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五十五話 バディの行方

 まてまてまて、一度整理しよう。


 夏休みから昨日までクレアはバレットを発動させたことはない。

 これはいい。


 で、さっきの試合もバレットは発動していないってどういうこと?


 よくよく考えてみれば、確かに試合中おかしい所はあった。

 わざわざ発動時にライトバレットと叫んでいたことだ。


 無詠唱魔法の利点の一つに、対人戦であれば発動タイミングがわからないというのがある。

 これは過去の部隊内での模擬試合やモロック様との時に有効性は証明されている。

 にも関わらず叫んでいたのは、発動のための補助かと思っていたけど、そうじゃない?


 となると……。

 あえてハナビス様に知らせようとしていた?

 攻撃を当てるためじゃなく、避けさせるために?


 なぜ?

 最後のハナビス様は光を斬るつもりが、手応えがなくて空振っていた。

 つまり、当たっちゃったら何も効果がない光ってわかってしまうから……。


 あ! 何にも効果がない光って……!?

 もしかして光の導をアレンジしたんじゃないの!?


 光の導は夏休みにワオーンドッグ討伐の時に使った、ただ光を動かすだけの無詠唱魔法だ。

 それを、ただ真っすぐ進むようにして、バレットに見せかけた?


 それなら辻褄が合うかも。


 ライトバレットってあえて叫んでたのは当てたくなくて、確実にハナビス様に気付いてほしいから、か。


「光の導、なのね?」


「!? さすがお姉様ですっ! すぐにバレるなんて思いませんでした!」


「土壇場でそんなこと思いついただけじゃなくて、実行もするなんてすごいわねクレア!」


「えへへ」


「サラは知ってたの?」


「いえ、知りませんでした」


「えぇ!? じゃあなんて最後の方で屈んでたのよ!?」


「このルールでは私がやられてもいいですからね。あの時私は相打ち狙いでした。そして、その攻撃に合わせてライトバレットが当たれば勝てると思ってましたから」


「あ~なるほど~。

 それにしても二人とも凄かったわっ! あなた達は私の誇りねっ!」


「「!!」」


 なんだか無性に嬉しくて、私は二人に抱き着く。

 なんだか暑苦しい……?

 いや、デブじゃねーし!!


 まぢ無理。痩せよ……。


「誇り……」

「次も……対……」

「は……がん……う……」




 メンタルが何故かズタボロで周りのことが目に入らなかったのだけど、いつの間にやら第四試合の準備が整ったようである。

 うむ、いつのまに?


 というわけで? 次はリズ先輩対ジョルジオ様だ。

 ジョルジオ様は見事シード権をゲットしたので、体力的に余裕があって有利なはず。

 そう思っていたんだけど、さっきのリズ先輩はほぼ大剣の一振りで試合が決まってしまっているから、体力的な差はないと考えたほうがいい。


 二人の性格からしても純粋な実力勝負になりそうな気がする。

 リズ先輩が正面から攻めて、ジョルジオ様はそれを受け止める。


 攻め切れるか、受け止め切れるか。

 それがそのまま勝敗に直結する、そう思えるカードだ。


「先程の一振り、素晴らしい一撃だった。俺はアレを受けきってみせよう。全力で来い!」


「あっはっはっ! いいねいいねぇ!? 今年の一年は面白い奴らばっかりだ。それじゃ遠慮なく、行かせてもらうよ!!」


 私が試合開始を告げると、リズ先輩は大剣を大上段に構える。

 対してジョルジオ様は大楯をがっしりと構えて待つ。


 いやさすがにあの大剣の攻撃をまともに受けたら盾が壊れてしまうんじゃないか……。

 ジョルジオ様の相手の攻撃を受けきって、正面から叩くという戦い方は男らしいとは思うけれど、見ているこっちは不安で仕方がない。


 集中力を高めたリズ先輩が駆け出す。


「てやぁぁあああ!!」


 裂帛の気合いを込めて大剣が振り下ろされる。

 ゴォオン! と木製の大剣と盾がぶつかり合ったとは思えない低い音がなり、リズ先輩の大剣は地面を突き刺していた。

 ジョルジオ様が盾で大剣を受けた後、そのまま斜めにずらして大剣の軌道を逸らしたの!?


 それより木製の剣と盾でゴォオンって!? いやいや、ホントにみんなちょっとおかしいからね!?


「ふんっ!」


 大剣が地面に突き刺さったままのリズ先輩の胴をジョルジオ様がロングソードで薙ぎ払った。


「ぐっぅう!」


 大剣から手を離し、よろよろと後ろによろめくリズ先輩。

 まだホーリーシールドの効果は残っているようだが、リズ先輩は両手を上げて降参のポーズを取る。


「……っ、あたいの、負けだ」


 第四試合は思いのほか、短い時間で終わった。

 これならジョルジオ様の体力はそれほど消費していないだろう。


 って、めっちゃ汗出てるわ……。

 それほど集中を強いられていたってことなのかな。

 そりゃそうだよね、リズ先輩の大剣を食らったら一撃で勝負が決まっちゃうもん。

 受け流すのも一苦労だったのかもしれない。


「よろしければ、お使い下さい」


「すまない。助かる」


 私は持っていたハンカチをジョルジオ様に渡した。

 うふふ。さりげない気遣い、さすが私。


「助かった。しかし汚してしまったな。すまないが洗って返すからしばらく借りたままにさせてくれ」


「いえ、お気になさらずとも良いのですよ?」


 さすがに汗を喜ぶ趣味はないけど、わざわざ洗って返すような律儀なことをしなくても良いと本音で思うんだけど。


「いや、そうもいかんだろう。この礼は必ずする」


「わかりました。それではお言葉に甘えさせて頂いて、しばらくお預けしますわね」


 まぁお礼をしてくれるというのなら、楽しみに待っておくのもレディの嗜みな気がする。

 気がするったら気がする。



 それにしても、ジョルジオ様、リズ先輩、ハナビス様は学院でもトップレベルの強さなんじゃないだろうか。

 守りのジョルジオ様、攻撃のリズ先輩、総合力の高いハナビス様。

 それぞれそんな印象を受ける試合だった。




 さぁさてさて、私のバディを決める決勝戦です!


 サラはハナビス様との試合で随分と体力を消耗しているはず。

 それに対して、集中力を大分使ってしまったとはいえ、ジョルジオ様の試合時間は短い分、体力的には大分有利なはずである。


 何より、サラは優秀なメイドである。

 きっと私にとって最良の結果をもたらしてくれるに違いない。


「こんなにも早くリベンジの機会が訪れるとはな」


「今日の私はお嬢様の誇りを背負っています。ですから、私の最高の技でお相手させて頂きます」


「ふははは! 望むところだ!」


「今回、私は何もしません。サラさんが負けたら、私の負けにして下さい」


 なんと、クレアが何もしない宣言である。

 さすが我が妹分である。

 私の気持ちを伝えたことはないはずだけど、以心伝心でわかってしまっているのかもしれないね!




 二人が構えたのを確認して、私は試合開始を告げる。


 すると二人は名乗りを上げ始めた。


「岩穿つ女剣アリシア・ベルガモット様が弟子。そして、フローレンシア・ベルガモット様がメイド、サラ。参ります」


「アデザール第一騎士団十人隊長ジョルジオ・キットールが受けて立つ!」


 サラはレイピアを胸元から水平に構えて駆け出し、ジョルジオ様は大楯を前に掲げ、ロングソードをすぐにでも振れるように低く構えて駆け出す。

 ジョルジオ様はサラの攻撃を受け流してすぐに攻撃するつもりなんだろう。


 ってゆーか、サラは今までと違ってダガーを持ってないし、しかもレイピアを右手で握ってる!?



「はぁぁぁあああ!! 刺穿(しせん)!!」


「おぉぉおお!!」



 二人は一瞬交差し、そのまま位置を変えて止まる。


 膝をついたのは、ジョルジオ様だった。

 そして、膝をついたと同時に大楯の上部は崩れていった。



 ……。

 …………。

 ノォォォオオオオォォオオオオオウ!?



「完敗だっ! まさか今まで利き手ではない腕で剣を振るっていたとは思わなかったぞ」


「奥様から言いつけられた特訓の一つだったのですが、それではジョルジオ様に勝てないと思い、言いつけを破りました。ある意味では、私の負けとも言えます」


「そうか。本気を出さざるを得ない程には認められたということか。次は勝って認めさせてやるから覚悟しておけ!」


「はい。その時を楽しみにしております。私もまた強くなった姿をお見せできるよう精進致します」


 二人は互いの健闘を称えあい、固い握手をしていた。


 そして、クレアとサラが私の方へとやってくる。


「お姉様!」

「お嬢様!」


「「勝ちました!!」」


「……バカ」


「え?」


「……サラの、バカ」


「お嬢、様?」


「サラのバカァァアアア!!」


 信じてたのに! なんだよ最良の結果を持ってくるって! こんなの酷いよ!


 私はその場を走り、逃げ出した。


「なぜ……?」


 サラのつぶやきが、風に乗って聞こえた気がした。

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