五十九話 半分くらいは的中しちゃう
エド先輩とリズ先輩に他の二年生の方を紹介して頂いた翌日、訓練場には私とクレアのバディ、エド先輩とリズ先輩のバディの他にもう一組現れた。
ジョルジオ様とルビー様のバディである。
そういえばマリアンヌ様がジョルジオ様のバディは決めるとおっしゃっていた。
信頼されているルビー様をジョルジオ様のバディにしたんだろう。
「今日からよろしく頼む。俺のことは知っていると思うが、こちらはルビー・カルミア嬢だ」
「ルビー・カルミアと申しますぅ。どうぞよろしくお願いしますねぇ」
ルビー様はジョルジオ様の後ろに隠れるようにしていたけれど、横にずれてエド先輩達にふんわりとした笑顔で挨拶をする。
癒されるわ~。
「こんなにも早くリズ嬢と訓練できることになるとは思わなかった。早速始めよう!」
「いいねいいね! この間のリベンジだ」
「あぁ……、脳筋が二人に増えやがった……」
意気揚々とするジョルジオ様と反対に辟易とした様子のエド先輩。
ジョルジオ様とリズ先輩は他のみんなに構わず、早速木製の武器を取り、向かい合っていた。
「ルビーさんの戦い方はどんな感じなんですか?私とお姉様は詠唱魔法と無詠唱魔法を使うので、実際に合わせてみないと分かりづらいと思うんですけど」
置いてけぼりにされそうになったルビー様にクレアがフォローを入れる。
さすがクレア、できる娘だわ。
「そうですねぇ。ルビーは水属性の魔法を使うんですけど、人よりちょっと詠唱が早いんです。なのでバンバン魔法を連射して戦いますねぇ」
詠唱魔法は精霊への声の届けやすさというか、センスが大事である。
普通は一度くらいただ詠唱句を詠んだだけでは魔法って発動しない人が多いんだけど、センスが良い人は一度試しただけで魔法を発動させることができる。
例えばクレアみたいに。
逆にセンスが無い人はなかなか発動することができない。
少し前にハナビス様が「俺の声は精霊に届いてねーらしい」と言っていたように。
魔法によって様々だけど、発動自体は多くの人が他の人の詠唱をまねたり、自分なりのリズムを習得することで魔法が発動できるようになる。
ハナビス様は全く使えないようだけど、祝福を受けたにも関わらずまったく魔法が使えないというのはかなり稀というか、聞いたことがない。
普通はセンスがないって言われる人でも、ひたすらに練習すればいくつかの魔法は使えるようになるものだけど。
そんな中、ルビー様はきっととてもセンスが良いのだろう。
その自分なりのリズムが他の人よりずっと早くても魔法を発動できるみたいだ。
そんなことを聞かされたら魔法大好きな私としては見せて貰わないわけには行かない。
「ルビー様素晴らしいです! 是非見せて下さいませんか!」
「いいですよぉ。中位の魔法は二発が限界ですけどねぇ」
訓練場には私達以外にも沢山の人がいるので、中位の魔法を使う場合には専用の場所に行く必要がある。
私がロックホーン討伐の時に使ったストームアローやルーリー様が使ったアクアストリームなんかは殺意が高すぎて、万が一にも人に当たってしまったら大参事になってしまうから。
三人で移動して、的を設置する。
的の周囲に人がいないことを確認して、ルビー様に実演を促す。
早速ルビー様は詠唱を開始する。
うわうわっすっご!
三秒かからないくらいの時間で下位のウォーターボールを連発している!
私が下位魔法を使うときは最速でも五秒はかかる。
いや、私だって早い方なんだよ? それなのに私の倍近い速さで魔法を発動できるって、すごい!
単純に手数が二倍になるんだから。
それでも中位はそううまくはいかないんじゃないかな。
詠唱そのものに魔力を乗せて、魔力を吸われていくから、そう簡単ではな、いぃぃ!?
中位の魔法もルビー様はスラスラと詠唱し、アクアストリームを発動させ、的を粉々に粉砕する。
そして、同じ魔法をもう一度発動させると、へなへなとその場にしゃがみ込んだ。
「もう発動できませんん~」
魔力をほとんど使ってしまったのだろう。
ルビー様は疲れ果てた顔をされていた。
中位の魔法は下位に比べると格段に消費が多いとはいえ、ルビー様の魔力量は多い方ではないみたいだ。
一年生の平均くらいか、やや少ないくらいかもしれない。
魔力量は魔法を使えば使う程その量は増やしていくけど、人によって増え幅は様々だから。
「ルビー様素晴らしかったです! こんなすごい詠唱なんですから、何か特別な名前を付けているんじゃないですか!?」
「ん? いいえぇ。ただ少し人より早いだけですよぉ?」
「そんなもったいない! せっかくですから特別感を出すために名前をつけましょう! う~ん、詠唱が早い……。早い詠唱……。はっ! スピード詠唱! なんていうのはどうですか!?」
「フローレンシア、それはないよぉ」
「お姉様のネーミングセンス時々おかしいですよね」
「そ、それならクレアはいい案があるっていうの?」
「そうですね。……クイックキャストとか、どうでしょうか」
「おぉ~、かっこいいかもぉ」
「くっ、やるわね」
そうだよ、そういうの他のゲームであったじゃん! 何で思いつかなかった、私!
その後は私とクレアが詠唱魔法と無詠唱魔法を披露した後、ジョルジオ様やエド先輩達と合流して、連携の訓練をした。
前衛がジョルジオ様とリズ先輩の二人で、前よりの中衛としてエド先輩が、後ろよりの中衛として私が、後衛がクレアとルビー様で訓練だ。
エド先輩はデバフで弱体させてから棒術で戦うスタイルなので、割とオールマイティな感じで動ける。
私は後衛だけど、それなりに動ける方なので、このまま連携の訓練を続ければとってもいい部隊になれる気がした。
週明けまで六人で部隊としての訓練を行い、部隊申請を出した。
そして週明け。
「あらあら、残念ですねぇ」
「確かに全員Aクラスじゃバランス取れてねぇよな」
「せっかくフロスト達と部隊組めるって楽しみにしてたんだけどな」
以前に少し不安に思ったことが的中した。
部隊申請が通らず、部隊の再編制を命じられたのだ。
今ここにいる全員がAクラスだから、全体のバランスを考えれば強すぎる部隊になっちゃうのだ。
エド先輩は教国の司祭なので立場的には特殊だからワンチャンあると思ったけどダメだった。
予想していたとは言え残念だ。
だがしかし、しかしだ。
一番の問題は、ジョルジオ様と部隊を組めるのかどうか、である。
「そ、それで、どのような指示が出ているのですか?」
「あたいとエドが他の二年と交代だってさ。ここまで具体的に指示出るの珍しくないか、エド」
「そうだな。部隊を再編制するにしても他の奴らと交渉できるなくなるから名指しは珍しい気がするな」
すいません。
たぶん、たぶんなんですけど。
マリアンヌ様が裏で色々根回しをしてくれた結果なんだと思います……。
ジョルジオ様と部隊を組めるようにしてくれたマリアンヌ様素敵すぎ!
と思う一方で、エド先輩とリズ先輩にはなんだか悪いことをしたなと罪悪感が少々。
あぁでもやっぱりジョルジオ様と部隊組めるの嬉しい!
あとはエド先輩とリズ先輩の代わりに、どんな人達と部隊を組むことになるかが心配かな。
「まぁグチグチ言ってても仕方がねぇ。部隊の再編制を命じられた奴らは一か所に集まる手筈になってる。今から行くぞ」
エド先輩の言葉に従って、私達は指定の場所へと移動する。




