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エイプリルフールな六十二話 違和感と告白

エイプリルフールネタ。

本話は本編とは一切関係のないお話しになります。

 ようやく私達の部隊がダンジョンに突入する番となった。




 ジョルジオ様からの思わぬ贈り物でテンションが上がりまくっていたので、二時間なんてあっという間だったと言っても過言ではない。

 なにせ、贈り物はクローバーだけではなかったのだ。


 ハンカチをもう一度開くと、なんと押し花が沿えてあった。

 私はある程度は教養として花の種類は知っているけれど、記憶にない花だった。


 王城に招かれた時、庭園に一番興味を惹かれる程花が好きなクレアに聞いた所、ゼラニウムという花だと教えて貰った。

 花言葉は何かと聞いた所。


「ゼラニウムにはいい意味と、実は悪い意味もあるんですけど、贈り物としては尊敬、信頼と言ったいい意味が込められているんじゃないでしょうか」


「へ~、ちなみに悪い意味はどんなものなの?」


「贈り物ですから、悪い意味は知らなくてもいいんじゃないですか? ジョルジオさんは男性ですし、悪い意味を知っているとも思えないです。お店の人か一緒にいた人に花言葉を聞いて気に入ったんだと思いますよ」


「確かにそうね! 素直に受け取っておきましょう!」


 まぁそんな一幕を挟んでいて、私はとてもご機嫌なわけだ。

 今ならどんなダンジョンだってクリアできるぜ!!



 そんな気持ちでダンジョンの入り口をくぐる。

 ダンジョンは山にある大きな崖のような所にぽっかりと穴が空いた場所があり、そこから下に続く階段が存在していた。


 私達は片手に松明(たいまつ)を持ち、薄暗い階段を進む。

 慎重に進み、しばらくしてようやくフロアに出る。


 そこは、完全にレンガのような物で整備されたザ・迷宮という感じだった。

 このフロアがどれくらいの広さかわからないけど、人が作った物だとしたら途方もない労力が必要になるんじゃなかろうか。


 さぁさて、今回の目的は最深部にいる教師の所までたどり着くことである。

 特に時間制限もないので、着実に進んで行けばいい。


 フロアを少し進むと早速モンスターに出くわす。

 最初に出くわしたのは、ゲームでは定番のモンスターである不定形のアイツ、スライムである。


 スライムは物理攻撃、特に打撃は効きにくいのでエリーゼ様には辛い相手だ。

 魔法は基本有効なんだけど、唯一水属性は水分を吸収されてしまうのか効きづらい。


 そんなわけで私はスライム担当となった。

 見かける度にウィンドカッターでズッタズタにしてやった。


 始まりのダンジョンは全部で一○階層で、四階層まですんなりと辿り着くと新たなモンスターが現れる。

 ホネホネロックなアイツ、スケルトンである。


 こちらは物理攻撃、特に打撃で骨を粉砕してしまえば動けなくなるのでエリーゼ様の独壇場かと思いきや、そこは光属性の使い手であるクレアがそのお株を奪い、詠唱魔法で浄化しまくっていた。




 道中、私は違和感を感じていた。

 なんか、違わないか……? という不安めいたものだ。

 それが具体的に何なのか全然わからない。

 けれど、漠然と何かが違うとだけ感じる。

 ダンジョンの攻略自体は上手くいっているので、いつの間にかその不安を考えないようにして、私達は奥へ奥へと進むのだった。




 そして順調に七階層。

 ここからはゴブリンが現れる。

 他のゲームでもよく出てくる小鬼と呼ばれ、醜い姿をしているというアイツである。

 実際に対峙してみると子供のような体躯ではあるが、その顔と濁った白眼が不気味差を感じさせる。


 ゴブリンは粗末とはいえ武具を装備しているため、油断すると大怪我をしてしまう。

 とはいえジョルジオ様やエリーゼ様の敵になるほど危険な相手ではなく、危なげなく倒していく。



 順調に進んでいた私達だけど、九階層で異変が起こる。

 始まりのダンジョンでは普通のゴブリンしか出ないはずである。

 にもかかわらず、ゴブリンの中でも強力な武具を持つゴブリンソルジャーに遭遇した。


 始まりのダンジョンという学生が始めて挑戦するダンジョンにしては強いモンスターである。

 いくら部隊単位で行動していても、怪我をする部隊、下手したら死んでしまう部隊員も出るかもしれない。


 そんなモンスターでも、単独での遭遇であれば今の私達には敵ではなかった。

 ジョルジオ様とエリーゼ様の華麗な連携も仕上がりつつあり、エリック様も自ら前に出て指揮を取っているので、呆気なく倒すことに成功した。


 出現するはずのないモンスターに異変を感じた私達だけど、最深部にいる教師に報告するためにも先に進むことにした。


 そしてゴブリンソルジャーに続いて、普通のゴブリンに比べて数倍力があり体も大きいホブゴブリン、魔法を使うゴブリンメイジにもそれぞれ単独ではあるが遭遇した。

 もちろん、単独での遭遇だったので、問題なく倒したが。






 九階層を踏破し、フロアを繋ぐ階段を下りて最深部へ辿り着く。

 そこは直径一キロはありそうな円形の広間だった。

 そこで、私達は信じられない光景を目にする。


 倒れ伏す多くの部隊、そしてモンスターと戦う一部の部隊だった。

 その戦っている相手は、無数のゴブリンとそれを率いるゴブリンキングと呼ばれる存在だった。


 ゴブリンキング。

 その名の通り、無数のゴブリンを率いる巨躯のゴブリン王。


 率いているゴブリンのほとんどは普通のゴブリンだけど、九階層でも遭遇したゴブリンソルジャーやホブゴブリン、ゴブリンメイジなどの姿も見える。

 しかもそれだけではなく、さらに上位のゴブリンエリートやゴブリンジェネラルといったゴブリンも存在していた。



 対して、残っている学院の部隊は二つと教師が一人。

 アルヴァン殿下を中心とした、マリアンヌ様、スイフト様、ハナビス様がいる部隊。

 それと、エド先輩とリズ先輩を中心とした部隊だった。


「これは一体……」

「殿下! 御身は俺がお守りします!」


 戸惑うエリック様と対象的に、ジョルジオ様はアルヴァン殿下を守るという使命を果たすためか、真っ先に飛び出す。


「わたくし達も向かいましょう!」


 遅れて私達もジョルジオ様に続き、戦いっている部隊の所へと向かう。



 状況は、劣勢。

 アルヴァン殿下を中心にして、左側をハナビス様、右側をスイフト様が担当して敵の進行を止めている。

 さらにその右側はエド先輩とリズ先輩が担当していて、こっちはなんと押し込んでいた。


 個々の戦力は明らかに今戦っている部隊の方が上。

 だけど、圧倒的な物量差でハナビス様に負担がかかりすぎ、左側から徐々に押し込まれて行っているようだ。



 教師は何をしているかと思い見てみると、倒れている部隊の人達にゴブリンが襲い掛からないよう、必死に防いでいた。



「クレア、まず倒れている人達の回復を優先して」


「わかりました!」


 前線に来たばかりだけど、クレアは私の指示に何も質問せずに従って下がってくれた。


「エリック様、ジョルジオ様が抜けてしまいましたが、何とかわたくし達だけで左翼を担当しましょう」


「そう、だね。姉貴、突っ込みすぎるなよ!」


「わかってるきゅるりん!」


 エリーゼ様を中心に、他の部隊員がサポートして左側のゴブリンの掃討を開始する。

 既に押し込まれていた分、まずは押し返したい。

 私は風魔を全力で発動し、ゴブリン集団の動きを止める。

 そこにルビー様のクイックキャストによる水属性魔法が連続で放たれ、次々とゴブリンに止めを刺す。


 さらにエリーゼ様がゴブリンの集団に突っ込み、エリック様がサポートに入ることでゴブリンの集団に穴をあけた。

 流石は姉弟で、実に息の合ったコンビネーションだった。

 そこからは時間がかかったものの、浮いたゴブリンを確実に私とルビー様で仕留め、左側を押し返すことに成功する。


 これでようやく戦況は五分。

 いや、右側のエド先輩達のおかげでやや有利か。



 ゴブリンキングは状況の不利を悟ったのか、ガァァアアア! と大きく叫んだ。

 すると、ゴブリンエリートやゴブリンジェネラルを中心として、ゴブリンたちが大きく陣形を変える。


 そこからはゴブリンたちの一気呵成の攻撃が始まった。

 ゴブリンエリートやゴブリンジェネラルは凶悪で、徐々に徐々に私達はまた押し込まれていった。


 学院側もただ押し込まれるだけじゃなかった。

 クレアが癒した部隊が戦線に復帰したのだ。


「復帰した方達は通常のゴブリンを! 殿下を始め、今いるわたくし達はエリートやジェネラルに狙いを定めましょう!」


 勝機と見た私は思い切っり叫ぶ。

 すると各所から「おう」と気合いの入った声が帰ってきた。


 学院側の勢いは増すが、それでも各部隊で怪我人が出ては下がり、戦況は拮抗していた。

 エリートやジェネラルを倒しきれていないのが原因だ。


 奴らは自分が危なくなると他のゴブリンを盾にしてでも逃げるだ。

 そうして、無理に攻めようとしたエリーゼ様やエリック様を始め、他の部隊も疲労を強めていく。


 いずれ、崩れるかもしれない。

 なんとか突破口を開けないか……。


 エアーズガーデンで左側のエリートやジェネラルを倒したとして、エリーゼ様とエリック様では申し訳ないが他の部隊に援軍に行っても状況が変わらない可能性がある。


 リズ先輩やハナビス様、あるいはジョルジオ様が他の前線に加勢すれば流れは変わるはず……。

 私が戦況を変えるなら。


「エリーゼ様、エリック様、ルビー様。申し訳ありませんが、一旦わたくしの援護はないとお考え下さい!」


「ちょ、フローレンシアぁ?」


 ルビー様の抗議を無視して、私は無詠唱魔法のイメージを固める。

 最初に使う魔法は。


 ――アクセル!


 時間はかかったものの、私はアクセルの発動に無事成功し、ダンジョンの天井スレスレまでジャンプをする。

 そして、次に使う魔法は。


 ――バレット・マグナム!!


 私は、高所から反対側にいるリズ先輩が対峙しているゴブリンジェネラルを狙ったのだ。

 不意を突かれたゴブリンジェネラルは逃げることも、他のゴブリンを盾にすることもできず、風の弾丸を眉間に受けてその場に倒れる。


「やるじゃん! フロスト!!」


 それを確認したリズ先輩が一気に右側を攻め、ゴブリン達の陣形を崩壊させた。


 こうして右側の制圧が完了すると、勢いは中央、左側へと波及していき、ついにはゴブリンキングを中心として残った十数匹以外のゴブリンを倒したのだった。


 あ、私はもう魔力切れ寸前なので、後方へと下がりました。



 今まで後方で待機していた巨躯のゴブリンキングがついに動く。

 同じゴブリンとは思えない程体が大きい。

 その手に持った斧はその身長と同じくらい大きく、見るからに破壊力が高そうだった。


 後方にいてもゴウッ!という空気を切り裂く音が聞こえそうな斧の一撃を受けるのはジョルジオ様。

 なんとお一人でゴブリンキングの攻撃を正面から盾で受け止めたのだ。


 ゴブリンキングの攻撃は強力だったが、見事ジョルジオ様は受け止め切っていた。

 そして攻撃を受け止めた瞬間を見逃さず、ハナビス様達がすかさずゴブリンキングに攻撃を仕掛ける。

 しかし、致命傷には至らず、ゴブリンキングは再度斧を振り回す。


 ゴブリンキングの攻撃に巻き込まれないため、攻撃していた人達は一斉に下がる。

 そしてまた、ジョルジオ様がゴブリンキングの攻撃を受け止め、他の人達が攻撃を行う。


 そんな攻防が五度程続いただろうか。

 すでにゴブリンキングは全身から血を流していた。

 周りにいたゴブリンも既に全滅している。


 窮地に陥ったゴブリンキングは渾身の一撃で戦況の打開を図った。

 斧を振り回して周囲の人達を下がらせ、その勢いを使ってジョルジオ様に対し、斜めに渾身の振り下しを放ったのだ。


 そしてその一撃は、ジョルジオ様の盾を砕ぎ、吹き飛ばした。


「ジョルジオ様!!」


 周囲がスローモーションに見える。

 渾身の一撃を放ったゴブリンキングは隙を晒しており、他の人達が一斉に攻撃を仕掛けようとしていた。

 ジョルジオ様は空中を吹き飛び、その肩からお腹に掛けて切り裂かれているのが見えた。

 そして、壁に背中からぶつかり、口から血を吐く。


 私はジョルジオ様の元に駆け寄り、そのお体を起こす。


「ゴブリンキングは、どう、なった……?」


「今、皆さまがとどめを刺しています」


「そうか……。俺は、殿下を、お前を、守れた、か……?」


 ジョルジオ様はご自身の手を私の顔に触れさせる。


「はいっ。はいっ! 殿下も、わたくしも無事ですっ!」


 私はその手を取り、ぎゅっと握る。


「そうか、なら、悔いは……」


「ジョルジオ様! ジョルジオ様!」


「そんな顔をするな……。俺はお前を守れて……」


「これからも! これからもわたくしを守って下さいまし! わたくしはっ。わたくしはっ! ジョルジオ様を、お慕い申しているのですっ!」


「そう、か……。俺も、お前のことを……」


 そこまで言って、握っていたはずのジョルジオ様の手は、地に落ちた。


「いやぁぁああ!! ジョルジオ様ぁぁああああ!!」


 私はジョルジオ様の胸に顔を埋め、ただただ叫ぶことしかできなかった。




 どれくらい時間が立ったのだろうか。

 周りの音は一切聞こえない。

 自分自身の音さえも。


 そんな静寂の世界の中、ジョルジオ様の声が聞こえてきた気がした。


「ゼラニウムの花言葉を知っているか?」


 ――尊敬、信頼、でしょうか。


「そうだ。他にも意味がある。それは」


 ――それは?


「偽り、偽計という意味だ」


 ――? どういうことでしょうか?


「ここは、始まりのダンジョンではないのだ」


 ――どういう、ことでしょう……?


「一年に一度、四月一日にだけ現れる偽りのダンジョン。エイプリルフールダンジョンなのだ」




 ※注意

 本編との違いであえて違和感をいくつか入れていますので、探して楽しんで頂けると幸いです。


 次話以降、本来のダンジョンアタック編を投稿します。

 ネタですし、ただでさえ展開遅かったので、少ししたら削除するかもしれません。

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