第41話 進軍
人間界への転移魔法を完成させるのを、月夜が照らす崖の上で、座りながら眺めながら待ちつつ、疑問が溢れかえっていた。
どうして吸血鬼を殺しているのだろう。千年の平和を崩すことしか考えていないのだろうか。勇者を再度召喚したところで返り討ちに会うというのに。
思いっきりため息をつく。
「なんでなんだろうなぁ......殺されたいのか?」
転移魔法で作られている魔方陣を見ながら独り言を言う。
人間にはほんとあきれる、自分は神だの、聖女だの、生贄だの、ほんとよくわからない。人間にとって魔物は、ただの害虫でしかない。魔物たちは、人間の世の中を正すために神々が作った存在だというのに。
「多分、ユリウスが進軍させたことが影響だろうよ」
隣にフルプレートのアーマーでゼノが俺と同じように座った。
座りにくいだろと思いつつ、ユリウスのことを考えた。
あいつは一体何をしたかったのだろう。
「だろうなぁ。特に親父たち関連だとめんどくせぇもんなぁ」
「いや分かんねーよ! そんな納得そうな顔されてもよ!」
今この世界においてこのことを知っているのは、俺とルリだけだ。
過去に神のことで滅びた国は五千をも超える。
いつもそれを眺めては馬鹿だろと思っていた。
滅びた理由は、信仰力が強すぎて神に悪事が見つかり、国ごと滅ぼされたり、異世界の勇者を召喚して自分の国のために使いつぶしたりして、勇者に頼まれて国ごと滅ぼしたりなど、様々だ。
「今回も信仰関係だってことだ」
「なるほど。それならわかるぞ魔神様のことで俺達も争っていたからな」
ゼノは、その場で何かを思い込んでいるかのような顔でじっと魔方陣を眺めていた。
元々ゼノの一族は、魔神を信仰し、神の代理人を代々輩出してきた一家だ。
親父いわく、彼らには申し訳ないことをしたといつも言っていたのを覚えている。
神の代理人という立場になったことで、他の魔族に残虐させられていた。
「親父がお前らの一族に申し訳ないことをしたとかいってたぞ」
「なんだそれ、デュルクお前に親父なんかいたのか?」
ゼノは驚き、顔を近づけてきた。
「いるわ! 今も盗み聞ぎしてると思うけどなぁ」
「この周りには、誰もいねぇぞ?」
ゼノは、崖周辺を見渡すし、不思議そうにいた。
すると、魔法陣が光出し空へと一本の光の柱が現れた。
崖下が騒ぎだす。一斉に部下たちが開いた魔法陣のうえに乗り消えてゆく。
魔法陣の周辺では、抱き合っているものや、泣いてるもの、戦いが待ちきれないようにしているものが様々だ。
「俺らも行くか」
羽をはやし、崖の上空で待機する。
ゼノが、崖で何かしゃべっているが魔界の特殊な上空の風でまったく聞こえない。
次々と魔方陣の上に立ち消えていく魔族たち。
早めにけりつけて世界の再構成でもしますか。
あーめんどくせぇ
「「「「「おおおおおおお!」」」」
雄たけびを上げながら魔法陣へと突撃していく魔族を見て平和ボケしていないのがうかがえる。
そろそろ俺も行くとしよう。
地上に降り立ち、そのまま自分で転移魔法を使い、人間へ変身できるマグをつけて聖神国・グラザビアの上空についた。
「ま、ま、まおうだあああああああ!」
「ぎゃあああああ」
「神よ! 許してくれたまえ! どうかどうか」
なんだこいつら……。
人が訪ねただけなのに、魔王呼ばわりとか引くわ。
姿は完全に人間だろ。
「貴様! 魔王! 俺と戦え!」
オリハルコン製の剣を地上で俺の方に向けて偉そうにしている者がいる。
髪が黒く。顔はイケメン、全身を鎧で纏った男だ。
異世界から召喚された勇者だろう。
多分また日本人とか言うやつだ。黒髪……だし。うわー正義感で勇者になったやつだわ
「はいはい、カラミティ。そいつと遊んでろ」
勇者の前に次元の狭間が現れカラミティが姿を現す。
勇者はそれを見て驚き城の方へと逃げ去っていく。
尻尾を振って走り去る勇者をみて笑いが止まらなくなる。
カラミティが上空を見上げる。
俺は人差し指でいけと命令した。




