第17話 デート⑦
マキリアの元へと戻る中、ルリが途中で力尽きてしまう。
さすがにあの量の魔導書を運び、ここまで歩いてきたのだ、いつも空を飛び、部屋で引きこもっているルリにとってはきついようだ。
「大丈夫か?」
「抱っこして……」
上目遣いで地面に腰をついているルリを抱き上げ、お姫様抱っこの状態になり、俺は走り出す。ごつごつした地面を素早く走り抜き、なんとか転移魔方陣があった分かれ道にたどり着く。
「遅かったね」
マキリアはアイリスの頭を左足で踏みつけながらこっちを振り返った。
何があったのかよくわからいがガイアスの顔が青ざめているため、マキリアが何か恐ろしいことをしたのだろうとわかる。
「母さん。なにしてんだ一体」
「ふふ、ナイショ」
ルリを下ろし、俺はマキリアの側に立つ。
するとアイリスが俺の足をつかみ、喘ぎ声が聞こえてくる。
だが、顔が地面にへばりついているためはっきりとは聞こえない。
「さてと、あなた。そろそろ帰るわよ」
「お、おう」
マキリアは、地面にへばりついたアイリスを転移魔方陣の上に投げ込み、バインドの魔法で現れた鎖で拘束し、ガイアスと共に消えていった。
消えた途端一通の手紙が俺とルリの目の前に現れる。
「なんだったんだ。一体」
「さぁ?」
俺は現れた手紙を拾い、中の紙を取り出す。
そこには俺達の正体を知った住民たちの居場所と、俺達の正体が魔王と真祖だとわかったことで、冒険者ギルドが討伐メンバーを集めこの島に向かっていることがこの手紙に書かれていた。
「めんどくさいなぁ。冒険者か」
「皆殺しにしていいの?」
「いいけど、俺の分も残しとけよ」
「分かった」
俺達は一体なぜ人間界に飛ばされたのだろう。
なぜ魔界で平和に暮らしていたのになぜ国なんかを作ろうとしていたのだろう。よくわからない。
「これ落ちたよ」
「ああ、悪い。てこれは……」
「ん?」
ルリが拾った手紙の一部には、弟子たちの国で国民が反乱を起こしていること、また連合国として成り立ったはずの我が国は、滅亡したなどとそれには書かれていることがわかり、弟子たちの王はユイスを残し、虐殺されたと書かれていた。
「世界でも滅ぼすか……」
「分かったぁ」
ルリが俺が手紙を観た感想を率直に言ったためその言葉を受け入れ、すぐに自分の眷属達を集めだした。それらすべて災害級モンスターであり、国一つ滅ぼすほどのモンスターを数十匹俺達の後ろに召喚した。
「まてまて、さすがに滅ぼすのはやめないか?」
「えーやだ」
「おいおい……」
「デュルク、貴方の弟子を殺されたのよ? 復讐しない師匠なんかいないでしょ」
駄目だ。真祖の血によって完全にルリが覚醒してしまった。
何もない空気が、禍々しい空気に代わっていく。
人間界に勇者がいないならば、残り三十分でこの世のすべてが灰となるだろう。そんなルリを俺はルリの背中から抱きしめ落ち着かせる。
「むー。ずるい」
「攻めてくる冒険者だけでいいだろ。あいつら殺しておけばそれぞれの国は手を出してこないはずだ」
「そうだけど……」
不満そうな顔でこっちをみつめるルリを見るなかで、壁の横にエステナが隠れていることに気付いた。すると向こうも気づいたのかこっちをじっと見つめる。
「でも納得できないから今から殺していい?」
「まぁ弟子たち殺したやつならいいぞ」
「分かった!」
ルリは突然背中に羽をはやし、狭い世界樹の通路の中を飛ぼうとするが、俺はルリの左肩をつかみ、進行を止める。
「ルリが行っていいとは言ってないぞ」
「えー」
「眷属達にでも行かせろ。ルリなら特定の場所に転移させれるだろ」
「分かったよ~」
ルリは俺の指示のもと、眷属達に命令を出しその場にいる災害級モンスターの眷属達数十匹を転移させた。
「お姉ちゃんかっこいい……」
「なに? 付いてこなかった妹」
「ひどい……」
エステナがルリにくっつき離れようとしないが、その様子をルリが汚物を見るような暗い目線で見ていた。
妹であるエステナへの対応がひどいと思う。
エステナが助けてと伝えんばかりにこっちをじっと見つめる。
「ルリ。なんでそこまでひどくするんだ……」
「デート中なのに邪魔してくるもん」
「あーうん。そろそろ帰りますかぁ」
「うん」




