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第32話 死の恐怖

「あー駄目だ。わからん」

「はい、これあげる」


 ルリが、丸めた紙くずを俺に渡してきた。

 それを受けとあった途端、脳内に魔法の術式や呪文が入ってきた。

 魔導書やスクロールを使う時との同じ感覚だった。


「い、今のは……」

「成功したぽいね……あ……と……おね……が……い」


 口に手を抑えたままトイレの方へと走っていった。

 吐き終わったらかけてほしいということだろう。

 ユイのは効果時間が短いため、その呪文を改良して長時間効果が持続するものを作ったのだろう。


「うう、気持ち悪い」


 トイレから戻ってきたルリは、タオルで口元をふさぎながらこっちに来た。

 さすがに心配になり、転移魔法を唱えようとしたがルリに詠唱を止められてしまう。そのまま自分に俺の手を触れさせ、「詠唱して」と頼み込む。


「『ノール』」


 術式が展開し、光の筒がルリを覆うもそのまま消えてしまった。

 効果があったのかいつものように元気になったルリに色々されてしまう。


「先生、先生。着きましたよ! 先生!」


 そういってユイスが部屋の中に入ってきた。

 同じベッドで寝ていたルリが起き、ユイスの方をじっと見つめる。


「すみません……ごゆっくりどうぞ」


 そういいと何か焦った表情をしながら扉を閉め、廊下を走る音が聞こえた。

 ルリの支度の準備を手伝いながら、荷物をマジックバックにしまう。


「できたぞ」

「ありがと」


 部屋からルリと一緒に出て部屋の鍵を閉める。

 甲板に出ると、栄えた王都が広がっていた。

 人々は活気にあふれ、日々何かをしている。


「さすがだなぁ」

「だねぇ」


 ユイスが俺達が甲板に出てきたことを確認すると、港で待たせてあった馬車の方から声をかけてきた。


「こっちです」

「ああ、今行く」


 俺はルリと自分自身に浮遊魔法をかけ、甲板から馬車がある場所まで飛んだ。その光景を見ていた住民は驚いて固まっていた。


「勘弁してくださいよ。あんな大魔法」

「大賢者らしいだろ?」

「ですけど……」


 ユイスの従者に案内されて、そのまま馬車の中に入る。

 魔法で少し空間を広げてあるのか少し広い。

 ルリはその馬車に目を光らせじっと馬車内部を見ていた。


「空間魔法か」

「そう。多分ユイの魔法」


 ユイスが驚いた表情でしゃべりだす。


「さすが、ルリ様。どうしてお分かりに?」

「う~ん、術式の癖」


 術式には欠けた人の癖が出る。その癖は魔力そのものであるため、魔法が使える者にしか見ることができない。だが、上級者となれば誰がいつかけたのかもわかってしまう。


「なるほど、癖ですか」

「よくわからん……」


 俺は独り言のようにつぶやく。

 すると、ルリが俺の膝に座るとマジックバックから城から持ってきた魔道具を俺の右腕につける。すると、周りに光る靄が浮かんでいるのがわかるようになった。


「これが癖か」

「うん。お兄ちゃんなら見えるかと思った」

「いや見えてなかったからなぁ」


 急に馬車が止まる。

 城門についたのか、兵士が馬車の中を見るとそのまま城の門を開けた。

 城の内部に入ったのか一分も経たずに馬車の扉が開く。


「あー懐かし……30年前以来かぁ」

「だね」


 俺達がそのまま感想を述べるとユイスがさっそく次期王がいる部屋へと連れてってくれた。その部屋には五人の少年と五人の少女が礼儀正しく、椅子に座っていた。まるで魔界にある学校の様だ。


「では皆さん。このお二方が皆さんの先生です。これから一週間頑張っていきましょう」


 部屋全体に響くような声でユイスがいう。

 少年少女が隣にいる子とざわざわと話し出す。


「というわけで、女子の皆さんはこちらのルリ先生にお願いしますので移動してください」


 ルリが、少女たちに笑顔で手を小さく降ると少女達の心が動いたのか、自分の瞳を輝かせているのがわかる。そのまま、俺にルリが手を振って違う部屋へと向かってしまい、この部屋には少年たちと俺とユイスが残っていた。


「とりあえずこいつだな。『クロノス』」


 そう唱えた途端、すべでが止まった。

 世界そのものが何も言わなくなり、人の息すらない。


「あ、やべやりすぎた…」


 時間の概念を捻じ曲げる神々が使うことを許された魔法『クロノス』

 神々の名前を有されるほどの効果を持ち、莫大な魔力を消費するため術者を死に追いやる魔法。


「これでよし。お前ら生きてるかぁ~」


 ポカーンとしている少年達、ユイスも同じようにしていた。

 城内のどこからか、時間の概念を改変したのを感じ取れた。

 ルリだろう。


「よし生きてるな。とりあえず一度死んでもらうぞ」

「「「「ええええ!」」」」


 少年の体から、光玉が現れ肉体がその場で倒れる。

 魂を抜き取る死神のスキル。


「よしこれでいいか」

「先生、それ最初のあいさつ代わりですか?」

「当たり前だろ、あと三万回ぐらい死んでもらわん」

「うう、トラウマになりますね……」


 光玉が少年たちの肉体に入り、少年たちはすぐに起き上がる。

 何をされたのかすらわかっていない様子だった。


「今のはなんだ……」

「なんだったんだ?」

「ありえない……蘇生魔法なんてありえない……」


 少年がお互いの顔を見ながら恐れだす。

 俺の顔を見た途端、全員一つに固まるかのように5人で背中合わせをしていた。


「いいか、お前たちに教えるのは死の恐怖。これを三万回してもらう、ただこの三万という蘇生はお前たちの体と心を強くするものだ。お前たちの先祖の王たちはこれを貫いた。だからお前たちもやれ」


 全員俺の恐怖が死よりも恐ろしいとわかったのか素直に受け入れてくれた。

 これで残り二万九千九百九十九回。さてさてどう殺してやろうか……。


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