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第20話 血の契約

「疲れた。説明なしでこれはさすがに今回だけにしてくれ」


 膝に座って俺に甘えるルリにいうと、そのまま俺の首元を噛み血を吸い始めている。ずっとその体制が続いたことで、体のあちこちがしびれてくる。

 俺がルリの背中に回していた腕を離すと、気付いたかの俺の首元からルリは、口を離すとなにもいわずにじっと上目遣いでこっちを見つめる。


「わかった」


 というと、ルリは俺の膝から立ち上がり、王座の間の扉から出て行ってしまった。用事があるのだろうか少し焦っているように思えた。俺も、ルリの後を追うかのように王座の間の扉から廊下に出る。

 地面が血の色で染まりなにかを引きずった跡が廊下の奥のほうへと続いているのがわかる。多分、人間の貴族の遺体だろう。


「生臭いな......とりあえず『ウォーターキャノン』」


『ウォーターキャノン』水属性の魔法の一つ。出す水の量によって魔力消費が異なる。唱えた途端右腕の手のひらから砲弾のような水の塊が、血で染まりかえった床に当たり水びだしになる。


「これでいいか」


 マジックバックからモップを取り出し、床を擦る。

 徐々に落ちていく血に感動を覚え、床をさらに擦る。

 廊下の奥のほうまで擦り終えると、ルリの眷属の吸血鬼の一人が干からびた人間を床に引きずりせっかく綺麗にした床が少し汚れていた。


「旦那殿か、失礼した」


 吸血鬼は、汚れた床を自分のポケットに入っていた綺麗なハンカチでふき取り、干からびた人間を抱えて廊下の奥へと消えていった。


「旦那殿ねぇ……あいつ一体どこまで広めてんだ……」


 と独り言のようにつぶやき、再度床を磨く。

 するとさっきの吸血鬼がさっき通り過ぎた時に抱えていた人間を持たず、代わりに豪華な装飾が施された宝箱を大事そうに持って通り過ぎるかと思った。だが、俺の前で止まると吸血鬼は、頭を下げ宝箱をこちらに差し出す。


「ルリ様からです」

「ルリからか」

「ええ、あの方がこれをお渡しするのは相当旦那殿のことが好きなのでしょうね。では失礼します」

「ああ」


 吸血鬼はこっちに一礼すると、そのまま来た方向へと戻っていった。

 受け取った宝箱を柱の麓に置き、壁にこびりついた。血をモップで磨く。

 なかなか落ちない血に苦戦しながら、なんとか落とすことに成功する。

 ひと段落着き、俺は書斎へと向かう途中、柱の麓に忘れた宝箱を取りに戻り、向かいながら宝箱を開けた。


「なんだこれ」


 そこに入っていたのは、豪華な装飾に施された瓶だった。

 中身の色は、黒く炭のような色をしている。いかにも怪しい液体であったため、ルリを待つため、書斎に戻る。

 扉を開け、部屋の中に入り、椅子に座り、机の上に宝箱を置き再度宝箱から瓶を取り出す。ガラスの蓋を取り、黒い液体を一気に飲み干す。


「鉄の味? まさか!」


 飲み終えた瓶を机の上に置き、窓から飛び出し、背中に羽をはやし、地下牢へと続く、庭にある地下階段の前に降りる。地下階段の目の前を警備していたエルフが話しかけてくる。


「魔王様どうかなさいましたか?」

「悪いそこをどいてくれ」

「はい!」


 エルフは地下階段の前から退き、俺はその階段を降りる

 一段一段降りる中、足音が響く。


「あれ、お兄ちゃん?」


 階段の下には、口元を血で汚したルリがそこにはいた。


「あの瓶のことだ」

「あ~あれね」

「お前の血だろ」

「そうだけど? 駄目だった?」


 素早く階段を一番下に降り、ルリを抱きしめる。

 俺は地下全体に響くようなこえで俺は叫ぶ。


「馬鹿野郎! なんで……」

「お返し」


 ルリが俺の右手の手のひらに触れると、突然手のひらに切り傷が入り、血が流れだす。そこにルリが自分の右手から一滴血を垂らした。

 すると、赤い血と黒い血が混ざり手のひらの傷に吸い込まれるかのように戻っていった。


「契約おわり!」

「契約......ルリ、お前……」

「えへへ」


 魔族での婚約の契約。お互いの血を飲み、夫は傷に自分の血と妻の血を吸収することで婚約と認める。

 血を吸収するには一定の条件が必要であるが、キスを何度もされていたため免除になっていた。


「これで夫婦だね」

「ああ、そうだな」

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