「神官ヨ! 貴様ノ名ハ、」
「『第六章 拘束の節 慈愛の盾』」
盾が、掲げられた。
巨大で、厳かな、神聖さを凝縮したような盾だ。
戦おうという意思をへし折り、その場の全ては主へと頭を垂れる。
「ナンダ? ワレニ、オシエ、」
「『主は、天より苗を植えられた』」
そのまま間を置かず、さらに神官は詠唱を続ける。
一切、『魔王』に構うつもりはない。
攻撃をさらに展開し続ける。
「ククク、ツレナイ、ナ……!」
縛る拘束はとても重く、『魔王』ですら、指一本も動かす事が出来ない。
突破口すら見えないほど、この術は、格が高い。
現状、これに対抗出来る術理は、数多の術を知る『魔王』ですら、知らない。
だが、そのままやられるつもりもなかった。
「AAAAAAAAAAAAA!!!!」
「! 『恵みの一滴。大望の一房。始まりの一。大地に絡み、支え続ける強き者!』」
術理で対抗できない。
なら、次に試すなら、力業である。
呪い、いや、身体中のエネルギーを集め、暴走させている。
僅かにでも諦めれば、そのまま意思にすら絡み付き、全てを止めるであろうほどの、極限の拘束だ。
一瞬ですら、止められない。
力を振り絞り、抗うことに全神経を費やす。
「『吸い取り、芽吹かせ、実を成してこその、生なりや! ならば、尊き強きその命! 土となるのは、不浄の命が相応しき!』」
「コAAアアアアアAAAア!!!」
また、肉体が変形している。
瞬きを挟めば、そこには異形の尾があった。
地面に縫い付けられる『魔王』に、神官の攻撃が降り注ぐ。
植物の種子が、『魔王』の身体に突き刺さった。
その種子は、すぐに血と魔力をエサに、芽吹き、華を咲かせる。
「AARRRRRR!!!」
さらに、植物は成長する。
あっという間に太い幹が生成され、青々とした葉がつくられ、木の実を成していく。
出来上がった木、ひとつあたり、都市のエネルギーを賄える。
そんな木々が、『魔王』を土壌にして計六つ。
なおかつ、『慈愛の盾』の拘束は、今もなお継続している。
しかし、その全てが、破られかけている。
「……腐っても『魔王』か」
雄叫びと共に、身体は確実に持ち上がっていく。
大量のエネルギーを奪われ、未知の拘束の術を受け、それでも、『魔王』は折れない。
馬鹿げたエネルギーを放出し続ける。
そして、
「!!!」
押さえつけられた手は、剥がされた。
にやり、と『魔王』は嗤う。
「ドウ、ダ……? 神カ……」
「『嗚呼、祝え。世界樹は今生まれる。負を聖へ、魔を正へ、死を生へ変える、奇跡の生誕を』」
その『魔王』に、間髪入れず、神官はさらに攻撃を仕掛ける。
「グッ! クソッ!」
身体から生えた木々は、ひとつに成った。
さらに幹を太くし、枝を伸ばして、葉をつける。
聖なる力をふんだんに宿しており、それは、吸い上げた『邪気』の多さを示していた。
生まれた『世界樹』は、さらに大量の邪気を『魔王』から吸い上げ、聖なるものへ変換する。
さらに、
「『第十章 殲滅の章 世界樹の華』」
生まれた『世界樹』の頂上に、華が咲く。
たった一輪の、美しき華だった。
それは、目が潰れる程に眩く輝きいた。
華は輝き、光が集まる。
極光は、形を為す。
より鋭く、より殺傷性を高めるように。
これまで吸い上げた、国が滅んでもなお余りあるのエネルギーの全てを、攻撃に転じさせる。
そして、
「墜ちろ」
「!」
音を呑む。
光が消える。
そう思えるほど極大の、大爆撃だった。
一条の矢として放たれたそれは、莫大な『魔王』のエネルギーを吸い上げ、光として放ったもの。
属性を変換しているために、間違いなく効いただろう。
一定量に満たなければ、大地から追加のエネルギーを調達し、放つのだが、今回はその水準を大幅に上回ってくれた。
神官本人すら、予想外の威力だ。
間違いなく直撃した。であれば、灰になるのは、必定である。
死に至らない、理由がない。
「…………」
煙が舞う中、神官は佇む。
注意深く、一瞬の油断もなく観察し、
「我ハ!」
「やはり……」
真正面から、『魔王』は神官へ突っ込んできた。
「生きていましたね。この化け物め」
「貴様ノ、死ヲ望ム!」
翼、尾に続き、山羊のような角が見える。
やはり、力は先程より高まっていた。
剣は、同じく神官の目の前で止まる。そのまま突き刺されば、喉を貫かれていただろう。
詠唱を最優先で封じようとする辺り、対策を良く分かっている。
「不思議ですね。どんな種なのでしょう?」
「貴様ノ能力、段々ト分カッテキタゾ!」
より、魔物の王に相応しい姿に近付いている。
そして、その度、劇的に強くなっている。
この進化のような何かは、どんな条件で、何を秘めているのか?
神官には、さっぱり分からない。
だが、『魔王』の方は違うようだ。
喜色満面の『魔王』は、はしゃぐ子供のようだ。
「儀式ニヨッテ神へスガリ、ソノ奇跡ヲ賜ル! 神ハ、最モ高キ者! ソノ奇跡ハ、誰ヨリ、何ヨリ、優先サレル! 貴様ハ、己ヲ儀式ノ内ニ組ミ込ンダ!」
「もう少し、試してみますか。『主は、天より矢を射られた』」
「貴様単体デ、幾千トイウ信者ノ祈リト同等ト、神ニ認知サレタノカ! 貴様ハ、イワバ『神殿』ダ! 本来、時間ト人ト手間ヲカケテ儀式ヲ行ウ場ヲ、ソノ身一ツデ成立サセテイル!」
その推測は、正解だった。
本来、こういった儀式を伴う高位の神聖術は、幾千の信者と、神聖な空間、大量の贄、祝詞などなど、発動までに多大な時間が必要となる。
しかも、そうして用意した『場』を途中で破壊されれば、儀式は途中で止まってしまう。
強力無比な代わりに、使い勝手はすこぶる悪い。
それが、神聖術の弱点だ。
だが、神官は従来のそれとはまったく異なる。
この星において、神に最も近く、その恩恵を賜りやすい彼は、単体で『場』を整えられる。
その有り余る力で空間を清め、幾千人分の祈りを捧げ、自らの肉を削いで、儀式を無理矢理成立させる。
そして、自らの立場を、その場限りの『神』として成立させているのだ。
もちろん、本来の神にはなり得ない。
同じ位置まで上り詰める事は出来ないし、その権能も擬似的なものだ。
だが、神の名の元に、その『場』において、彼は他の誰よりも優先される存在となる。
故に、
「今ノ我デハ、突破デキソウモナイ……」
「『それは野を越え、山を越え、潜む敵を襲う。音もなく、陰もなく、奇跡の一矢は誰の目にも留まらない』」
「コノ世界ニ、貴様ヲ傷ツケラレル存在ハ、誰一人トシテ居ランダロウ」
肉体を、変化させる。
どんな攻撃も、防御も、無意味なのだ。
ならば、
「無駄です」
「ヤッテミネバ分カランサ……!」
備える。
次の攻撃へ向けて。
そうすれば、
「『千里先の林檎が落ちた。主の矢は、正しく芯を射ぬく。一射必殺の体現なり』」
「コイ!」
「『第八章 必滅の節 破魔の矢』」
空から、一条の光が降ってきた。
重要な器官が破壊されるのを防ぐため、『魔王』は肉の壁を作り出す。
だが、全ては、すり抜け、当たる。
心臓へ、脳へ、四肢の腱へ、眼球へ、鼓膜へ、喉へ。身体構造を変化させ、そうした急所の数や位置は、十秒前とはまったく違う。
違うはずだが、完璧に、矢は射ぬいたのだ。
しかも、
「フ、フフフ……! 見、事……!」
矢に射られた箇所の再生が、阻害されている。
その軌跡にあるものの破壊は、不可逆となる。
再生を無効にする、そのための術だ。
力なく、『魔王』は倒れる。これは確実に、殺せたはずだ。
「詰みですね」
脳があったということは、思考を司る部分はそこだということ。
破壊されれば、死は免れない。
不可逆の攻撃で脳を焼いたのだ。これでまだ生きていられるはずがない。
神官は、『魔王』の方へ歩み寄る。
死体を回収し、研究に役立てるためだ。
出来れば生かしておこうと思ったが、死体でもそれなりに価値はある。
ここには居ない、迷宮の元の主への言い訳を考えながら。
「ふーむ、この能力、何かに使えそうです」
他の人間で能力を再現。
細胞を移植し、強化人間を作る。
利用価値は、いくらでも思い付く。
新しい玩具を見つけた子供のよう、というのは言い過ぎだが、それでも少し胸を高鳴らせている。
そして、
「一位殿も案外慎重だ。小生がこの程度の相手に負けるなど……」
「我八……」
反応が遅れる。
「! そんなまさか!」
「貴様ノ……」
警戒を解いていた。
既に、『場』を崩してしまっている。
神聖術の弱点は、
「死ヲ望ム!」
即座に起動出来ないことだ。
「グ、がああああ!!!」
神官は、大きく吹き飛んだ。
殴られた衝撃は、凄まじかった。
溜まりが出来るほど血を吐き、裂けた皮膚から、肉と骨が見える。
初めて、ダメージが通った。
しかもこれは、致命傷だ。
受けてはいけない攻撃を受け、神官は、這いつくばって動けなくなる。
「ば、馬鹿、な……何故、死んで……?」
「我八、死ナヌ。今度コソ、コノ世ヲ滅ボスノダ。コンナトコロデ、死ネナイ」
片目は、複眼に変わっていた。
足は山羊のような蹄に変形している。
剣を持つ方の腕は、明確に肥大化している。
変形の度に強くなっているが、今回は特に異常だった。
あからさまに、強くなっている。身体機能、エネルギー出力、どちらも前の倍以上だ。
これは、あり得ない。あり得ては、いけない。
「ふざけている……」
「不条理、理不尽! ソレコソ、『魔王』ナリ!」
恨みがましく、『魔王』を睨む。
それに『魔王』は、高らかに嗤う。
「我八、魔ノ王! 世ノ魔ノ全テヲ統ベル、無比ノ大王デアル!」
「…………」
声高に叫ぶ。
それは、戯言でも、妄言でもない。
純然な事実を、ただ自信を持って、宣言しただけなのだ。
あらゆる生命を喰らい尽くしても余りある、『魔王』の強さを知らしめる。
「貴様ヲ殺ス! ソシテ初メテ、我八一歩ヲ進メルノダヨ!」
「…………」
冷ややかに、神官は『魔王』を睨む。
一足一刀の間合いに入られている。
これでは、術を発動する前に斬られるだろう。
だが、至って冷静なまま、話し続ける。
「好きなだけ、驕れ。愚か者め。貴様ごときに滅ぼされるほど、世界は安くない」
「ホウ? 世界ヲ滅ボソウトシタ経験デモアルノカ?」
「小生の力がこれだけと、勘違いしている貴方は愚かだということです」
神官は、決して怖じけない。
その必要が、どこにもないから。
分からないはずがない。この言葉は真実であり、神官はまだ全力を出しきっていないのだ。
第二幕に向けて、『魔王』は備えて、
「世界の壁は厚く、高い。誰も、そこを理解しようとしない……」
「?」
「だから、貴方はダメなのです。滅ぼすものとしか、世界を捉えていないから」
神官は、『魔王』の後ろを指差した。
不意につられて、そちらを向く。
すると、
「!」
「世界はそう、単純ではないのです」
三人の人影が見える。
そして、見えた瞬間には、衝撃を受けた。
ゴミのように宙を舞い、何度も地面に叩きつけられる。
強き者との、一対一。神官に気を取られ、忘れていた。
あと三人、ここには敵が居たことを。
「決着を、つけに来た」
「ヒヨコ共メ! マタ返リ討チニシテクレル!」
稼いだ時間は、およそ三十分。修行場での時間に換算すると、およそ三年。
十二分に、神官は役割を果たしたのだ。
その成果は、『魔王』を殺し得る。
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