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第27話 その後と酒場

「たくぅ……親父たちめ」


 俺はルリの隣で寝ころび大きなため息をつき、ルリの背中から胸の下に腕を絡め、そのまま小さな体に抱き着く。頭がちょうど胸板辺りに来ていたため、そのまま顎を頭の上に置き、そのままじっとする。


「はぅ……」


 抱きしめているルリが何かに反応する。

 ルリは、背中のほうに振り返り俺と目が合うとすぐに正面を向いてしまった。へそ辺りを触ってたらしく、冷え性で冷たくなっていた手で触ったことが原因なのだろうと勝手に考えてしまう。


「むー」


 急にルリが頬を膨らませ、俺のほっぺをつねり始める。

 地味に痛いその攻撃に、必死に耐えながら抱きしめている力が緩くなってしまった。その隙をついてルリが俺の腕から抜け出すと、正面を俺のほうを向いて、自分の腰に俺の腕を置き胸板辺りで、上目遣いでこっちを見つめる。


「悪い。ちょっと外出てるわ」


 俺はそういうと、ルリから手を離し、ベッドから立ち上がり、部屋の壁にかかっていたコートを羽織り、部屋を後にする。そのまま廊下の扉から羽をはやし、外へと飛び出す。両親の身勝手な行動とルリの反応に振り回される中、俺は大雨が降る中、城下町の小道にある酒場へと入る。なかなかからがやがやとにぎやかな声が聞こえ、背中や腰に剣を備えている剣士や、杖を持っている魔導士、弓を机の端に置くレンジャーなどが片手に酒を持ちつつ何かをしゃべっている。コートについているフードをかぶっているせいか、誰も俺だとわかっていないのか反応すらしない。店主がいるカウンターの前に座る。


「ワインを樽ごとくれ」


 俺が言い放ちカウンターに金貨を10枚ほど置くと目の前にいた店主が驚き、ワイン瓶とワイングラスを俺の目の前に置くと店の奥に消えて行ってしまう。コルクを魔法で外し、グラスに注ぎそのまま瓶ごと飲む。

 口にワインの味が広がり、そのままのどへと流れていくのがわかる。


「良い飲みぷりだなぁおい」


 隣のカウンターで飲んでいたおっさんが俺の隣の椅子に座り話しかけてきた。口から酒の匂いが目の前に広がるのを耐えながら、空になったワイン瓶を握っていた腕で潰し、ガラスの破片がカウンター周りに散らばる。その様子を見ていた隣のおっさんが絡むのをやめ、そのまま元の場所へと戻っていく。


「『フロー』」


『フロー』

 魔法の風を生み出し、細かい操作が可能とできる魔法。上位魔法士から習得できるものであり、細かい作業が必要になるため繊細さが問われる。


「おいおい、ありゃ一体なんだ」


 ワイングラスの破片の粉砕し、粉にし、その粉を袋に包む。

 この工程をすべて『フロー』で行った。

 汚したときなどに重宝するためよく使っており、たまに今でも使っていることがある。周りが感激する中、店主が騒ぎを聞きつけ店の奥から戻ってくる。俺は店主に再度「樽ごとくれと」いい、ワイン樽を片手に持ち一気に飲み干す。


「嘘だろ、樽ごと飲みやがったぞあいつ」

「て、どこかで見たことある顔じゃね? 気のせいか?」


 そんな声が聞こえる中、店主に樽をもう一つ頼み、金貨を渡す。

 運ばれてきたワイン樽をそのまま飲み干し、全く酔っていないことに今更気づいてしまった。


「酔えない……店主、最強のやつくれ……俺は酔いたいんだ」

「お客さん、これ以上は……」

「いいからよこせ」


 俺はカウンターの上に金の延べ棒を置き店主に言うことを聞かせる。

 後ろが少しうるさいが気にせず、運ばれてきた酒に手を出し、飲み始める。

 すると、俺の横にルリぐらいの身長の子が座り、ワインを一杯頼む。

 最強のやつも飲み干してしまい、視界がやっとぼやけ始める。

 隣の人が徐々にルリに見えてきてしまうほどに。


「ありがとね」

「いえいえ、こちらも心配だったもので」

「そっか、じゃあこの一杯だけ飲んで連れて帰るね」

「よろしくお願いします」


 店主の声とルリによく似た声が聞こえる。

 いつの間にか俺の周りには人が群がっているのか、視界がぼやけているのかわからないまま、隣の人に寄りかかってしまう。

 なぜか、似たような香りと心地よさを城で味わった覚えがあるが、今はどうでもいい。


「そろそろ結婚してくれ……」


 なぜか俺はその一言を言い放ち、隣の人に持たれながら。


「いいよ」


 その返事が返ってきた境に俺は意識を失い、眠りにつく。

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