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七十九話 前衛ってやっぱり大切

軍隊サソリの呼称を投稿済みの分も含めて、下記に変更しました。

・親サソリ → 軍隊サソリ

・子サソリ → 軍隊ベビー

 案の定である。

 一メートルを優に超すサソリが二体、そこにいた。

 あとおまけで五〇センチくらいのが一体。


 いやぁ、なかなか圧倒されてしまうね。

 今の私達じゃ押しつぶされるのが関の山だぜ!

 まぁ一体は所々焦げ付いているし、尻尾がないので威圧感は激減しているけど。


 冗談めかして現実逃避してみたものの、現実的に前衛がエリック様しかいない状況はかなりキツイし、実際問題一気に攻撃されたら防ぎきれない。

 クレアの様子を見るにそれほど魔力に余裕があるようには見えないし、もちろん私も残りの魔力は少ない。

 さっきの戦いで四分の一くらいまで減ってしまった。


「エリック様、どう致しましょう?」


「ははは。フローレンシアちゃん、何か必殺技ない?」


「そうですね、刺穿という岩をも貫く突き技が使える人の娘で、刺穿という技が使えるメイドの主人なんですけど、私自身は使えないんです。

 クレアは必殺技ないの?」


 私達にホーリーシールドを掛けてくれているクレアにダメ元で聞いてみる。


「ありますよ。さっき使っちゃいましたけど」


「え!? あるの!?」


「って、フローレンシアちゃんはこの状況でも余裕だね?」


「いえ、ただの現実逃避です」



 クレアが光の壁を作って時間を稼いでいたんだけど、魔力量の関係で私達と軍隊サソリの間に一枚壁を作っているだけだった。

 しかも、一連の茶番でそろそろ壊れそうという状況。



「新しく来たサソリに水を浴びせて動きを鈍らせないことには、わたくし達が生き残る道が見えませんね。

 それと、村に僧兵さんがいらっしゃったので、村の安全を確認できたら合流して下さるそうです」


「それならエドやジョルジオ様が来るまでの時間稼ぎができるかもしれない。問題はどうやって水を浴びせるか、だけど……。

 村に近づかせてしまうけど、堀まで下がって水の中を進ませるしかないか」


「村へ、被害は出ないでしょうか?」


「多少なりとも出る可能性の方が高いね。子爵領の中心から遠いこの場所じゃ、なかなか復興資材も手に入らないだろうけど……」


「なんとか、なりませんか?」


 クレアは自分の村とテルト村を重ねているのかも。


「クレアちゃんの気持ちはわからないでもない。けど、それで僕らが死んでしまったり、怪我をしてしまったら本末転倒だよ」


「そう、ですね……」


 みんな無事で、みんなハッピー。

 それが一番いいに決まっている。

 ハッピーエンドを目指すんだ。


「軍隊サソリは基本的に近くにいる人間を襲うようですから、堀を進ませた後に私達が移動すれば村へ入るようなことはないのではないでしょうか」


「自分でいうのもなんだけど、三体相手に前衛が僕だけでうまくいくとは思えないけど?」


「そうですね……。小さいのは私がアクセルで近づいて先に倒します。二体の相手は……」


「お姉様、来ます!」


 光の壁が破られ、三体のサソリがこちらへ襲い掛かろうとしていた。


「全くもう! 下がりながらアクセルの準備をします! 一旦、堀まで下がりましょう!」


 地形はU字の溝、それを取り囲む溝、その後ろに堀と村を囲う柵がある。

 堀は一メートルくらいの幅があるので、渡し板を両端と中央の三か所に設置している。

 私達と軍隊サソリは溝と溝の間にいたので、溝を飛び越え、中央の渡し板を使って堀を渡り、渡し板を念のため外す。


 軍隊サソリは体が大きいからか躊躇わずに私達を追いかけてきたけど、軍隊ベビーは堀を進む気配はない。

 よし、思惑通りに先に小さいのは倒せそうだ。


「お二人はサソリが堀りを進んでいる間に端の渡し板の所まで移動してください。わたくしは小さい方を倒します。クレアは尻尾が切れている方を光の壁で閉じ込めて」


 二人の返事をまたず、アクセルを二回分の効果で発動し、一歩で軍隊ベビーの所まで移動し、ダガーを突き刺す。


 後ろを見れば、すでに軍隊サソリは堀を渡り切る所だったけど、既に二人は渡し板の所まで辿り着いており、また堀を渡る。

 予想通り、軍隊サソリは村へは進まず、二人を追いかけるために堀を再度進んだ。


 二体のサソリは二度堀を進んだことで、全身がずぶ濡れになり、その動きは先ほどと比べて明確に鈍くなっているみたいだ。

 これなら一体閉じ込められれば、十分に時間を稼げる、はず。

 私はアクセルの残ったもう一回分の効果で、二人に合流する。


「光の壁で確実に一体だけ閉じ込めるには、二体の距離が近いです。なんとか二体を離せないですか?」


「尻尾がある方は僕が引き付ける。フローレンシアちゃん、悪いんだけどもう一体を任せられるかい?」


「もちろんですわ。でも、エリック様。お一人で大丈夫なのですか?」


「僕だって男だ。フローレンシアちゃんにだけいい恰好はさせないよ」


「ふふふ。頼りにしていますわ、エリック様」


 軍隊サソリの外皮は軍隊ベビーとは比べられないくらいに頑強で、攻撃もやっかいだ。

 リズ先輩は普通に尻尾を斬り落としていたけど、あの大剣とリズ先輩の実力があってこそ、なはずだ多分恐らく。

 尻尾と二本のハサミによる三方向からの攻撃は、防ぐのだけでもやっかいだ。

 ジョルジオ様は手応えがないとか言っていたけど。


 エリック様が尻尾付きと一対一で戦った場合、ダメージを与えるのは難しいと思うし、長時間攻撃を防ぎきるのも危険だと思う。

 なるべく早く二体を引き離し、合流して戦うしかない。


 二人と合流してからもアクセルを使っていて、残り魔力も心許ない。

 ウィンドカッターであの外皮を切り裂けるかはやってみないとわからない。

 バレット・マグナムであればダメージは十分に与えられるだろうけど、急所がわからないことには効率が悪い。

 エアーズガーデンなら仕留められるかもしれないけど、魔力がからっぽになってしまうので、尻尾の無い方に使う選択肢はない。

 はてさて、どうやって引き離したものか。


「はあぁぁあああ!!」


 結局、最後に頼れるのは金属ということで。

 私はダガーで軍隊サソリの足を斬りつける。

 全長一メートル以上あるので、足も大きく、私の腰くらいの高さがあり、その足の関節部分を狙う。

 ダガーでは切断とまではいかなくとも、しっかりとダメージを与えることができた。


 相手の攻撃はダガーで受けるか、避けるしかないので、避けることを重視する。

 二度程足を切り付けると、完全に意識は私に向けられた。

 攻撃はもうしないで、ただ攻撃を避けてもう一体との距離を離すことに専念する。

 そして、私と軍隊サソリの間を光が遮った。

 無事、クレアが光の壁を発動したようだ。


 相手していた軍隊サソリから意識を切って、急ぎ二人の方へ合流する。

 クレアも今の光の壁で、もうほとんど魔力が空っぽに近いようだ。


「少し下がって、魔力を回復していて。万が一の時はサポートがほしいから、完全に休ませてあげることはできないけど、大丈夫?」


「っはい、サポートは、お任せ下さい!」


 少し、酸欠のような苦し気な表情でそう言うクレア。

 ちゃんと休ませて上げたいけど、こっちも余裕がない……。


 エリック様が必死で軍隊サソリの攻撃を防いでいるけど、既に何度か被弾していて、ホーリーシールドの効果も切れてしまったようだ。


「エリック様、お待たせしました」


「ふぅ、助かった。サポート頼むよ!」


 尻尾の攻撃がやっかいすぎる。

 動きが鈍っているとはいえ、一回の被弾で戦況が覆されてしまう。

 一度食らってしまえば、麻痺毒によって動けなくなって全滅は免れないのだから。


 中位の魔法かエアーズガーデンを使うか……。

 戦況は変えられるだろうし、倒せるかもしれないけど、私はきっと魔力がなくなって気を失ってしまう。

 倒せなかった場合を考えると、決断ができない……。

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