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七十五話 攻略対象が強すぎ問題

 ミーアラッシュの食事を邪魔した挙句、討伐までした私達はその後も索敵を続ける。

 すると、餌を探しているだろう二体に遭遇し、これをあっさりと討伐する。


 テルテ荒野の中心部に向けてさらに進んでいくと、巣穴と思しき穴を見つける。

 巣穴の高さ、横幅共に六〇センチくらいはありそうな穴だ。

 数メートル離れた所に二つ程穴があり、計三つの出入り口が存在していた。

 ミーアラッシュの全長を考えると、深さや長さも相当なものになっているはずだ。


「匂いがきついきゅるりん。多分、中にいるきゅるりん」


 エリーゼ様が巣穴に偵察に行って、くんくんされて戻ってくるなりそう報告して下さった。

 ちょっと離れていてもほんのり匂うので、ここで生活しているだろうことは想像がつく。


「全部巣穴からおびき出す必要がある。騎士団では火魔法を使って魔物を炙り出すことが定石だが……」


 そう、私達の部隊には火魔法を使える人がいないのだ。

 巣穴に籠られたら手の打ちようがない。

 はてさて、どうやっておびき出すべきか。


「ルビーがぁ、巣穴を水で満たすのはどうですかぁ?」


 ルビー様はぽやんとした雰囲気にも関わらず、相も変わらずエグイことをおっしゃる。

 確かにそれならおびき出せるか、なんならそのまま溺れさせることもできるかもしれない。


「ミーアラッシュは水が苦手だから、悪い手ではないね。ただ、深さと長さがわからない以上、どれくらいの水が必要かわからない。

 それをルビーちゃんの魔力量で実行するのきついんじゃない?」


「そうですねぇ」


「それなら火を近くで焚いて、煙をわたくしの風魔法で巣穴に送るというのはどうでしょうか」


「それも確実とは言えんが、他に妙案がなければそれでいいのではないか? 風を送る場所を二か所にして、一か所だけ逃げ道を作っておけばそこから出てくるだろう」


 以前におっしゃていた騎士団式のやり方だろう。

 他の方から案はでなかったため、私の案が採用されることとなった。


 三つある巣穴の内、二か所でそれぞれ火を起こし、穴の前で割り当てられた人員が待機する。


 巣の前で待機するメンバーの組み合わせは、煙を送らない場所にジョルジオ様、ルビー様、エド先輩、リズ先輩と最大戦力を。

 他の巣穴では、一か所をエリック様とエリーゼ様。

 もう一か所をラグ様、ボブ様、私、クレアで担当する


 配置が完了したことを確認して、エリック様の所から風魔で煙を送り、私達が担当する所からも煙を送る。

 しばらくすると、「ケケッケケケッ!」と中から鳴き声が上がり、予想通り煙を送らなかった巣穴から二体のミーアラッシュが姿を現した。


 入口ですぐに倒してしまうと入り口を塞いでしまうし、血の匂いが直接穴に行ってしまい中に残っているだろう他の個体に警戒されてしまうかもなので、入り口から引き離すことにしていた。

 

 入口から出て周囲を確認しようとしたミーアラッシュを、ジョルジオ様は大楯でリズ先輩の方に弾き飛ばし、リズ先輩が大剣で一撃のもとに叩き斬る。

 もう一体は穴の真裏に待機していたエド先輩が、巣穴から出てきた所を棍で後ろから叩き、前方へと追いやってルビー様がフリーズコフィンで倒す。


 二体を倒してすぐ、またも巣穴から「ケケケケ」という鳴き声と共に三体が現れる。

 先ほどと同様に一体目が巣穴から出てきたところをジョルジオ様とリズ先輩のコンビネーションで仕留める。

 二体目はルビー様の魔力量の問題でフリーズコフィンを発動できないため、アクアボールで動きを鈍らせた所をエド先輩が棍で倒す。

 ただ、こちらは一撃というわけにはいかず、少し時間がかかっていた。

 三体目は一体目と同様にジョルジオ様とリズ先輩が倒していた。


 私達と、エリック様達が備えていた穴からは結局現れず、計五体を倒して戦闘は終了した。

 実にあっけないが、主戦力が強すぎ問題である。




「お姉様、私達の索敵範囲にミーアラッシュ多くないですか? 荒野全体で二〇体前後と聞いてましたけど」


「確かにそうねぇ。すでに十一体倒しているから、約半分になるかしら」


 想定していた数の半分近くが私達がいるテルテ荒野の中心からみて北東の方角に集中している。

 そもそも想定していた数が少なかったのか、本当に北北東に方角に集中しているのか。

 もし北北東に集中しているんだとしたら、餌がそれだけ豊富だったってことになるのかも。

 嫌な予感しかしない。



 その後は魔物を発見することはなく進み、テルテ荒野の中心部である集合地点が見えてきた。

 南東から出発していただろう部隊は既に索敵と討伐を完了しているようで、先に辿り着いていた。


 そちらに合流しようとした所で、西側から花火のような救援要請の魔法が打ち上がる。

 救援要請の魔法は緊急度、危険度によって形が違うんだけど、今回のは危険度が一番低い物だった。

 全滅するような事態ではないけど、西側の部隊だけでは対処が難しいのかもしれない。

 私達は顔を見合わせ、西側に向かって駆けだす。


 一〇分程駆け足で走っていると、人影が見えてきた。

 それに、魔物の姿も。

 魔物はミーアラッシュが六体と軍隊サソリが二体。


 二部隊連携とはいえ魔物の数が多く、対処しきれないと思って救援要請を出したんだろう。


 合流目前で、二体の軍隊サソリが周囲に軍隊ベビーをまき散らしながら逃げ出すのが目に入る。


「軍隊サソリが二体、それぞれ別方向に逃げていますわ!」


「くそっ! 二体倒すのは間に合いそうもないぞ!?」


 私達が軍隊サソリを討伐した時は最初に水魔法をあてて動きを鈍らせていたけど、今逃げている軍隊サソリは動きが早かった。

 位置的に北側に逃げていた軍隊サソリが完全に包囲を抜けてしまう。


「あの方向、テルト村の方です!」


 クレアの悲痛な叫びが響く。


「私が行きます!」

「僕が行く!」


 馬を引いていたエリック様と、クレアがそう叫ぶ。


「クレアちゃん、馬に乗るんだ!!」


「はいっ!」


「僕たちが時間を稼ぐ! ミーアラッシュを討伐したらみんなも来てくれ!」


 そう言ってクレアを鞍に載せ、エリック様ご自身も飛び乗ると、すぐに馬をテルト村へ向けて走らせる。

 馬の速度なら軍隊サソリよりは先にテルト村に着くことはできるはずだ。



 私達は一刻も早くここにいる魔物を討伐しなければ。



 なんとかルビー様が水魔法でもう一体の軍隊サソリの動きを鈍らせ、ジョルジオ様とリズ先輩で軍隊サソリを素早く倒す。

 残ったメンバーで軍隊ベビーの掃討を行うけど、バラバラに逃げた軍隊ベビーを全て倒すまでにそれなりの時間を要してしまった。


 軍隊サソリの討伐が終わり、六体いるミーアラッシュの討伐に加勢する。

 南東から出発していた部隊もいつの間にか合流しており、全六部隊で包囲することでなんなく討伐することができた。


 一通りの討伐が終わった所で、後片付けや教師への報告は他の部隊に任せ、私達はテルト村へ向かうことにした。

 軍隊サソリがテルト村へ行くかは正直未確定だけれど、何かあってからじゃ遅いのだ。

 急いで向かいたいが、馬はなく歩きではどんなに急いでも二時間はかかる。


 その間に、クレアやエリック様に何かあったらと考えると怖くて仕方がない。


「ジョルジオ様、エド先輩。申し訳ありませんが、わたくしは先に行きます」


「何だと?」

「どうやってだ」


 ジョルジオ様は驚きの声を上げ、エド先輩が怖いくらいの眼光で私に質問をする。


「アクセルを発動すれば、この中で一番早くテルト村に辿り着くことができます」


「魔力を多く消費するんだろう? そんな状態で村について、お前は戦えるのか?」


「殲滅はできないかもしれません。それでも皆様が到着するまで村を守り、時間稼ぎをするだけなら、クレアとエリック様の三人がかりならできるはずです」


「俺は良いと思う。エリックとクレアだけでは心もとないしな」

「わかった。二人を、民を頼む」


「はい! 行ってきます!」


 私はすぐに走り出し、途中途中でアクセルを発動させて急いでテルト村へ向かうのだった。

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