幕間 とあるメイドのおもてなし 調査編
「サラ、別邸の準備で忙しいでしょ? それなら無理して私の夕食作らなくてもいいわよ?」
「お嬢様が自炊なさると? 笑止千万」
「笑止千万とか言う十代女子初めて見たよ……。
いや、私だってまったくできないわけじゃないけど、クレアが作るって言ってくれてるのよ。
それに、臨時収入も入ったし外食が少し多めでもいいかなーって思って」
お嬢様はダンジョンアタックでトレインに巻き込まれた際、報酬という形でお金を貰っていたのです。
「そう、ですか……。お嬢様もついにメイド離れする時が来たのですね……。およよ」
「今日は随分と飛ばすわね……。
サラも時間が合えば一緒に外食しに行かない?」
「いえ、私は準備があるのでたまにはクレアと二人で行っては如何ですか?」
「そうね。クレアと二人で夕食ってないし、たまにはそうしようかな」
「承知しました。それでは、申し訳ありませんが今週はお二人でお願いします」
「ん。わかったわ。それじゃ大変だと思うけど、エド先輩のもてなしは頼むわね」
「はい。お任せ下さい」
お嬢様のお世話ができないことは、ほんのちょっぴりだけ残念だ。
けれど、それ以上にお嬢様のお客様を持て成すことのほうが大事だろう。
私はお嬢様を学院に送り出し、別邸へと向う。
「それで、何か情報は得られた?」
私はカラとララに問いかける。
「質素倹約を地で行くような人ね。まるで聖職者とは思えないわ」
「さすがお嬢様が慕うだけあって、今の聖職者とは真逆なのね。
食事はあまり外食はしないってことでいい?」
「行きつけのお店が一軒あるくらいね。普段は自炊しているのよね? ララ」
「そうだね~。街で色々聞いて周ったけど、よく護衛の人と一緒に市場で買い物してるみたい。ボクも何度か見かけたことあるよ」
特に使用されていない別邸に二人も使用人を置いておく理由は、普通ない。
戦える人員であれば、魔物討伐のために領地に置いておく方がいい。
それでも彼女達姉妹が二人そろって王都の別邸にいる理由、それは王都の情報を集める役目を担っているから。
カラは色気のある美女で、主に富裕層や商人とのコネクションを持っている。
一方ララは愛嬌があり、人とすぐに打ち解けられる性格で下町の人々から情報を得てくる。
そんな二人に、エルドレウス司祭が王都でどんなご様子で過ごされているかを調査して貰っていた。
そして浮かび上がったお店が一件。
質素倹約を心がけている方に、あまり豪勢な食事を出すのは印象が良くないだろう。
行きつけの店と同グレードの料理を並べるのであれば、少なくともお嬢様に悪印象を覚えることはないはずだ。
無論、高級店の可能性も捨てきれないが、話を聞く限りそんなことはないのではないかと思う。
「明日、三人でそのお店に行ってみましょう」
「やったー!」
「経費? 経費よね?」
翌日、三人でエルドレウス司祭の行きつけのお店にやってきた。
お店の名前を聞いた時点でわかっていたことだが、スイフトさんが経営されているお店だった。
私も時折、お嬢様と通っているお店である。
席に通される直前、クレアの姿が目に入った。
「クレア? 奇遇ね。今一人?」
「え? あ? サラさん!? あっと、えぇ……。
あの、ちょっと待ってて下さいね!」
慌ててクレアが引っ込んだ後、ガタッっと慌ただしい音がして人が動く気配がした。
何か直観めいた物が働いた私はすぐにクレアが入っていった個室に飛び込む。
「お嬢様、これは一体どういうことでしょうか?」
部屋には、逃げ出そうとしていたお嬢様と、山のように積まれた食器があった。
「え? あ? こ、これは……そう! チートデーよ!」
「なんですか、それ」
「毎日毎日ダイエットしてると、ストレスたまるじゃない? だから、一日ストレスフリーな日を作ることによって……」
「なるほどなるほど、一理あるかもしれません。一学期のレコーディングダイエット? の時といい、お嬢様のダイエットに対するアイデアはなかなか興味深いです」
「で、でしょ?」
「ですが、それは長期的な節制によるストレスと代謝の低下を抑えるのが目的では?」
「理解力が高すぎる!?」
「明日からはやはり私がお食事をご用意します。もちろん、厳しい制限をしたお食事ですが」
「そんな~!!」




