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七十四話 女の子はいつだって特別でいたい

「ぐぉぉおおおお!!」


 ルビー様とミーアラッシュの間に入ったジョルジオ様に、高速とも思えるパンチの連打が叩きつけられる。

 咄嗟だったためか大楯で防ぐことができておらず、攻撃の半分はジョルジオ様のその身体に直接受けてしまっていた。


 内臓が破裂すると言われている程の強烈なパンチの連打がようやく止み、四つ足となってミーアラッシュは一旦下がる。


「「ジョルジオ様!」」


 私とルビー様の声が重なる。

 私が駆け寄るより早く、ルビー様が地面にへたり込んだままジョルジオ様に縋りつく。


「ルビーのためにぃ、ジョルジオ様がぁ……」


「だい……じょうぶ……だ。お前は、俺が守るから、心配するな。俺は……、騎士だ、ぞ……」



 あ……。

 そっか、そりゃぁそうだよね。

 私なんかが、特別なはず、ないじゃん……。



「ジョルジオさん! ひとまずすぐ動けるようにヒールを詠唱します!」


 クレアがジョルジオ様の元にかけより、ヒールを詠唱する。

 一旦下がったとはいえ、ミーアラッシュは無傷だ。

 中位の回復魔法であるプリズムヒールを詠唱する余裕がない。


「ヒール! ジョルジオさん、動けますか?」


「あぁ、万全ではないがなんとかな。アーススキンの魔法のおかげだ。お前たちと魔法の訓練をしておいてよかった」


 アーススキンは防御力を高めるバフ魔法だ。

 ジョルジオ様にはゲームと同様守護という特性があると考えられるし、アーススキンの魔法と合わせてミーアラッシュの猛攻にもなんとか耐えられたんだと思う。

 でも、ジョルジオ様の言葉通り、完全には回復していないみたいだ。

 だって、今も少し足がふらついているから。

 また同じ攻撃を受けたら致命傷になってしまうかもしれない。


「お前たちは俺の後ろにいろ」


 守るべき対象が下手に散らばるより、一か所にいた方がジョルジオ様も守りやすいんだろう。


「いいえ、わたくしはジョルジオ様と一緒に前で戦いますわ」


 特別じゃなかったとしても、私は私の思いを大事にしたい。


「全く、お前という奴は」


 ニヤリと笑いながらジョルジオ様が答える。


「行くぞ!」


「はい!」


 ジョルジオ様にはまだダメージが残っているはず。

 クレアとルビー様を守りながら攻撃するのは厳しいと思う。

 私が攻撃役になるか、少なくともミーアラッシュの注意を引き付ける必要がある。

 けど、少しだけ時間が欲しい。


「アクセルを使います。申し訳ありませんが、少しだけ時間を稼いでいただけますか」


「了解だ

 うぉぉおおお!!」


 ジョルジオ様の気合の叫びにミーアラッシュの注意がそちらに向く。

 その間に、私はアクセルのイメージを固める。

 右足に風をまとわせる。

 効果は三回あればいい。


 ――アクセル!


「ジョルジオ様、参ります!」


 一回目、右足に力を籠め、一瞬でミーアラッシュの横に移動する。


「やぁぁああ!」


 ダガーで顔と胴に二回切り付ける。


「キュィケケケケーー!!」


 浅い傷しか与えられなかったけれど、ミーアラッシュは怒り、注意を私に向けた。

 二回目、立ち上がって攻撃態勢に入ろうとしたミーアラッシュを確認して一気に後方へ跳ぶ。


「ふっ!」


 って、ヤバッ! 高く飛びすぎた!!

 制御がうまくできず、多分高さ三メートルくらいで距離は十メートルくらいを一気に跳ぶ。


 アクセルの効果を使わないために、左足だけで着地しなきゃ!


「つっ!!」


 なんとか着地したけど、左足を捻ったかもっ。

 でも、これくらいの痛みっ!


 私が一気に距離を話したため、ミーアラッシュは攻撃態勢からまた四つ足になって私の方へ駆けようとする。

 けどね、させないよ。


 ダガーをギュッと力一杯握り、横に構える。

 斬り付ける必要はない。

 ただ勢いにまかせるだけでいい。


 三回目、今度はミーアラッシュを通り過ぎるつもりで右足で全力で地面を蹴る。


「くぅらぁえっぇえええ!!」


 高速で視界が通り過ぎる。

 その最中、私は構えた右腕のダガー越しに重い衝撃を受ける。

 斬りつけるわけではなく、ただアクセルの効果によってミーアラッシュの身体を斬り裂きながら進んだから。


 確かな手ごたえにダガーを落とさないように精一杯しっかりと握りしめ、衝撃がなくなった所で今度は両足でしっかりと着地する。

 後ろを振り向くと身体を切り裂かれたミーアラッシュが目に入る。

 傷は深かいみたいだけど、倒すには至らなかったみたいだ。


「キュィケケケケーー!!」


 再度、怒り狂って叫ぶミーアラッシュ。

 体を私の方に向ける、けど。


「いい女を追いたくなる気持ちはわかるがな。先ほどの礼、させてもらうぞ!」


 ジョルジオ様がロングソードを上段に構え、一気に振り下ろしてミーアラッシュの首を落とした。

 ってゆーかぁ、いい女だなんて照れちゃいます!




 二体の討伐が終わって周囲を確認すると、ちょうどエリック様とエリーゼ様の方も終わったみたいだ。

 反対側にいたエド先輩とリズ先輩が二人に合流して、討伐したみたい。


 ジョルジオ様がダメージを追っていたので、エリック様、エリーゼ様、エド先輩、リズ先輩の四人で光の壁を抜け出せずにいた軍隊サソリを倒して下さった。



 戦闘が終わり、ジョルジオ様の方見る。

 まだ少し辛そうだけど、大怪我はされていなさそうだ。

 そんなジョルジオ様に、ルビー様が涙目になりながら抱き着いて、詠唱をしている。

 水魔法は光魔法程効果は高くはないけれど、回復魔法が使えるのでそのまま傷を癒すつもりだろう。


 チクリと、心が痛む。

 『お前を守る』ジョルジオ様のその言葉は、特別な言葉ではなかった。

 私は何を勘違いしていたんだろう。

 ジョルジオ様が私に向けた言葉は結局、騎士として仲間に向けた物でしかなかったんだ。


 ん。

 でもまぁ、いいんだ。

 特別な言葉ではなかったかもしれないけど、ジョルジオ様と過ごす時間は何をしてても楽しいし、まだまだ未来は、お互いの気持ちはこれから育んでいければいいのだから!

 いつか、ジョルジオ様の特別に、私はなってみせるんだ!



「お姉様、もう大丈夫ですよ」


 いつの間にか私の隣に来ていたクレアがそう言って、私の手を握りゆっくりとほぐす。

 すると、ダガーがカィィンと音を立てて地面へと落ちる。

 ボーッと考え事をしていたせいもあるけれど、アクセルでミーアラッシュに突っ込む衝撃で落とさないように力一杯握っていたダガーを、戦闘が終わってもずっと握りしめていたらしい。


「痛っ!」


 さらに、気が緩んだからか左足の痛みが急にやってきた。

 ダンジョンアタックから今日まで、さらに痩せていてよかった……。

 二学期始まったばかりの体型だったらもっと酷いことになっていたかもしれない。

 ふふふ、今は一学期に痩せた時に新調した制服がギリギリ着れないこともないくらいまでになったのよね!


 さらに腕もミーアラッシュにアクセルとダガーで斬り裂いた衝撃によって、軋むように痛むのを自覚した。

 アクセルで突っ込むのはあり寄りのありな戦術だと思うけど、改良はした方がいいかもしれない。


「お姉様!? 大丈夫ですか!? お怪我をされているんですね! 見せて下さい! 今すぐヒールしますから!」


 慌ててクレアは地面にハンカチを引き、その上に私を座らせて足が腫れていないかを確認しながらも詠唱を開始する。

 って、いつもより詠唱長いよね?


「プリズムヒール!」


「アホぉぉお!!」


 ミーアラッシュのマッハなパンチを食らったジョルジオ様にはヒールで、何故足を捻った私には中位のプリズムヒールを使うのかっ!


「何をおっしゃるんですか! お姉様のお体程大事な物なんてありません! じっとしていてください!」


 なぜか私が怒られた。

 解せぬ。

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