第6話 エステナがおれを嫌いな理由
俺は再度ヴァルガを探しに城を出た。
ルリがついて行きたいと言い出したため連れていくことにした。
「お兄ちゃん。あれ」
ルリが、指はした方向に黒い鱗が生えた巨大なしっぽが木々の間に見えた。
ヴァルガだろう。
ゆっくりとその場に近づく。
するとそこいたのは、やはりヴァルガだった。
寝ているのかいびきが聴こえる。
「起こす?」
「いややめとこう」
ヴァルガを監視できる位置へと移動し、起きるのを待つ。
フォレストウルフが森の中から出てルリに捕まっても振られたりしていたが、途中からフェンリルが来たためルリがそっちに飛び移った。
「悪いな。フェンリルにそんなことするのは……」
「いえ、構いませんよ? 気持ちいいですし」
確かにフェンリルの表情が次第に緩やかになっていくのがわかる。気を許したのか、腹を見せ甘えているのがわかる。
――――あの誇り高いフェンリルが、ルリといるとペットにしか見えない。
「お姉ちゃん。みーつけた」
エステナが空から舞い降り、フェンリルをもふっていたルリを抱きしめる。
「邪魔」
ルリがフェンリルを触っている時とは正反対の表情で言った。エステナは、それが結構来たのか、こっちに寄ってくる。
「お姉ちゃんついに妹離れするなんて………」
エステナが俺の隣で落ち込む。
俺の事気づいていないのだろう。
「いやあれは関係ないと思うけどなぁ。ずっとお前のこと心配してたし」
「なんでそんなことあなたにわかるんですかぁー!」
エステナが俺を方を振り向くと、徐々に顔が青くなっていく。
「ただいまぁ」
ルリが城から持ってきた弁当を食べに俺の膝に座る。
その様子をみたエステナは、自分の膝をわざと開けルリにアピールするが、ガン無視されていた。
「最近エステナとなんかあったのか?」
「別に〜」
「そうです! あなたには関係ありません!」
ルリが俺の口にサンドイッチを入れ黙らせる。
多分世界樹関係だろう。俺は世界樹には近づけないため仕方ないが、ルリも同じはずだがエステナの姉と理由で近づくことが出来るのだろう。
「やっぱり世界樹か」
俺がそういった途端、二人が驚いた顔でこっちを見る。
「分かるだろ普通。エステナがルリの前に現れるのは大抵世界の理の事だしな」
ルリは、頷き、エステナは俺に魔法をぶつけようとするが、ルリに全て防がれてしまった。
「お姉ちゃん邪魔しないで!」
「だめ、貴女じゃ返り討ちになる」
「でも!」
「いいから、正座」
「はい......」
エステナが正座する中ルリは持ってきたフルーツをかじり始め、俺に1口くれた。
甘くさっぱりした果実、見た目は赤く周りに種がついている。
今度ユイスに聞いてみるとしよう。
「なーなんでエステナは俺を避けるんだ? 家族なのにどうしてだ」
「そ、それは......」
エステナが、俺からまた離れていく。
だがルリに足を掴まれ戻されてしまった。
ルリが、エステナの耳もとで何かを小声で伝えるとエステナがうなずいた。
その反応を見ていた俺にルリが、近づいてくる。
「ぱぱのせいだってさ」
耳もとでルリが小さな声で言ってきた。
俺とルリの親父は、世界の魔制する魔神だ。
そのせいか、かなり嫌われ者らしく、実はさみしがりやだったりする。
エステナの父親は、最高神だ。そのせいか、魔神の親父と仲が悪い。
ルリが姉というのが、ルリは魔神とエステナの母親である女神の間に生まれたからだ。
五千年前に出会うまで腹違いの妹がいるのは知らなかった。
そのせいか、ルリは出会ったとき以降ずっと俺のことを「お兄ちゃん」と呼ぶ。
「なるほどなぁ。相変わらず嫌われ者だな親父は」
「パパのこと悪く言うのだめ!」
「ごめんごめん」
ルリが俺の膝上で暴れだす。
かわいいから許しておこう。
「まぁ、とりあえず世界樹任せたぞ」
俺はそう言って、ルリを膝からおいて歩き出す。
だが、ルリに抱きしめられ歩くのが惜しくなっていく。
ルリの綺麗なドレスが泥で汚れるため俺は、足を止める。
「ほら、ちゃんと歩け」
「抱っこ」
「はいはい」
俺は地面の転がったルリを持ち上げる。
後ろにいるであろうエステナがいるほうへ手を振り、ヴァルガの尻を蹴り飛ばす。
驚いてこっちを振り返るヴァルガ。
落ち込むがなぜか何もしゃべらなかった。
俺はヴァルガの背にルリと乗せ、大空をヴァルガと一緒に飛ぶ。
ルリは、ドラゴンに乗るのが慣れていないのか、落ちそうになる。
俺はルリを固定するように足で囲み、ヴァルガに乗って城へと戻る。