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八十六話 目立ちたがり屋と猪突猛進な人:三人称視点

 第一試合は三人称視点で進みます。

 今後、フロスト、クレアが参加しない試合については、三人称視点なるかもしれません。

 視点がコロコロ変わり力量不足で申し訳ないですが、試合内でのやり取りや詳しい描写をするためにもご理解頂けますと幸いです。

 また、活動報告に各チームのメンバー表をアップしました。興味ある方はご覧下さい。


「あんのバカがっ! 勝手にツッコミやがって!」


「姉貴、最近は一人で突っ走らなくなってたから油断してたよ……」


 エリーゼの突然の行動に思い思いの言葉を吐き出すも、二人は思考を巡らせる。


「ちっ、予定とは違うが最初の護石破壊をオレ達が狙ってたのは変わらねぇ。援護するぞ」


「余程厚い面制圧じゃないと魔法であの二人にダメージを与えるのは難しい。この距離からできることは相手チームへの牽制くらいだよ」


「わかってる。それで十分だ。リズ、来い」


「あいよ」


「エリーゼと二人でサファルを倒してきてくれ。

 魔法であの二人の奥に弾幕を張る」


「それはいいけど、白盾が援護に駆けつけてきた場合とサファルに逃げられた時は?」


「逃がさねぇようにする案がある。だが、一番大事なのはお前たちの生存だ。撤退の判断はまかせる。

 合図をするまでもう少し待て。


 総員、エリーゼを援護するぞ!

 サファルの後ろ目掛けて下位の魔法を山なりにして撃ちこめ! 白盾の援護を許すな!

 タイミングはエリックに任せる!!」


「「「了解」」」


「リズは死ぬ気で走れよ? サファルの影を踏むまでな」


 エドは他の部隊員の魔法詠唱が開始されるのを確認すると、リズにそう告げ自身も詠唱を開始する。


「おい、エド! その魔法!? もう! 後で覚えておきなよ!!」


 エドの詠唱句を聞き、一気に駆け出すリズ。

 エドが詠唱している魔法はシャドーバイトという闇属性の下位魔法だ。

 影に潜み、影から対象者に噛むようにまとわりついてじわじわとダメージを与える効果がある。


 魔法発動時はある程度任意の場所を指定できるが、発動後は大きく移動していない影の中でしか効果を発揮できない。

 回避する方法は素早く動き回ってまとわりつかれるのを防ぎ、効果が切れるのを待つか、他の影を踏んで(なす)り付けることだ。

 エドが狙ったのはリズの影にシャドーバイトを仕込み、サファルに擦り付けるという物だった。


 無論、リズに効果が発動してしまえばまとわりつかれることで若干動きが制限されるし、護石にダメージが蓄積してしまうので相手チームに簡単に撃破されてしまう。

 そうならないよう、リズは必至で戦場を駆ける。


「姉貴たちの奥に魔法を放って、相手を近づかせないことと視界を奪うのが第一だ!

 白盾、黒剣の二方向に魔法を放つ!

 一年は左方向黒剣! 二年は右方向白盾!


 多少姉貴に当たっても構わない!

 総員構え!!


 てぇーーー!!!」


 リズが駆け出すと同時に、エリックの号令で銀杯は一斉に魔法を発動させる。

 山なりに放たれたそれは着弾までに大きく時間がかかる。

 フィールドにいる誰もが魔法が放たれたことに気付いていた。

 そして、その後の行動は様々だ。


 黒剣は二つのチームが潰し合えばいいと傍観を決めた。


 一方、白盾の動きはバラバラだった。


「みんな、サファルを援護するんだ!」


 アルヴァンはAクラスの主戦力であるサファルを撃破されてはたまらないと叫ぶ。

 が、突然の事態に具体的な指示を出せなかったせいで、各自が思い思いの行動に出てしまう。


 サファル、エリーゼのいる場所に魔法を放とうとする者。

 サファルの元に駆け寄って援護をしようとする者。


「お待ちなさい! 総員、その場で待機!!」


 そして、制止する者。


「マリアンヌ! それではサファルがやられてしまうだろう!」


「このまま組織だった行動が出来なければ、無駄に魔力を使ってジリ貧になるか、各個撃破されて被害が大きくなるだけです。

 殿下、今一度落ち着いて冷静な指示を下さいませ。

 そうすれば、私達は殿下の命を忠実にこなしましょう」


「くっ、わかった……。

 ……。

 ロウェル、サファルを引きづってでも連れ戻してくれ。

 他の者はロウェルの援護だ。敵の魔法を防ぐだけでいい」


 ロウェル・ウォルナットは侯爵家の次男であり、将来国防を担う国境騎士団を率いる人材としてジョルジオと共に期待されている生徒だ。

 学院では現在、二年生のAクラスに所属している。

 アルヴァンはそんな彼を信頼して、サファルを連れ戻すよう命令した。


「はっ、おまかせ下さい。ただ、一点お許し頂けるのであればスージーを同行させてよろしいでしょうか」


「スージーか。パンジー伯爵家はカルミア子爵家の本家筋だったな。わかった連れていけ」


「ありがとうございます。スージー、行くぞ!」


「はい。わかりましたわ」


 作戦が決まるとさっきまでの動きが嘘のように早く、統率された動きになった。

 ロウェルとスージーが抜け出し、それを援護するために部隊全体がやや前に出る。


「銀杯の魔法を空中で相殺するのです! 向こうの魔法は下位のもの。こちらも下位の魔法で応戦しなさい! 精確に狙う必要はないわ! 全軍、撃てぇぇええ!!」


 マリアンヌが前線指揮を執り、魔法が銀杯の魔法を相殺するために放たる。

 サファルを助けるために前進する部隊の中、後方に留まったのはアルヴァンとその横でただ立っている一人の少女だけだった




 銀杯から魔法が放たれた直後、フィールド中央ではエリーゼがサファルと接敵していた。


「そんなに構ってほしいのなら、ウチが遊んでやるきゅるりん☆」


 エリーゼはサファルに接敵するや否や拳で殴りかかる。


「やぁエリーゼ。君とダンスを踊るのも悪くない。だけど、僕のダンスにどこまでついて来れるかな?」


 サファルはエリーゼの素早いコンビネーション攻撃を全て避け、お返しとばかりにカウンターで剣を振るう。

 エリーゼはそれをギリギリの所で避け、再度向かって行く。


「そんなことを言うならしっかりリードしてみるきゅるりん!」


 カウンター主体のサファルに嫌味を返しながら拳を振るう。


「おっと、これは手痛い反撃だ。僕自身が輝きながらパートナーも輝かせる。

 うん、この舞台で最高のダンスになるね! さて、それじゃあ僕の方から行こうかっ」


 カウンター主体のサファルではあるが、鍛えられたその鋭い一撃は相手に合わせなくても十分に脅威だった。

 サファルは長剣のみを装備しており、それを自由自在に操って攻撃を始める。


「情熱的なリードだきゅるりん☆ それでなくちゃ燃えないってものきゅるりん!」


 銀杯からの魔法が上空を飛び、奥に着弾する状況の中、エリーゼは持ち前の反射神経と動物的とも言える勘でサファルの攻撃を避け続ける。

 ひたすらカウンターを狙われていたらエリーゼに為す術はなかった。

 サファルが攻撃に転じているから避けられてはいるものの、反撃をできる余裕などエリーゼにはない。

 数度の攻防の末、状況は変わる。


「無粋な人々が沢山来たみたいだね。全く、輝く僕は誰もを引きつけてしまうのかっ!」


 ここで白盾からの援護が入り、空中で魔法同士がぶつかり合う。

 さらにリズが大剣を背負い、必死の形相でこちらに全速力で走ってきた。


「エリーゼ! サファルを二人で倒すよ!」


「きゅーるりん☆」


 まだリズとの距離はあるが、二人を相手にすることになったサファルはエリーゼへの攻撃を緩め、カウンター主体に切り替える。

 エリーゼはリズと合流するまでサファルをすぐに攻撃できる位置を保つ。


「エリーゼ! 仕掛けて!」


 リズの声に反応してエリーゼはサファルに仕掛ける。

 隙はリズがカバーすると信じて、威力の高い蹴り主体に切り替えて飛び込んだ。

 同時にリズは走りながら背負っていた大剣を抜き、構えながらサファルへと突撃していく。


 エリーゼは飛び蹴り、回し蹴り、合間にパンチを織り交ぜて攻撃する。

 一瞬、制服のスカートがめくれた際に動きが止まったサファルであったが、そこにあったスコートを見てなんとか平静を取り戻していた。

 そして、エリーゼの一連の攻撃を全て捌ききると、逆に蹴りを当てて距離を離し、リズへと体を向ける。


 大剣を地面に平行に構えて走ってくる姿勢から、突きが放たれるだろうことを予測して構えるサファル。

 だが、その大剣が突きだされることはなく、リズはサファルの横を通りすぎていった。


「? この輝かしい僕をスルーするだなんて、一体どういうつも、いっ!?」


 サファルは鈍い痛みに顔を顰める。

 護石はダメージを肩代わりするが、痛覚を全て遮断しては危険が認識できなくなる。

 そのため、本来の痛みよりは遥かに弱いが痛みを持ち主にフィードバックする機能が存在している。

 リズは攻撃を一切せず、シャドーバイトをサファルに擦り付けることに成功したのだ。


「悪いね、サファル。エドの奴が陰険でさぁ?」


「この僕に、何をした?」


「戦闘の最中にあたいが答えを教えるとでも? 悪いけど、あんたはここで倒させてもらうよ」


 今度こそリズは攻撃のために大剣を構えた。

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