八十三話 軍師フロスト爆誕(予定)
武闘会のチーム決めが終わった翌日から、午後の時間は各チームごとの訓練に充てられた。
まずはリーダーを決めることになったんだけど、すぐに決まった。
エド先輩である。
これに関しては満場一致で、ものの数分で決まってしまった。
その後は、各チームの戦力把握の時間だ。
各チームの学年と所属クラスをひとまずまとめた。
結果はこんな感じ。
銀杯チーム(私達のチーム)
二年生 Aクラス:二名、Bクラス:四名、Cクラス四名
一年生 Aクラス:二名、Bクラス:二名、Cクラス四名
白盾チーム(アルヴァン殿下中心のチーム)
二年生 Aクラス:三名、Bクラス:四名、Cクラス:三名
一年生 Aクラス:四名、Bクラス:四名、Cクラス:二名
黒剣チーム(ジョルジオ様、ハナビス様、スイフト様がいるチーム)
二年生 Aクラス:一名、Bクラス:五名、Cクラス:二名
一年生 Aクラス:四名、Bクラス:三名、Cクラス:五名
クラス別にカウントするとこうなる。
銀杯チーム Aクラス:四名、Bクラス:六名、Cクラス:八名
白盾チーム Aクラス:七名、Bクラス:八名、Cクラス:五名
黒剣チーム Aクラス:五名、Bクラス:八名、Cクラス:七名
Aクラスは総合力が高いか突出した能力がある人がほとんどなので、学年によって大きく戦力差はないらしい。
Bクラス、Cクラスは一年間の経験の差は大きく出やすいみたい。
単純な戦力として脅威なのは、中位魔法を使える人達だ。
護石の耐えられるダメージが中位魔法直撃程度とルールに記載があったので、中位魔法はまさに致命の一撃。
中位魔法を使える人数が大事になるかもしれない。
そしてその人数だけど。
銀杯チーム 六名
白盾チーム 七名
黒剣チーム 六名
やはり、白盾チームの総合力が一番高いように思える。
一つ救いがあるとすれば、平民の生徒が一番多いらしいので魔法を使えない生徒が少し多いかもしれないこと。
黒剣チームは二年生Aクラスが一人しかいないけど、Bクラス、Cクラスのバランスは悪くなく、一年生エースが揃っているのが強みだ。
中位魔法を使える生徒は銀杯と変わらず、ジョルジオ様、ハナビス様という前線を支えた上で敵を倒せるお二人がいるので、破壊力のありそうなチームだ。
総合力では白盾チームに劣っている印象だけど、十分に優勝を狙えそう。
対して銀杯チームはほぼ全ての面で劣っている気が……。
クジの結果で他のチームより二名少ないというビハインドもあるし……。
「お前ら、顔を上げろ。
クラスはある程度参考になるが、学力も含めたクラス分けだ。純粋な戦力じゃねぇ。
人数が少ないのは痛ぇが、その分はオレとリズでカバーする。
それに、一年Aクラスのフロストとクレアはお前らも知っての通り、一学期に王子様を救った英雄様だ。
こいつらは恐らく、この学院で立った二人の無詠唱魔法の使い手だぞ?
戦力的に完全に劣っているってわけじゃねぇ。やるからには勝つ!! いいな!?」
「お、おーっ!」
各チームの状況を見て、意気消沈しかけていたチームの雰囲気をエド先輩が一発で変えてしまう。
さすが教国の司祭として人々を説きまわる人だ。
言葉に不思議と納得させられる力がある。
ただ、私の名前を出すのは止めて頂きたかった。
好奇の目がツライです……。
戦力的に乏しいと感じてしまうのだけど、悪いことばかりでもない。
チームを見渡せば、見知った顔がチラホラといる。
まず、二学期に部隊を組んでいるエリック様、エリーゼ様。
お二人はCクラスだけど、エリーゼ様は実力だけを考えればBクラス上位だ。
エリック様もダンジョンアタック以降は戦い方が見違えるよう変わっているし、頭が回る。
一年生の知り合いは、ウィル様、ルーリー様と二学期の魔物討伐で一緒に行動したラグ様、ボブ様。
ウィル様とルーリー様はBクラスで、実力は一学期の魔物討伐で確認している。
ラグ様に関しては正直よくわからないけれど、ボブ様は軍隊サソリ討伐自に優れた索敵能力を見せてくれた。
全く知らない人ばかりの中、一から連携精度を高めるよりは私個人としてはやりやすい。
個人の戦力で言えば、他のチームにはない点もある。
私とクレアの無詠唱魔法もそうだけど、クレアの光属性とエド先輩の闇属性が希少なこと。
これは情報が少なく、他のチームは対策を練りにくいことだろう。
士気が上がった所で、訓練開始である。
基本的には試合毎に編成する部隊はバディ単位になる。
全く知らない人達と一から連携を取るより、すでに実践を経験している方がいいからね。
そんなわけで、二組以上のバディで訓練したり、模擬試合をしていく。
訓練中、エド先輩に呼び止められる。
「一年で部隊指揮がとれそうな奴に心当たりがあるか?」
「? いいえ、わたくし他の部隊の方のことはあまり……」
「ウィルは知り合いだろ?」
「そうですね、一学期にご一緒しました。わたくしは言うのもおこがましいのですが、その……」
「あいつは部隊のリーダーだったろ? あーお前のハードルは高そうだな。クレアは心当たりはあるか?」
「いえ、お姉様を越えるような人材などいません」
真顔でなんてことを言うのか、この娘は。
「あぁ、こいつはもっとダメだったな。
仕方ねぇ。訓練で指揮がとれそうな奴がいたら見繕っておいてくれ」
「えと、エド先輩の目的を教えてもらえませんか?」
「試合になったら外から口出しすることはできないからな。連戦ができない以上、現場指揮官を複数決めておきたい。オレ、エリック、お前の三人は決まってるが、もう一人か二人ほしいところだ」
「ほえ? わたくし、ですか? それならリズ先輩の方が……」
「リズはな……。少数の局地戦なら経験と勘でオレよりいい判断ができるかもしれねぇが、集団はダメだ。強い奴を見ると自分が戦いに行っちまう。あいつは指揮官には一生なれねぇ。その点お前は魔物討伐でオレ達を従えたんだ。文句はない」
「お褒めに頂き光栄です。そういうことでしたらわかりました。良い方がいらっしゃればよいのですが」
最初はビックリして変なリアクションをしてしまったけど、伊達に十五年も貴族令嬢はやっていない。
私はビシリとエド先輩にお返事をする。
「指揮官じゃなくても見どころのある奴がいたら教えてくれ。別のことでも気になることがあれば声を掛けろ」
「あ。それなら一つ気になることがあるんですが、今お聞きしても良いですか?」
「あぁ」
「ルールで一試合毎にフィールドが変わるってありましたけど、去年はどうなってたんですか?」
「王都から少し離れた場所に朝早くから移動させられたぜ。草原や荒野だったり、上位魔法で地形を変えた場所もあったな。他にはダンジョンを利用したフィールドもあった」
「えぇ!? ダンジョンって安全なんですか?」
「王都付近にあるのは全部非活性ダンジョンだからな。試合前に教師達が魔物を掃討して、フィールド範囲外も見張りが付く。それでも運悪く魔物が湧いちまったら、それ込みで試合結果になる」
「ありがとうございます。それだと当日までフィールドの予想は難しいかもですね。
でも、傾向と対策は先に立てておければ優位になるんじゃないでしょうか」
ゲームで武闘会が行われるフィールドは決まっていた。
だから、フィールドを予測して作戦が立てられるのではないかと私は考えている。
ゲームの討伐系のイベントは今まで全部起きてるし、武闘会もフィールドは一緒なんじゃないかな?
ただ、ゲームでは最大で五試合しかなかったから、六試合目以降は未知だけど……。
「一昨年と去年ではかなりフィールドは違っていたようだから、無駄ではないが難しいだろうな」
「そうですか……。無駄ではないならわたくしが過去のフィールドを調べて、対策を考えてみます」
一試合目のフィールドを見てから判断する必要はあるけど、フィールド毎の編成や戦略を考えて提案してみるのは悪くないかも。
ただ、五試合分ピタリと当てちゃうと色々怪しまれるだろうから、ゲームのフィールド以外もフェイクを交えないといけないかな。
もしゲームと同じフィールドと順番だったら、戦術的にかなりのアドバンテージなはずだ。
フィールドによっては効果を発揮しやすい魔法だったり、その逆もきっとある。
ふふふ。
軍師フロスト爆誕である!




