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幕間 とあるメイドのおもてなし 決戦編

 ついに、決戦の日がやってきた。


「エド先輩、リズ先輩。今日はようこそおいで下さいました」


「あぁ、今日は世話になる」


「お邪魔するよ~」


 お嬢様がお二人を迎え入れる。

 私とカラ、ララはそれに合わせて頭を下げてお迎えする。

 さらにはクレアも並んで頭を下げている。


 スイフトさんのお店で会ったことで、今日のことを知ったクレアは自分も普段からお世話になっているからと、手伝いを申し出てくれた。

 あくまでベルガモット家としてのおもてなしだと一度は断ったのだが、クレアは頑固なのだ。

 自分も感謝の気持ちを伝えたいとお嬢様に直談判までして、手伝ってもらうことになった。

 気持ちは気持ちよく伝えましょうと言って許可なさるお嬢様はやはりクレアに甘い。

 それを許してしまう私もか。


 とはいえ、あくまでおもてなしするのは私達メイドの仕事。

 クレアにはデザートで気持ちを表すことにしてもらった。


 料理の手間が一品減っただけ。

 お嬢様に、ベルガモット家に恥をかかせるわけにはいかない私達は、朝から準備に追われた。

 屋敷の掃除を庭を含めて行い、お茶の用意と食事の準備。


 エルドレウス司祭はあまり贅沢を好まないと判断して、食材は平民が使う市場で全て手に入れ、その分手をかけた料理を用意した。


 アミューズ、オードブル、スープとコースで料理をお出しする。

 お嬢様の反応は上々、エルドレウス司祭とリズさんの反応も悪くない。

 魚料理は王都やベルガモット領など水辺に面していない所では少々値が張るのでお出ししていない。


 そして、これが私達メイドが苦労した一品!


「はんばーぐでございます」


「えぇ!? うそ! サラすごい!」


「こちらお嬢様が考案された料理になります。是非ご賞味下さい」


 そう、以前にお嬢様が食べたいと言っていた料理なのだ。

 このはんばーぐのレシピを聞いた時は絶対に作りたくないと思ったものだ。

 何せ、肉をミンチにしろというのだ。


 魚であればすり潰せば簡単だけど、肉は面倒だ。

 包丁で何度も何度も叩きつけ、こまかーく刻まなければならない。


 一度試した時には肉が粗くなってしまい、それはそれで美味しかったのだがお嬢様にはお出ししなかった。

 が、今回はメイドが三人である。


「肉汁が溢れてうめぇ……。これは何の肉を使っているんだ?」


 ふふふ。高級な食材などではありませんよ、エルドレウス司祭。


「豚と牛の肉を組み合わせております。牛はウィングブルの肉が安かったので、それを使用しました」


 ウィングブルは背中に翼が生えている魔物だ。

 その翼によって攻撃は……行われないし飛べないが、狂暴な魔物なのだ。

 ウィングブルは肉の旨味がとても強いが、同時にとても固い。

 煮込み料理にしないと食べられないと言われる程で、ミンチにするどころか切るのも一苦労である。


 その肉でこの一週間何度も試作した結果、カラとララの腕は今現在プルプルと震えている。

 凍らせてから刻めば楽じゃんとララが意見を出したが、魔法を使って凍らせるにもお金がかかる。

 エルドレウス司祭をもてなすにあたり、贅沢は禁止なのだ。


「まじか、あの固い肉がこんな柔らかくてジューシーに……」


「うん! ホントにおいしいよこれ! あたいまた食べたいよ!」


「私も! そうだ! これ売ろう! スイフト様にレシピを売ろう!」


「聖職者の前で生臭い話してんじゃねーよ。でもまぁ、あの店でいつでも食えるようになるのは悪くねーな」


 カラとララの貴い犠牲の甲斐あり、お二人に振る舞った料理は大好評の内に終えることができた。


 その後はクレアのデザートと紅茶をお出しして、食休みをされたらお帰りになると思っていたのだが。


「よーし、食後はやっぱり腹ごなしに運動しないとね。

 あんた女剣の弟子なんだろ? あたいと手合わせを頼むよ!」


 全く、あの学院は戦うことが好きな生徒が多すぎではないだろうか。


 その日、お嬢様はさっそくスイフトさんへ売りつけるためのレシピをまとめた。

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