六十八話 やっぱり来ました魔物討伐
全部隊がダンジョンアタックを無事に終え、十月と十二月にあるかもしれない魔物討伐と十一月の武闘会に向けて訓練に励む。
私達の部隊も例外ではなく、訓練に明け暮れていた。
そんな訓練で変わったことがある。
ジョルジオ様とエリック様の取り組み方、気合いの入りようが今までと全然違うのだ。
「まだまだぁ!」
「二人同時に来い!」
「きゅーるりん!」
エリック様は今までと違い、安全圏から指示を出したり戦ったりするのではなく、ご自身が積極的に前に出るようになり、負けても負けても挑むというなんというかガッツに溢れていた。
一方ジョルジオ様は一対複数の戦いを望まれるようになり、クランベル姉弟と後衛一人という三人組と模擬試合を行っている。
さらに、嬉しいことに魔法にも随分と興味を持って下さるようになり、私とクレアとジョルジオ様で魔法の訓練や勉強もしている。
ダンジョンアタックでは確かに大変な目にあったけど、私達の部隊に良い意味で大きな影響を与えてくれた。
ジョルジオ様の変化についてはわからなくもない。
私自身、エド先輩の言葉は胸に突き刺さったし。
私を巻き込んだ(と思っているだろう)ジョルジオ様はなおさらだったろう。
けど、エリック様は何故こうも訓練への取り組みが変わったのかわからなくて、エリーゼ様に聞いてみた。
「二人を残していったことが、不甲斐ないと感じたみたいきゅるりん。
ウチとしては未来の領主の未来が明るくなって喜ばしいきゅるりん」
エリック様も色々と思う所はあったのだろうけど、私のわがままも入っていたからなんだか申し訳ない気持ちになる。
そして、エリック様が変わった所がもう一つ。
「フローレンシアちゃん、疲れてないかい? はい、タオル」
「動いた後にはちゃんと水分補給しなきゃダメだよ。はい、これ」
「ねぇねぇフローレンシアちゃん、風魔法の詠唱句を変える奴なんだけどさ~」
「おいしいシフォンケーキを買ってきたんだけど、フローレンシアちゃんもどう?」
と、なんだかすごい面倒を見てくれるようになったのだ。
まさかして私モテ期到来!? なんて一瞬頭をよぎったけど、エリーゼ様がおっしゃっていた不甲斐なさから来るものなんだろうと、なんだかちょっとだけ複雑な気分を味わっていた。
そしてクレア。
休日には足しげくエド先輩の所に通うようになった。
ん~、そうですよ、彼女はゲームの主人公。
ついに攻略対象とのラブロマンスが!?
まぁまぁ妹分の恋路を生暖かく見守ることにしましょうかねぇ。
そんな日常を過ごしていた十月の中頃。
教師から翌週に魔物討伐を行うことを通達された。
一、二年生で組んでいる十部隊の内、六部隊が対象となるそうだ。
討伐対象となる魔物は、ミーアラッシュ。
見た目はミーアキャットに近いみたい。
足と尻尾で垂直に立ち、その態勢からパンチをラッシュしてくるんだそうな。
それはもうマッハなパンチを。
その威力は強烈で、まともに食らってしまえば内臓が破裂すると言われている。
ただ、マッハパンチは足と尻尾で立った態勢からでしか攻撃をしてこないので、近づかなければさほど脅威ではないみたい。
今回討伐対象となるミーアラッシュはとある荒野で目撃情報が広範囲に渡っていて、六部隊が対象となった。
もちろん、私達の部隊も討伐に向かうことが決まっている。
ミーアラッシュの群れは複数の家族が集まって行動し、多いと二○体くらいになる。
複数体相手が想定されるので、一学期の時と同じように二部隊単位で行動をすることになった。
一緒に行動する部隊は任意で決めていいとのことなので、前回お世話になったエド先輩にお返しをしたいなんてクレアと話していた。
魔物の討伐対象はゲームと一緒だった。
ゲームと一緒だとすると、隠しイベントがあるんだけど……。
授業と訓練であっという間に魔物討伐の日がやってきた。
ミーアキャットが目撃された荒野は今までの討伐やダンジョンの時と違って、現地まで結構遠い。
学院から南へ馬車で向かい、二日と半日程かかるのだ。
途中止まる宿も考慮して、各部隊は別々のルートを進むことになる。
やんごとなき身分の方々が良い街、村を通るルートを先に決めていく。
一応私は気になることがあり、とあるルートで希望を出すようエリック様にお伝えしておいた。
いえね、ベルガモット領とはまた違った品種の梨を育てている村があるんですよ、奥さん。
そしてそして我らが部隊と共に行動する部隊はこちら。
エド先輩、リズ先輩を始めたとする四人の部隊です。
ダンジョンの洞窟の時もそうだったんだけど、エド先輩とリズ先輩、あと一年生の二人という構成の部隊。
二年生は去年の魔物討伐で怪我を負ったバディがいて、一組退学されて少ないのだとか。
エド先輩達はAクラスでもトップクラスの実力らしく、四人の部隊になったんだって。
一年生はBクラスの男爵令息と、Cクラスの平民である男子だ。
二人は同じ故郷から学院に入学しに来ていて、子供の頃からの友達であるらしい。
男爵家は平民との距離が近いので、貴族と平民でも友達になるパターンは特別多くもないが、珍しくも無いのだ。
お名前は男爵令息がラグ・ライチ様で、平民の方はボブ様。
ライチ男爵家はベルガモット家と同じくシトロン伯爵という貴族の傘下に属する家だ。
ラグ様はパーティーなどでお目にかかったことはあるのだけど、ほとんどお話ししたことはない。
太っている私はパーティーでは嫌厭されていたから。
まぁそれはそれとして、今は同じ学院で同じ魔物討伐に参加するのだから仲良くできればいいなと思う。
集合場所に全部隊が集まると、今回の魔物討伐の場所とミーアラッシュについて改めて教師から説明を受け、各部隊が通るルートが発表された。
私達の部隊は、私が希望したルートを通ることになっていた。
これでクレアにも梨をまた食べてもらえるね!
エド先輩達の部隊と合流し、それぞれの部隊で馬車に乗る。
前世で車や電車を知っている身からすると、馬車の旅というのは中々にしんどい。
ものすごい揺れるというほどでもないけど、それなりに衝撃が来る。
ふっかふかのクッションとかがあればましだけど、学院が用意した馬車にそれほど高価な物が用意されているわけもない。
「わぁ! お姉様、これは全然衝撃が違いますね! ありがとうございます!」
なので、サラに用意してもらったクッションを持参して下に引く。
もちろんクレアの分も用意してきたのだ。
「サラに用意してもらったのよ。帰ったらサラにお礼を言っておいて」
「はい!」
人や馬車が何度も通ることで、結果的に道は平たんになっていく。
王都付近は道が整備されていることもあって揺れも少ないけど、離れれば離れる程道は荒れる。
石や凹凸も多くなっていき、そういった物に車輪がかかるとガクリと揺れる。
結果、お尻を痛めながらも無事? 一日目の移動は終了した。
フ)凹凸は[おうとつ]、凸凹は[でこぼこ]と読むらしいわ
サ)凹も凸もちゃんとした常用漢字として定められているみたいですね
ク)漢字って言われるとなんか不思議な感じがしますね
フ)かんじだけに?ってやかましいわ!




