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第29話 ユイスからの依頼

「いってぇ……」


 目覚めてから即座に、ベッドの端に当たった頭を左手で押さえる。

 血は出ていないものの少し腫れているのがわかる。

 だが、意識した途端腫れが治り痛みが引いていた。

 重い腰を上げ、立ち上がる。ベッドの上には気持ちよさそうに寝ているルリがいた。


「やべ全然記憶ねぇ」


 頭を打ったせいか、酒のせいか酒場から離れて城に来た後の記憶が抜け落ちていた。ルリのほっぺを右手の人差し指でつんつんと触る。

 ルリが反応なのか、指を払いのけてしまう。


「起きてるか~」


 小さな声でルリの耳もとでいう。

 するとくすくすと笑い声が聞こえルリをじっと見つめる。


「そんなにじっと見ないで……」

「なんで?」

「恥ずかし……」


 少し意識してしまい、ベッドから離れる。

 布団をベッドの端にどかし、ルリが布団から抜け出してきた。

 まだ眠そうにしながら、跳ね上がった寝癖を直していた。

 すると、部屋の扉が誰かにノックされる音が聞こえた。


「ユイスです……先生話したいことがありまして」

「おう、隣の書斎でくつろいでいろ」

「はい。わかりました」


 隣の書斎の扉が開く音が聞こえてきた。

 ルリが、着替えを済ませたのかこっちに来て服のしわを魔法で直してくれていた。普通では治れないものの火の魔法と水の魔法を使うことで直すことができるらしい。かなり複雑な魔法で俺でさえその魔法は使うことが難しい、ましてや火の魔法で服を燃やしかけたことがあるくらいだ。


「終わったよ」

「ありがとう」

「うん!」


 反射的にお礼を言ったせいか、ルリが喜んでいた。

 そのまま、書斎の扉を開き中へと入る。

 書斎のソファーの側にユイスが、立って待っていた。


「それでなんの話だ?」


 俺はユイスの隣のソファーに座る。その横にルリがおしとやかに座り、おれの右腕にしがみついた。


「実は、各国の新国王達が先生にご指導してほしいと」

「なるほどなぁ。王妃もか?」

「そうですね。王妃様たちはルリ様にお願いしたいとおっしゃられてました」


 ルリが嬉しそう目を光らせこっちをじっと見つめてくる。

 それだけ王妃質の教育を行いたいのだろう。

 学校の先生になればいいと一度行ったことがあったが、即跳ね返され血を吸われたことがあった。


「いいよ?」

「それはよかったです。先生もお願いできますか?」

「ああ、いいぞ。ただし全員一か所に集めろ。お前の国に」

「それだけですか?」

「あと国の指揮は、現女王たちに任せておけ」

「分かりました。では一週間後に、ルイナスにてお迎えに上がります。では」


 ユイスはそういうとそのまま部屋から出て行ってしまった。

 魔導戦艦ルイナス。ユイスの国が生み出した軍艦であり、世界の海市場に改革を起こしたものだ。


「一週間かぁ。こっちの管理どうすんだ?」

「大丈夫! 任せて~」


 ルリが眷属の吸血鬼を呼び、その吸血鬼に書斎の机から取り出した書類を渡しそのまま吸血鬼は、霧になって消えていった。


「これでいいかなぁ」

「何送ったんだ?」

「指令書、エステナに」

「あーあいつなら確かに代役にはなるか」

「じゃあちょっとエステナのとこ行ってくる」

「ああ」


 ルリもその場で霧となってどこかに消えてしまった。

 甘い香りがまだ部屋の中に残る中、俺は書斎の机で住人達皆に手紙を書き始めた。その内容は正直なことをそのまま書き、伝承鳩ですべての住民の達にそれを届けることにした。

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