第21話 婚約の契約はすでに
あのまま地下にいるのが気まずくなり、ルリになれない回復魔法を施し、地上へと出る。先ほどの兵士の左手に金貨を握らせ、羽をはやして書斎の窓から城内へ戻る。部屋に戻って真っ先に目に入ったのはルリの血が入っていた瓶のことだ。あの量は死んでもおかしくない。不老不死だからと言ってもどうかと思ってしまう。
「契約ね。ほんとに忘れてるんだな……」
ふとルリと出会ったときの事をを思い出す。
ルリと俺がまだ幼かったころ親父が家にルリを連れてきたことがあった。
母親であるアイリスが、家出して帰るとこがなくなったとかの理由だった。
「そんなわけだ。頼むぞデュルク」
「うん!」
泣き崩れそうなルリに、俺は一生懸命泣かないようにしようと努力する。だが、効果はあまりなく心配で、面倒を見ようとするも、全て平手打ちで壁に投げ飛ばされ大声で叫ぶ。
「ほっといて!」
その言葉を聞いた途端、俺は努力が無駄だと実感し部屋を後にする。泣き叫ぶ声が聞こえる中俺はその声を無視し、魔法の練習に励む。ずっと泣き叫ぶルリの声を聴いた母さんは、その日ルリの部屋から出てこなくなった。
心配した親父と俺は、ルリの部屋の扉から中をうかがう。
すると目の前には、意気投合したルリと母さんがいた。
ずっと話声や笑い声が飛び交い、俺と親父は胸をなでおろす。
「しかし、デュルク。あの子お前の妹だぞ」
「は? 妹? 母さんからそんなこと聞いてないぞ」
「当たり前だ。母さんの子じゃないからな」
「どういうことだ?」
「腹違いていえばわかるか?」
「あ~浮気相手か。なるほどな」
すると、ルリの部屋から母さんが出てくると親父の両手を引っ張りどこかへ消えていった。扉が開いたままで、俺はずっとルリと目が合っている。
それはどうでもいい。だが、彼女が妹であるはずがない。
すると、ルリは俺を部屋の中に連れ込むと、ベットに押し倒し、俺の首を噛み血を吸いだす。初めての感覚に、痛みを覚えるも徐々に慣れてくる。
ルリは、口の周り血が付いたまま俺にキスをする。
何が起こっているのか理解できず、彼女にされるがままでいると、突然右手に刃物で切られたような激痛が走る。
「大丈夫?」
「なにしてんだ......さっきから」
「うーん。教えたほうがいい?」
「あ……ああ」
「じゃあじっとしてて」
ルリは自分の左手の手のひらを右手の爪を変形させ、傷をつけ流れてきた血を、俺の口に入れ、右手にも同様に垂らす。するとルリの血を俺の血が吸い込むかのように傷口に入っていき、傷口がふさがる。
「婚約の契約じゃないか!」
「さすがにバレたか」
俺の右手の甲に小型の魔方陣が浮かび上がり。ルリの左手の甲に同様のものが浮かび上がっていたのがわかる。とっさの判断で、俺の跨るルリを壁へ吹き飛ばし、部屋から抜け出す。だが、ルリは無傷で俺を追う。
「なんで逃げるの?」
「当たり前だろうが、勝手に儀式しやがって!」
「いいじゃん。どうせ許嫁私なんだし」
「え?」
親父からルリが来る少し前に、許嫁が決まったといわれていたのを思い出す。
だが、親父からは何の説明もなく勝手に決めないでほしいと思い、俺はそれに抵抗する。
既に好きな人がいたが、よく覚えていない。
散歩しているとき白い髪と赤い瞳の少女と出会い、意気投合する。俺はその子がどこの子かもわからず、毎日いつもの時間に遊んでいた。友人と思っていたが、ある日その子から告白される。俺はそれを受けるが、その子は大人に連れていかれ離れ離れになってしまった。
このことをルリに話すと、驚いた様子で俺に抱き着く。
「やっぱり。君だったんだ......」
ルリは小声で何かを言うとその場で倒れこみ、意識を失う。
両親が出かけていたため俺一人で介護するも熱が下がらず、焦りだす。
すると、ルリの母親と名乗る人物が家に来ると、熱を出し倒れたルリにポーションのようなものを飲ませ、ルリを抱いたままを出て行ってしまった。
「デュルク。今日あったことはすべてこの子の記憶から消すわ」
「なんで?」
「そうね。貴方とこの子は結ばれてるからとでも言っておきましょうか」
「どういうこと?」
だが、ルリの母親と名乗る人物は無言のままその場から消えた。
そしてしばらくしてルリと俺は魔王城に住むことになる神界を後にする。
そのときルリにその日のことを問い詰めるも覚えていないの一点張りだった。
その日のことを忘れたことで婚約の契約をすでにしていたこともルリは、覚えていない。




