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八十五話 武闘会、はっじま~るよ~!

 武闘会、開催である!

 と、意気込んでみたは良いものの、開会式はとてもあっさりしていた。

 試合を行う場所で学院長がいつものようにダラダラ話して始まったのである。


 今は三チームがフィールド内に入り、その外を教師達が結界で包んでいる最中だ。

 何もかもが謎なんだけど、結界は魔法も魔力も通さないんだとか。

 私も初めて見る、学院の秘術である。


 フィールドはリリオ高原という場所の一角だ。

 乗り合い馬車みたいな人を詰め込めるだけ詰め込め! って感じのギュウギュウになった馬車で二時間程北へ進んだ場所になる。

 高貴なお方達は自分の馬車で移動が許されていたのは悔しいがまぁいつものことか。


 ゲームと一緒のフィールドかと言われれば、たぶんそう。

 ゲームでは特に遮蔽物や大きな岩などがない平原だったのだけど、高原も言ってしまえば高地にある平原だ。


 他にもゲームと同じフィールドだというのを補強する要素として、近くに渓流のある森がある。

 ゲームの第二試合のフィールドに酷似した場所があるのだ。

 午後の試合がそこになる可能性は高いんじゃないかと思う。


 試合に参加しない生徒、試合を見に来た観客が一か所に集まると、教師が結界とはまた別の魔法を発動する。

 試合が見やすいようにフィールドを囲むように高台となる観客席を作ったのだ。

 試合に参加しない生徒達、観客は思い思いの場所へ移動する。


 参加選手、観客、フィールドの準備が整った。




 結界の中央に集まっていた三チームがそれぞれ話合って決めただろう場所に陣取る。

 十分に距離が離れた所で、結界が光り、時計の長針のような物が現れて試合開始となった。

 その長針が、試合の経過時間を現してくれるようだ。


 それぞれのチームの主要な参加選手を見てみる。


 我らが銀杯チーム。

 エド先輩、リズ先輩、エリック様、エリーゼ様、ウィル様、ルーリー様、中位魔法が使える一年生と二年生のバディが二組である。


 続いて優勝候補と言われている白盾チーム。

 アルヴァン殿下、マリアンヌ様、スージー様と私が知っている生徒はこの三人だけ。

 他の方は見かけた記憶がないので、二年生が多めなんだと思う。


 最後に黒剣チーム。

 ジョルジオ様、ルビー様、アニー様が私にとってなじみ深い。

 他にも知った顔だと、二学期の部隊決めの際にお会いした教国の助祭と僧兵を志望していらっしゃった二人。


 三チームとも編成上限の一〇人だけど、白盾と黒剣は一試合目に戦力を偏らせることなく、バランス良く編成してきたっぽい。

 次の試合も相手チームは一〇人編成になる可能性激高だもんね。

 銀杯チームは最大で八人だけど……。


 ちなみに、装備はルールにあったように全員制服で、ほとんどの人が学院が用意した武器を装備している。

 例外として自前で用意したのはリズ先輩の大剣くらいじゃないかな。

 もちろん武器は全て木製である。




 試合開始後の展開を、私達は二つ予想していた。

 下位・中位魔法でバッチバチにやりあって戦力を削り合うか、硬直状態となるか。


 結果は、膠着状態だった。

 どのチームも自分達から攻めることはしない。


 まぁそれは当然だ。

 自分達だけ攻めたら、二つのチームと挟み撃ちになってしまうのだから。


 それを嫌って遠距離から魔法の撃ち合いが始まる可能性を考慮していたのだけど、そうはならなかった。

 三チームがそうしなかった理由は、中位魔法を発動できる回数に限りがあるからだと思う。


 例えば、ルビー様は魔力が少ない方で、訓練で見せた時は中位魔法を短時間で使うのは二回が限界だった。

 一年生の平均魔力量で中位魔法を使える回数は、三回、多くても四回くらいがせいぜいなはず。

 二年生は一年生より一、二回程度は多く発動できるだろうけど、時間経過による魔力の回復を考えても平均すれば一試合で六回前後しか使えない。


 先手を取って中位魔法を使っても、距離が離れていれば避けられたり、距離減衰した上で下位の魔法で防がれてしまう可能性が高い。

 それを繰り返せばいずれ、致命の一撃である中位魔法が使えなくなってしまう。


 そんなこんなでこの膠着状態が生み出されている。


 この状況をどう打破するか。

 銀杯チームは答えをすでに用意してある。

 エド先輩の闇属性魔法である。


 エド先輩はこの学院で恐らく唯一の闇属性の祝福を得ている人だ。

 王国全体で見ても、闇属性の祝福を得ている人は珍しく、見たことのない魔法には対処がしづらい。

 だから、エド先輩が魔法で先手を取る。


 そのはずだった。


「あーっはっはっはっ! みんな一体どうしたんだい!? こんなに人がいるんだ! 目立たなくちゃ勿体ないじゃないかっ!!」


 白盾チームからたった一人で隊列から抜け出し、観客席まで届く大声を出す生徒がいたのだ!

 これにはエド先輩も困惑顔である。


「あ、あいつは! サファル・カルミア!?」


「二年生Aクラスの実力者だ!」


 いきなり説明してくれたこの方達は、同じチームのカーイ・シャード様とセッツ・シャード様。

 二人合わせて、カイセツのシャード兄弟!

 シャード子爵家、双子の二年生である。


「ご存じなのですか?」


「あぁ。あいつはとんでもなく目立ちたがりなんだ」


「だが実力もある。魔法こそ水属性の下位しか使えないが、恐ろしく目がいい。相手の攻撃を見切ってからカウンターで確実に仕留めにくるんだ」


 色々と驚きだけど、カルミアってルビー様と同じ家名では!? 髪色もルビー様と同じ青だし……。

 あ、そのルビー様が顔を両手で覆ってしゃがみ込んでしまってる……。

 あの動揺っぷりは本当に兄妹なんだろうな……。

 サファル様を見ていると、弟のノルが良い子で本当に良かったと思えてくる。


 悪目立ちしているサファル様を白盾チームが慌てて連れ戻そうとしているから作戦じゃないっぽい?

 っと、そんなサファル様に水の中位魔法が襲い掛かる。


「おっと! あぶないじゃないかルビー! 兄のこの美しい顔に傷が付いたらどうするつもりなんだ!」


 ルビー様は顔を真っ赤にして、魔法をもう一度放つ。


「はっはっはっ! そんな単調な魔法では兄は捉えられないぞ!」


 魔法を避けるのには十分な距離があり、サファル様は余裕を持って魔法を避けていた。

 ルビー様は魔力の限界が来たのかただただ悔しいのか、ペタリと座りこみ、地面をテシテシと叩いていた。


 サファル様はすごいなぁ。

 作戦であれそうでないにせよ、黒剣チームの戦力を削いでしまった。


 ルビー様は中位魔法を発動させるのは二発が限界なのだ。

 それを使い切らされ、黒剣チームは命中すれば確実に護石を割れる手段を一つ失ってしまった。

 これが後半に響いてくる可能性もあるんじゃないかな。


「ほらほらみんな! もっと僕を目立たせておくれ!! 僕を見ておくれ!!」


 サファル様が手を天に向かって広げ、クルクルとその場を回るという素なのか挑発なのかわからないパフォーマンスを続ける。

 そんなサファル様に影響されたのか、エリーゼ様が駆け出していた!


 これにはエド先輩も本日二度目の困惑顔、というより怒ってるね……。

 『あんのバカがっ!』と言っているのが容易に想像できる。

 エリック様は顔を手で覆い、溜息をついているように見えた。


 エド先輩はすかさず部隊に指示を飛ばしているようだ。

 下位の魔法のみ使える人、中位の魔法が使える人関係なく前へ出る。

 下位の魔法で援護かな?


 そう思っていたら、リズ先輩が一人で走りだした。

 でも、様子がおかしい……。


 エリーゼ様の援護かと思ったんだけど、何か必死の形相で走ってる?

 まるで何かから逃げるような……?

 しかも銀杯チームのみんなで魔法を撃ち始めた!!


 エリーゼ様はもうすぐサファル様と接敵しそうな距離。

 銀杯チームから放たれた魔法はお二人の場所に着弾しそう。

 対してリズ先輩はサファル様と銀杯チームの中間地点くらいを走ってる。


 いやぁ~面白くなってきたぁ!

 はてさて、これからどうなる一回戦!?

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