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六十話 無邪気が一番心にクルよね

 部隊再編制を命じられて移動した先には、見知った顔があった。

 ウィル様とルーリー様のバディとリズ先輩に紹介してもらった男爵家の姉弟だ。


 その男爵家の姉弟が早速声を掛けて来て下さった。

 チャラい感じで。


「フローレンシアちゃん、クレアちゃん! また会えたね、嬉しいよ!」


「運命を感じる再会きゅるりん」


「えっと、あの」


 クレアはおどろきとまどっている!


 姉弟の名前はそれぞれお姉さんがエリーゼ・クランベル様。

 弟さんがエリック・クランベル様。


 ご挨拶だけして、お二人とは離れる。


 ちなみにお二人は異母姉弟でいらっしゃるそうだ。

 高位の貴族であれば当主の奥方が複数人いらっしゃることは普通だけど、男爵家だと実はそれほど多くない。

 貴族と言えど、男爵家では領地が小さい所がほとんどで、裕福な家が少ないからだ。

 うちの場合はお父様がお母様が大好きすぎるだけな気もするけど。



「ちなみに言っておくが、エリックはデブもい」


「あぁん!?」


「っ!?」


「お姉様!?」


「エドが気圧されているだって!?」


 あら、淑女らしくない声が出てしまったわ。

 ごめんあそばせ?




 私達がここにきてから一○分くらいで部隊の再編成を命じられた人達が全員集まった。

 部隊の再編制を命じられたのは四部隊の計二十二名だ。

 一年生も二年生も三十人くらいいるはずだから、全部で十部隊ある中の四部隊と半数近くが再編成となったのか。

 ちなみに二十二名なのは二年生が一組分バディが少ないかららしい。


 私達の他に一年生のAクラスのメンバーはおらず、アニー様も見当たらない。

 一年生も二年生も大半がBクラスとCクラスで、割合は半々と言った所だろう。


 今日中に再度部隊申請を出さなければいけないので、ここにいる二年生全員と動きを合わせる時間はない。

 だったら一度は動きを合わせたクランベル姉弟と部隊を組むのがベターかなぁ。


「クレアは部隊を組むのに気になっているバディはいる?」


「エリックさん達が良いと思いますけど、お姉様はお嫌なんですか?」


「そんなことはないけれど」


「そうですか! それなら私はエリックさん達がいいです。お姉様に優しい人達でしたから」


 確かに。

 最初お会いした時は普通に接してくれているな、と思ったんだけど、よくよく考えたら普通じゃないんだ。

 私にとっての普通は、デブと蔑まれ、遠ざけられていたのだから。


 そう考えるとお二人は私にとって、エド先輩やリズ先輩と同じくらい得難い先輩達なのかもしれない。

 まぁキングロックホーン退治で私達の株が上がっているから最近はあからさまに蔑む人も減ったけど。

 ともかくクレアが私のことを考えてくれていたのなら、その気持ちに甘えようかな。


「ん。わかったわ。ジョルジオ様とルビー様にも相談しに行きましょ」


「はいっ!」


 既に私が組む部隊の内、内定している四人は全員Aクラスだから、二年生がCクラスでも戦力的には問題ない。

 クランベル姉弟も二年生の中ではCクラスだけど、決して何もできないというわけではない。


 エリーゼ様はその容姿とは裏腹に、グローブ型の武器を装備した徒手空拳による格闘術は弱い所か、はっきり言って強い部類だと思う。

 二年生でもBクラス上位の腕前はあるんじゃないかな?

 逆に、エリック様はあまり強くない。

 オーソドックスなショートソードと盾の組み合わせだけど、特に秀でた所がないというかむしろ……。

 なんか、偉そうだな私。。。まぁいいや。


 お二人の魔法の属性はというと、エリーゼ様が土属性、エリック様が風属性で、共に下位の精霊から祝福を受けたそうだ。

 ただ、お二人とも魔力量がとても少なく、エリーゼ様に至っては数発程度で魔力がほとんどなくなってしまうんだそうだ。



 リズ先輩に紹介された時、私はエリーゼ様のクラスについて疑問に思ったことを聞いていた。


「エリーゼ様はそれほどお強いのに、どうしてCクラスなんでしょうか」


「姉貴はさ、バカなんだよ。全然勉強ができないからCクラスにいんの」


「エリックは頭はいいけど、めちゃくちゃ弱いきゅるりん」


 ということらしい。

 そんなこともジョルジオ様とルビー様にお伝えし、姉弟と部隊を組みたいことを相談した。


「いいんじゃないか? 何より格闘術を使う奴と訓練はほとんどしたことがない。是非一緒に部隊を組んで訓練に励もう!」


「ルビーもぉ、いいと思いますよぉ」


「ありがとうございます。それではわたくしがエリーゼ様とエリック様にお誘いをして参りますね」



「え? ウチ達と部隊組んでくれるきゅるりん?」


「はい。他の二人とも相談済みですわ。是非お二人に部隊を組んで頂きたいのです」


「まじかよ、フローレンシアちゃん! おぉ、我が姫をお守りすることをここに誓います!」


「誓いっていうか近いきゅるりん ウチも喜んで受けさせてもらうきゅるりん」


 エリック様が私の手を取ろうとした所を、エリーゼ様がエリック様の腕を叩き落とす。


「いってぇよ! 姉貴は手加減ってものを知るべきだ!」


「エリックは女の子の扱いってものを知るべききゅるりん」


 エリーゼ様は普通の言葉遣いを知るべきだと思いますと、心の中でツッコミを入れた。



 お二人が快く部隊を組むことを承諾して下さったので、私達はジョルジオ様とルビー様の所へ戻り、それぞれをご紹介した。


 ジョルジオ様は先の言葉通り、早速エリーゼ様に声を掛けている。

 エリーゼ様も体を動かすのは好ききゅるりんと嬉しそうに応じていた。


 ん~、リズ先輩といいエリーゼ様といいジョルジオ様ってやっぱり接近戦が強い人がタイプなのかな……。

 もっとサラにお願いして武術の訓練を増やしてもらった方がいいのかなぁ。


 ジョルジオ様とエリーゼ様が訓練を始める一方、エリック様と私達はお話しをしていた。


「ねぇ、レディ達。君達の趣味や好みのタイプを教えてくれないかい?」


「私はお姉様が大好きです!」


「え、あ、そっち系?」



「ルビーはぁ、紅茶が好きなんですぅ」


「いいね! 平和的な趣味は僕も大好きさ」


「でもぉ、タイプは強い人なんですよねぇ」


「ぐはっ! い、いつか僕も強くなって……」


「わかりましたぁ。ジョルジオ様より強くなったら来て下さいねぇ」


「ぐばぁ!」


 ルビー様、さすがにそれはハードル高すぎないですか。

 いや、やんわりとだけどこれ以上ないくらいはっきり断っている分、ある意味優しいのかもしれないけど。

 でもあれ、完全に素なんだよなぁ。


「フ、フローレンシアちゃんは?」


「わたくしも今は強い方が気になってしまいますわ」


「ぐべぇっ!」


 主にジョルジオ様ですけど。


 そんな感じで、部隊を組むメンバーが決まり申請を出した。

 翌日、正式に部隊を組むことが認められたのだった。






 クランベルの姉弟を見ていて、ふと思ったことがある。

 どこかでクランベルって名前を見た記憶がある気がするのだ。


 ……。


 あ、プリセンスソードのゲームで見たことあるんだ。

 武闘会で弱キャラに分類されていたキャラ達だ。

 男女でクランベルってキャラがいたから印象に残ってたんだど、姉弟だったのか。


 女キャラはステータスは優秀だけど、勝手に敵に突っ込んでやられちゃって、男キャラの方は単純にステータスが低かったっけ……。

 いやうん、ゲームとこの世界って結構違う所多いいし?

 何よりこの世界はそもそもゲームじゃない。

 武闘会をこのメンバーで戦うわけでもないし、部隊としてお互いのいい部分も悪い部分もフォローし合えばいいんだ!

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