五十八話 悪い想像の半分くらいは
マリアンヌ様とお話しをした翌日、私は早速スイフト様とハナビス様、そしてアニー様に声を掛ける。
アニー様に声を掛けたのは、勝手に話を進めてしまうとアニー様がバディを組む人がいなくなって困ってしまうかもしれないと思ったから。
スイフト様を巻き込んでしまうので。
まぁぶっちゃけ杞憂だった。
アニー様は一学期の魔物討伐でAクラスの人達と力の差を感じたらしい。
だから、剣だけでなく魔法も使うようになった。
それでもハナビス様にあっけなくやられたことでBクラスの中で着実に力を、自信を付けていくことを選んだみたいだ。
なんというか、主にハナビス様が悪いと思う。
で、そのハナビス様とスイフト様はというと。
マリアンヌ様とのお話しの内容は大分ぼかしたのだけど、スイフト様はマリアンヌ様経由のお話しだと知ると、公爵家とコネができる! とお喜びになって了承して下さった。
昨日、スイフト様経由であのお店に招待された時点で既に何かしら接点が合ったはずなんだけど、それだけじゃ一回限りのお付き合いになってしまったかもしれない。
ところが今回の部隊のお話しで一回限りのお付き合いじゃなくなる可能性が上がるから、商人としては逃せないチャンスなんだとか。
一方ハナビス様は「アルヴァンならまぁ悪くはねぇか」と一言溢して了承して下さった。
思いの外あっさりと決まってしまい、ちょっと拍子抜けしたのは内緒だ。
お二人から色良いお返事を頂けたので、マリアンヌ様に手紙をしたためる。
そしてパイソン商会お抱えのお店まで手紙を届け、中に入って何か頼もうか考えた所で、とてもお高いことを思い出してすごすごと帰った。
なんだか勝手に公爵家と男爵家の圧倒的な財力の差を見せつけられた気分になってしまった……。
翌日、マリアンヌ様と一緒にいらっしゃるルビー様から「明日、例のお店に行くように」とだけ言伝を貰った。
ルビー様は何だかよくわからないといった顔されていたから、もしかしたらマリアンヌ様はルビー様やスージー様には何も言っていないのかもしれない。
ルビー様はその名前とは裏腹に、青い髪をサイドテールにしている子爵令嬢だ。
全体的に小柄な体格をされていて、どちらかと言えば普段はぽやんとした雰囲気のとても癒される方である。
もちろん、マリアンヌ様の御側にいる時や何か言いつけを貰った時はしっかりしているのだけど、顔が頑張ってます! って感じになっていてとても微笑ましくなってしまう。
なんだか守って上げたくなる的な感情が芽生えてくるタイプなのだ。
と言ってもルビー様もAクラスの一員だから、ただ守られるような女の子ではない気はするけど。
明日を指定されたのは、今日この後にアルヴァン殿下達に根回しをして下さるからだろうか。
結果を楽しみに、今日はエド先輩達と訓練をしよう。
週が明けたら仮の部隊申請をしなくてはならない。
仮なのは、部隊申請後に全体のバランスを考えて強すぎたり、弱すぎたりすると編成を変えなくちゃいけないことがあるからだ。
実際に一学期には部隊を再編制された所もあったし。
一学期の部隊を振り返ると、Aクラス四人なのによく部隊を組めたなと思った。
ハナビス様がバディを組んでなくて、お一人だったからあのメンバーで部隊を組めたのかもしれない。
アルヴァン殿下の部隊もほぼAクラスだったはずだけど、お立場を考えてむしろ歓迎だったろう。
マリアンヌ様が上手くアルヴァン殿下と部隊の調整をしてくれることは信じているけど、再編成のことを考えれば他の二年生と交流を持っておくことも大事かもしれない。
今日はエド先輩とリズ先輩に他の二年生を紹介して貰えないか頼んでみよう。
って、そういえばエド先輩とリズ先輩のクラスを知らないな。
聞くまでもなくAクラスだろうけど。
二年生との合同訓練の時間になって、私とクレアはエド先輩とリズ先輩に合流する。
マリアンヌ様とお話しした詳細は伏せて、ジョルジオ様と部隊を組めるよう調整中なことを伝えた。
お二人、というよりリズ先輩は喜んでくれた。
そんなリズ先輩に水を差すようで悪い気はしたけど、先程考えていた全体のバランスで再編制されるかもしれない不安を告げる。
「あ~そういえば部隊再編制されている奴、前もいたね。あたい達もAクラスだから、もしかしたらもしかするかもね。それじゃ他の二年を紹介するかい?」
「はい。是非お願いしたいですわ」
「どんな方がいらっしゃるんですか?」
「ピンキリだな。オレは教国関係者を適当に見繕ってやる。リズはクレアのことを考えて人を紹介してやれ」
「ん? あぁ、そういうこと。了解」
ん~、クレアのことっていうと平民を見下さないような人ってことかな?
リズ先輩自身は僧兵という教国の立場があるから少し違うかもだけど、平民出身ではあるからその辺りは信頼できそうだ。
エド先輩の態度は一見無愛想な感じだけど、細かい所に気が利く良い人だなぁ。
そんなわけで訓練もそこそこに、再集合を約束して一先ず解散となった。
せっかくだから私達もエド先輩達に誰かを紹介しようとクレアと相談したんだけど。
ああぁぁあああ!?
紹介できる人が一学期の部隊メンバーしかいないっ!!
っていうか、既に紹介済みだし!?
一学期四ヶ月間あって私達の交流範囲狭すぎない!?
あ、ウィル様とルーリー様はギリギリ紹介できるのでは?
よし、お二人に声を掛けてみよう。
私のこと、忘れて、ないよね?
訓練場を探しまわってウィル様とルーリー様を見つける。
二学期も二人はバディを組むみたいだ。
なんか、以前より距離が近いような……。
まさかここでもバディ効果有り!?
スイフト様とアニー様、ウィル様とルーリー様。
本当にバディ効果は確定的なのでは?
そうなると、ジョルジオ様とバディを組めなかったのが悔やまれる……。
まぁ過ぎたことをとやかく言っても仕方ない。
クレアもサラもきっと私のためにと思って頑張ってくれたんだろうし。
話しが逸れたけど、二人はまだ部隊を組んでくれる二年生を見つけられていなかった。
二人が二年生と動きを合わせる訓練をしていると、舌打ちが聞こえてくるんだそうな。
そして、お前たちとは部隊を組まないと言われることが二回程繰り返したと。
ん、あれですか。
イチャイチャしてんなよ的な奴ですかね。
「チッ」
「え? お姉様」
「あ、ごめん。なんでもないのよ」
淑女らしからぬ音が出てしまったわ。
心を静めるのよ、フロスト。
そういう事情もありウィル様とルーリー様には是非紹介してくれと逆に頼まれてしまった。
エド先輩もリズ先輩も他人の恋愛には全く興味なさそうなタイプだから、紹介しても大丈夫だよね?
さっきまでエド先輩達といた場所に戻ると、既にエド先輩とリズ先輩は戻って来ていて、それぞれ一組ずつバディを連れてきて下さっていた。
私達もウィル様とルーリー様をご紹介する。
エド先輩が連れてきて下さったバディは、男性二人組でなんていうか教国出身者らしいというか、ちょっと堅苦しい感じがした。
お一人は助祭を目指していて、もう一人の方は僧兵を目指しているんだそうだ。
私達より学年が上ということもあってなんか少し緊張してしまう。
リズ先輩が連れてきて下さったバディは男爵家の姉弟だった。
お姉さんの方はピンクの髪をゆるふわにした小柄な方で、語尾がきゅるりん☆でとても困惑した。
弟さんの方は緑の髪で、特に特徴的な所はないけれど、とてもよくしゃべる方だ。
お二人とも表情がとても豊かで明るく、貴族同士では敬遠される太った私にも色々と話しかけて下さった。
弟さんが沢山しゃべって、お姉さんの方がきゅるりん☆という奇妙な語尾で周囲を明るくして下さる。
なんか、すっごく楽しい人達だ。
ただ一つ問題があるとすれば、弟さんがなんかチャラい。
私はともかく、最初に心配していた方向とは別でクレアが心配だ。
一方でエド先輩とリズ先輩と、ウィル様とルーリー様の様子を見て見ると。
……。
ルーリー様の目がエド先輩を見てハートになっている!?!?
ウィル様はおろおろとしているけど、エド先輩とリズ先輩はいつも通りの様子だ。
あぁなるほど。
ある意味でいつも通りの光景で慣れ切ってしまっているのではないだろうか。
いや本当にエド先輩って男の娘っていうのが彼のためにあると思うくらい、すっごくかわいいんだよね。
本人に言うとすっっごく怒るけど。
それぞれ顔合わせは済んだ所で、五組のバディで色々と組み合わせを変えて一緒に訓練を行った。
実力はエド先輩とリズ先輩が頭一つ抜けている。
自分で言うのもなんだけど、後衛二人組の私達がその次くらいだと思う。
あとは、教国の見習いさん達、男爵家の姉弟、ウィル様とルーリー様の実力順という印象だ。
案の定、それぞれのクラスはエド先輩達がAクラスで、教国の見習いさんたちがBクラス、姉弟がCクラスらしい。
正直、部隊を組むのなら実力より雰囲気や楽しさを考えて、教国の見習いさんお二人より姉弟のお二人がいいなと思った。
フ)誤字報告を頂きました!やったね!
サ)それって喜ぶポイントなんですか?
フ)もちろんよ!ちゃんと読んでくれている人がいるってことなんだから!
ク)そうですね!誤字報告もブクマも評価もいいねも、リアクションがあると嬉しいですよね!
フ)そうよ!ドシドシ誤字報告を頂きた…、いやそれはダメなんじゃ?
サ)校正、頑張りましょう。




