第15話 デート⑤
「お兄ちゃん。これ読める?」
ルリが、ピラミッド型の遺跡の横に石碑を指をさしていう。
ルリでさえ読めないのだから、俺にもわからない。
日本語と呼ばれた文字と呼ばれており、全く読めない。
「異世界から召喚された勇者たちがこの文字が書かれたものを、魔王城に持ってきたな。そういえば」
「そうなの?」
「ああ、ほとんどの勇者たちはその本を見て泣いていたな」
「じゃあ勇者たちの元の世界の言葉?」
「かもな」
俺は、石碑の横にあるピラミッドに触れる。
だが、何も起こらない。
「何も起こらないね」
「だな。魔力を流してみるか」
再度ピラミッドに触れ、魔力をピラミッド内に流す。
どういうわけか、ピラミッドの角から突然蒸気を吐き出し、ピラミッドが回転し始める。
『システム起動、プロセスを実行……』
突然、ピラミッドがしゃべりだし、ピラミッドを中心に上へと竜巻が起こる。
だが、世界樹は竜巻が起ころうとも、傷つくことがない。
さすがというべきだが、この回転しているピラミッドは、何なのかがよくわからない。
空中に浮かんでいたピラミッドは、俺のほうに入り口を開け地上に落ちる。
「なにこれ」
「俺に言われても困る」
「とりあえず、入ってみる?」
「そ、そうだな」
背中にくっついたルリをつれ、恐る恐る一歩一歩足を踏み入れる。
突然、照明がつき部屋全体を照らす。
そこには見たこともない実験装置や薬、道具などが置かれていた。
「ここは研究所か?」
「多分そうだと思うけど、ただ見かけないものばかり?」
「だな、とりあえず奥へ進むとしよう」
「うん」
照明が俺たちの動きに反応して、奥のほうから光出す。
横の長さが十メートルほどしかないピラミッドだが、なぜか俺達はそれ以上ピラミッド内を歩いている。歩いても歩いても奥が見えてこないのが今の現状だ。
「どうなってんだ?」
「空間魔法かなぁ。多分古代のほう」
「なるほどな、空間魔法か。それならこれぐらいの空間を作っててもおかしくはない」
空間魔法、空間を魔力によって操る魔法。人間では賢者と呼ばれるものでしか使えず、魔族や亞人でさえも、ごく少数しか使えない。究極魔法。
その一人の使い手は、ルリだ。
マジックバックも、彼女からのプレゼントでもらったものだ。
この中には魔王城の宝物庫にあるすべての宝「コレクション」をすべて入れてある。そのため、金は湯水のように出てくるのだ。
「いた……」
ルリが頭を押さえて何もない空間を壁のように触る。
だが、俺が触ると壁のようなものがすり抜け、吸い込まれるような感覚を覚える。
「大丈夫か?」
「うん。頑張ってお兄ちゃん」
「おう」
ルリが心配そうに見守る中、部屋の奥へと進む。
途中、禍々しいオーラを払いのけ石の両開き扉を開く。
「ふふふ、久しぶりね。マスター」
扉の向こうには、ルリがそこにはいた。
「お前。誰だ?」
「あら、やっぱり覚えてないの?」
「当たり前だ。俺の嫁の姿をしているが殺気を常に発してはいない」
「なるほどね。あの子が殺気を……それ愛情じゃなくて?」
「多分、血が飲みたくて仕方ないのほうだと思うが」
「そう、なら安心ね」
ルリによく似た彼女は、俺の右腕に触れ、手のひらに小型の魔方陣を描いた。だが、彼女はそのばから姿を消していた。
何だったのだろうと思い、手のひらの魔方陣を見ながらルリの元へと戻る。
「ただいま」
「おかえり、何かあったの?」
「ああ、これだ」
俺は右腕の手のひらをルリに見せる。
すると、ルリは魔法陣を見た途端、手のひらをかじりだす。
あふれる血を、のどを潤すかのように飲み続けるがいつの間にか血が止まりだした。
「何をした?」
「ちょっと見てて」
俺に背を向け、腰に悪魔のような尻尾が生えていた。
サキュバスと呼ばれる魔族に生えている尻尾と同じで先端がハート形だ。
しかし、それ以外は何も変わっていない。
「どお?」
「かわいいが、なぜ尻尾?」
「うーん、多分妹のせい」
「は? 妹?」
「正確には妹たちだけどね」
ルリには、エステナ以外、妹はいない。
だが、妹達と言っている。
一体どういうことなのかよくわからない。
「私と同じ姿のこと会ったでしょ?」
「ああ、なんか大人びたルリみたいだったぞ」
「その子だよ」
「は? 魔法陣を書いた途端消えてしまったぞ?」
「当たり前じゃん」
「どういうことだ?」
ルリは帰り道を小走りで走り出す。
俺はルリにくっつくようにして離れないようなペースで走る。
しかし、ルリは俺の顔を見た途端その場で泣き崩れる。
そして、そこで生き別れの二人の妹がいたこと、その一人はサキュバスであること、もう一人は人間であること、そして彼女らはすでに死んでいることをルリから伝えられた。




