第33話 神力とルリ
「もう死にたくない……」
「同感」
「今何回目だ」
「覚えてね~」
「しぬ……」
残り九回程で一度休憩をはさんだ時に言っていた。
「残り九回だが、その九回で己の力を見せてみろ。そうだなぁこれでいいか」
俺は彼らを本気にさせるため、左腕にはめていた魔道具を外し、本来の姿を露わにした。
「どうだ? 魔王を見た感想は……」
「すげえ魔王じゃん」
「かっけぇ」
「この角本物?」
恐れずそのままの状態を受け入れるかのように少年たちがあちこち触りだした。鬱陶しくなり、一度彼らを殺していしまう。残り八回。
「本物なんだ……」
「でも不老不死の魔王だよな。あの顔」
「だな」
「てか今どうやって殺されたんだ?」
「早いよなぁ」
すごいざわめく彼ら達
歴代の教え子の中で一番俺の正体を見たとしても驚かず、普通に接してくれた者達だ。正体を見せれば警告のようなメッセージを彼らにつたえたかったものの、逆効果だったようだ。
「おい、一人ずつ俺に攻撃してこい。魔法でも剣でもなんでもいい」
俺が煽ったことで少年たちはそれぞれ姿を消した。
姿を探知魔法で探り、攻撃を防ぎとどめを刺す。
この繰り返しを八回ほどしたときそれは起こった。
「なんだこれ」
「何か湧き出てる」
「ねばねばしてるような......」
「これ出してるとやばくね?」
「やべぇ......」
少年たちの体全体から神々しいオーラに様な者があふれ出していた。
それは出せば出すほど、少年たちが突然苦しみだした。
俺はそれを個人個人に結界を付与し、オーラの流失を抑えた。
「それは神力と呼ばれる特殊な力だ」
「な! あの聖剣の!」
「勇者が持っているとか!」
「ああ、そのやつだ」
少年達は一斉に何かを思い出したのか、神力の放出を抑えていた。
こいつら歴代の教え子たちの中で呑み込みが早い。神力という言葉だけで制御に至るまで
「ああ、それで攻撃してこい」
少年達は、自分の神力を剣や全身にまとい、俺に攻撃をし始めた。
あらゆる攻撃に神聖属性が追加され、魔王である俺にとってはかなりのダメージだ。
「すげぇ、ほんとに再生してやがる」
「さすが不老不死の魔王......」
「でもこの攻撃いつもより疲れるんだが」
話声が聞こえてくる中、残りの少年たちも死に追いやった。
三万の死をすべて耐え抜いた少年達。そのばで即蘇生を施し、五人を抱きしめる。苦しがる少年達。
「よく頑張ったな。『クロノス』リスタート」
再度時間停止魔法を施し、時空と現実の時間をずらすことに成功。
三万回という死を何千年かけて作り上げたといってもよい。
黒い空間から彼らを元の部屋に戻し、俺はそのままこの空間に残る。
「やっぱここに封印されてたか。ルリ」
王座の様な者に座り、全身を金属製のチェーンにがっちりと王座と地面に固定されたいた。
大人版のルリは、俺が声をかけたのにもかかわらず何も言わない。
「それに意志なんてないよ?」
王座の隣に突如、いつものルリが現れていった。
「だろうな。いい加減これ解き放たないのか?」
「今の姿のほうが好きでしょ?」
「ま、まぁな......」
俺が少しルリから目を離し、右の方を見るとルリがその場で俺の首元に噛みついた。滴り落ちる血が王座にすわったルリの手の上に落ちた。
「うん。美味しい」
「あのなぁ」
「とりあえずこれもう壊していい?」
ルリは自分を指さす。
さすがに世界に自分が二人いるのが嫌になったのだろ。
「勝手にしろ」
「はぁい」
ルリが自分を殺す姿を観たくない俺は後ろに振り向く。
ぐちゃぐちゃという音と、血が滴る音、ルリの笑い声が黒い空間全体に響き渡った。
「終わったよ」
全身返り血を浴びたルリが俺の目の前に現れた。
片手にはコアの様な何かを持ち、それを口に含み飲み込んでしまった。
「よかったのか?」
「いいの、それにあの姿を見るだけでいやになるし」
「そっか」
「さぁ早くみんなのとこに戻ろ」
「ああ、そうだな」
俺はルリと共に黒い空間から抜け出した。
その先には心配そうにしていた少年達と王妃であろう少女たちが目の前にいた。王妃の横には、返り血を浴びてないルリが笑顔で待っていた。
「とりあえず。これで教育は終わりだ。お前らさっさと解散しろ」
過酷な試練を乗り越えた少年たちは、王妃と共にみずらかの国へと帰っていた。別れ際で言われたことは「ありがとう」という例の言葉だけ。
「ねね」
「なんだ?」
「デート、ダメ?」
「ああ、いいぞ」
「やた!」
一週間一緒にいなかったせいなのだろう。
いつもよりも、俺に抱き着く力が増しているような気がした。




