表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

74/126

六十七話 エド無双

「少し休んだら入り口まで戻って、他の奴らと合流するぞ。


 つーか、あいつどんな骨してやがんだ。殴ったオレの手の方が痛ぇんじゃねぇか?」


 エド先輩は右手をバッバッと払うように振りながらそんなことを言う。

 殴られたジョルジオ様を思うと理不尽な気もするけども。


 殴られたジョルジオ様はというとうなだれたまま、ほとんど動いていなかった。


 そのお姿を見て私は複雑な感情を抱かずには居られない。

 私が残ると言いださなければこんなことにはならなかったのではないだろうか?

 ジョルジオ様お一人だったら折を見て逃げ出せていたのでは?

 逆にもっと危険な目に合っていた可能性は?


 何が正解だったか、私にはわからない。


 ただそれでも、私やジョルジオ様、他の部隊の方々は全員無事だった。

 それは事実で、結果論だけど最悪の選択はしていなかったと思いたい。

 無論、エド先輩とリズ先輩が駆けつけてくれたから言えることだけど。


「エド先輩、リズ先輩。改めて、わたくし達を助けて下さってありがとうございます」


「あぁ。先輩が後輩を助けるのは当たり前だろう? 気にすんな」


 エド先輩はぶっきらぼうに、ぷいっとそっぽを向いて言う。


 かっこかわいい!!


 美少女としか言えない容姿にぶっきら棒な物言いと仕草!

 私じゃなかったら恋に落ちちゃってるね!


 っと、そんな空気じゃなかった。


「いえ、それでも、です。お二人が来て下さらなければ、どうなっていたかわかりませんから」


「うん。あたいは感謝を受け取ったよ。今度お礼にご飯でもごちそうしてもらおうかな!」


「はい! 是非ご馳走させて下さい!」


「あーわかった。オレの分も頼む。店とかじゃなくていい。そうだ、サラだったな。あいつに飯を作ってもらおう」


「あの……。それで、よろしいのでしょうか?」


「気持ちの問題だろ? それともなんだ、お前んとこのメイドの飯は美味しくないのか?」


「いいえ! そんなことはありませんわ。サラは戦闘からジョークまで完璧ですから!」


「メイドらしさの欠片もねぇんだが……」




 休憩を切上げ、全員で入り口に向かう。

 シールダイトを入手できていないけど、さすがにこのメンバーで奥へ進むわけには行かない。

 まずはエリーゼ様達や、エド先輩達の部隊と合流を目指す。


 帰りは本当に何もなく、入り口まで戻ることができた。

 魔物は私達も含めた各部隊がほとんど倒した後だからだろう。


 エリーゼ様とルビー様は私達の姿を見つけると駆けて迎えて下さった。

 エリーゼ様はなんだかんだエリック様が心配だったのか、無事を確かめるように体を確認していた。

 そしてルビー様は道中もずっとうなだれたままだったジョルジオ様の所へ駆け寄り、ぴったりと寄り添いながら何事か話しかけていらっしゃった。


 少しだけモヤっとしたけど、バディのことを心配するのは当然か。




「で、トレインを起こしたお前たちはこの落とし前をどうやってつけるんだ?」


 エド先輩は逃げてきた部隊に対して、問いかける。


 変わらず、場を支配するのはエド先輩だ。

 見た目に反してこの人はかなりのやり手である。

 これもまたギャップ要素なり。


「あ、あぁ。まずは助けてくれたありがとう。この礼は必ず……」


「だからその礼はどうするのかって聞いてんだよ」


「それは、まだ考えてないが……」


 逃げてきた部隊のリーダーだろう人が答えるがエド先輩の追及は続く。


「まぁそんなとこだろうとは思ったけどな。

 まず、取ってきたシールダイトは全部置いていけ」


「そんな! 危ない目に合ってまで俺達がせっかく取ってきたのに!」

「そうよ! いくらエド君でもそれはさすがに」


 逃げてきた部隊から口々に非難の声が上がる。


「あぁ!? 誰のせいでこんなことなってると思ってんだ?」


「それは……」


「でだ、シールダイトを渡さねぇっつんなら、ネイルバットの討伐数分の金は払うんだろうな?

 ざっと二百匹はいたぞ」


「い、いくらになるんだ?」


「教国で討伐依頼を受ける場合、ネイルバットは群れの規模によって脅威度、金額が変わる。

 小さな群れなら一匹辺り銅貨五○枚、通常は銅貨八○枚だな。

 今回のトレインみたいな大規模な群れだったら大銅貨一枚以上でもおかしくねぇ」


「大銅貨一枚で二百匹って、銀貨二枚!?」


 物価の感覚はちょっと違うけど、銀貨一枚は前世の感覚で言うと大体三○万円くらいかな。

 ということは、六○万円!!

 領地で魔物討伐を行う場合の予算を考えたらべらぼうに高いってわけじゃないけど、学生にしたらかなりの大金!!


 貴族の子弟なら払えないこともないだろうけど、小さな村なら村単位で一ヶ月は余裕で暮らせちゃうよ!?

 とはいえ、あの部隊の中に高位の貴族が居たらなんとでもなるか。


「当然だろ? 騎士団所属の十人隊長が死にかけたレベルだぜ?

 お前らは、それだけのことをしたんだって知れ」


「そんなつもりじゃ……」


「まぁ今すぐ全額払えるなんて思っちゃいねぇ。トレインを考慮しない額でいいよな、エリック」


「え? あ、うん」


「だ、そうだ。

 一匹辺り八十枚の二百匹、銀貨一枚と大銅貨六十枚払うなら、シールダイトは置いて行かなくてもいい。

 口止め料込で学院側には黙っておいてやる。


 シールダイトを置いて行くなら、大銅貨五十枚でオレとリズ、それにエリック達の部隊も護衛でもう一度こん中入ってもいい。この場合は悪ぃが学院には報告する。


 どっちを選んでもこの件は手打ちだ。文句は言わせねぇ」


「エド、勝手に!」


 思わずエリック様が抗議の声を上げるが。


「落としどころが必要なんだよ。

 確かにジョルジオとフロストが理不尽に危険な目にあったかもしれねぇ。

 でもな、罪を(あがな)っても許しがない世界なんて、クソくらえ、だろ?」


「エド、ちゃんとした教国の教えを広めなよ」


「うるせぇリズ」


 ぽかーん。

 とんとん拍子で話しが進みすぎて、どういうことなんだってばよ! 状態。

 よくよく考えてみたらなぜ二百匹分の討伐金額を払わなければならなくなっている?


 結果的に全て討伐できたけど、本来はもっと早く逃げればよかっただけだし……。

 まぁ、時間稼ぎをして包囲されかけてたから実際は難しかったけども。


 というか、エド先輩がお金を話しをするのが意外すぎる。

 ベルモの魔物討伐の時はお金を受け取ろうとしていなかった人が。



「少し、部隊で話しをする時間をくれ」


 そういって、逃げてきた部隊の人達は一か所に集まり相談を始めた。



「エド先輩、ベルモの討伐依頼の時にはお金を受け取ろうとしなかったのに、何故今回は積極的にお金のお話しをされたんですか?」


 私はさっき疑問に思ったことをそのまま聞く。


「民を守る、それが教国の意義だとオレは思ってる。

 理由なく虐げられ、守る力がない奴らを力ある教会や貴族が守るのは当然のことだ。

 けど、今回の件はそんなんじゃねぇだろ。


 あいつらは魔物を倒す力を持っているにも関わらずトレインを起こした加害者で、ジョルジオとお前は被害者であり、魔物を討伐した功労者だ。

 信賞必罰(しんしょうひつばつ)

 当然、罪過ある者は罰せられ、功績ある者は賞を受けるべきだ。

 その手段で、金が一番わかりやすいってだけの話だ。


 それに、ちょっと前に金について改めて考える機会があったからな」


「はぁ~。なるほど」


「バカ面してんな」


 ポコりと、エド先輩に頭を叩かれる。


「へへへ。でも、エド先輩ってすごいですね」


 プイっと、エド先輩は横を向いて去っていってしまった。

 テレた? テレたんですね!?




 クレアが何故か持ってきていたクッキーを摘まみながら、結構な時間が立った。

 ようやく、逃げた部隊の結論が出たみたいだ。


「待たせてすまない。結論だけど、ネイルバットがトレイン状態になった時、君たちに討伐依頼を行った。それで手を打ってほしい」


「わかった。ジョルジオとフロストは討伐依頼を請け負い、オレとリズが加勢した。これでこの件は終わりだ」


「頼む。報酬だが、今は銀貨の手持ちがない。大銅貨六十枚は集めたから先に渡しておく。エドを仲介者として銀貨も来週中に払うことを約束するよ」


 そういってリーダーの方はエド先輩にお金を渡し、私達の前から去っていった。


 銀貨一枚と大銅貨六十枚って結構な大金だと思ったんだけど、高位の貴族からしたらトレインを起こした事実で名前に変な傷が残るほうがダメージデカいのかもしれない。

 というか、エド先輩じゃないけど金で解決が一番楽なのかな? 知らんけど。


 そうなると私達はもう一度洞窟の中に行かなきゃならないってことかぁ。

 トレインを殲滅したことで奥の方の魔物も残ってなさそうだし、単純に行って帰ってくるだけで済むかも。


「さぁ、時間も大分使っちゃったし、早速行こうか」


「乗りかかった船だ。オレとリズも付き合う。お前らは先に帰ってていいぞ」


 エド先輩はそう部隊の人に告げ、私達と一緒に洞窟へと戻ってくれた。

 そして、予想通り魔物に出会うことはなく、ほぼ最奥とも言える場所まで行き、無事にシールダイトをゲットして私達は帰路に着いたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ