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五十話 バディ大会議:クレア視点

 バンッ! と私は机を強く叩き、集まってくれたみんなを見渡す。


「今日はお姉様と誰がバディを組むか、それを決めたいと思います」


「わ~!」


 パチパチとアニーさんとスイフトさん、それにリズ先輩が拍手してくれる。

 ハナビスさんとエド先輩は特に興味がなさそう、なフリをしているけど聞き耳を立てているのはわかっている。

 そして、ジョルジオさんは少し困惑顔だ。


 私は一年生と二年生との顔合わせがあったその日のうちに、今いるみんなに集まるように声を掛けていた。

 全員集まった後、私は部隊のみんなとエド先輩、リズ先輩の紹介を済ませた。

 エド先輩もリズ先輩も堅苦しいのは嫌いみたいだから、みんな普通に話をしているみたい。


 で、今ここにいる全員が私のライバルだ。

 なぜなら学期が変わる度に、バディの変更が可能になるから。


 もちろん変更しなくてもいいけど、当然二人の同意が必要になる。

 私がお姉様とバディを解消する気はないけど、お姉様の気持ちはわからないし、ここにいる人達はお姉様とバディを組む実力を十分に持っている人達だ。


「ここにいる皆さんはお姉様とご縁があり、バディを組むことを少しは考えたことがあると思います。そしてお姉様も、ここにいる皆さんとだったらバディを組む可能性が高いです。

 これだけの人数が集まっているにも関わらず、お姉様とバディを組めるのはただ一人。

 ですから、遺恨を残さないようみんなで先に決めてしまいたいと思います!」


「あぁ? 別にそんなことしなくても勝手にフロストを誘えばいいだろうが」


「ハナビスさん、失格です」


「何ぃ?」


「お姉様は押しに弱い!」


 私がお姉様とバディを組んだ時も、みんなで部隊を組んだ時も、実はお姉様からバディや部隊を組みたいとは言っていないのだ。

 私やアニーさんが半ば有無を言わせずに組んだと言えなくもない。


「!?」


「例えハナビスさんがお姉様と世間話しの中でバディを組もうなどと言っても」


「などと……?」


「私やアニーさんが強引にバディを組んだと教師に報告してしまえば、お姉様は強引に進めた方と組んでしまう可能性があります!

 さすがに先約があるから、と断っても後から誘ってくれた人に悪いと、どちらの顔も潰さないように他の方と組むかもしれません!

 それは、誰も望まない結果だとは思いませんか!?」


「あ、ありえる……」

「確かに……」


 スイフトさんとアニーさんがボソリと。


「ですから! 先に私達の中で誰が組むかを決めてしまうのです! よく知らない人と組まれるより少なくともこの中の誰かがバディを組めるんですから!」


「お、おぉ……」


「ははは。クレアってこんなキャラだったのか。面白いじゃん」

「あぁ、めんどくせぇ。オレはどうせお前とバディ組むしかねぇし。

 ……リズと部隊を組むんならバディは別の奴と組んでもいいのか……?」


「ぬぅ。フロストとバディを組むのは興味があるが、俺は殿下の御側を離れられないからな……。難しいかもしれん」


「ジョルジオさん、敵に塩を送るわけではありませんが、お姉様はマリアンヌ様とも少しですが交流があります。アルヴァン殿下と同じ部隊を結成するのも不可能ではないと思います」


「そうか……」


 私は正々堂々と皆さんに打ち勝って、お姉様とバディを組みます。

 見ていてくださいね、お姉様。


「私は今日のことを色々考えました。きっと、話し合いではいつまでたっても誰も納得しないでしょう。


 なので、ここにいる全員で勝負をし、勝った人がお姉様とバディになる権利を得ることにしませんか?

 そして、負けた人は勝った人とお姉様がバディとなるよう全力でサポートするのです!


 抜け駆けをするような人がいれば、この場にいる全員が敵になるかもしれないことをお忘れなく」


 みんなで集まってもらったのには抑止力の意味もある。

 一度決まってしまったら誰も覆せないように。

 それは発案者の私でも変わらない。

 だから、負けられない。


「で、何か案はあるのかい?」


 リズ先輩から当然の質問が上がる。


「いくつか考えてきたんですけど、みんなが納得するような物って無いと思うんですよね。だから、この場でみんなが案を出して、三つくらいの勝負で総合的に一番結果がいい人とお姉様がバディを組む。というのはどうでしょう?」


「まぁ落とし所としてはそんな所かもね。無難な所として、知力、体力系で一つずつ、後は変わり種の勝負っていうのが面白いかもね。例えば、売上勝負とか」


「いやそれスイフトしか勝たん奴じゃん。はい、ダメ~。知力、体力とかだと後は魔力とかかな~」


「逆に僕は魔法使えないからダメじゃないか。少しは頭使ってよ、アニー」


「え? スイフト不戦敗でいいんじゃ?」


「はい、お二人ともそこまでにして下さい。お姉様のバディを私達が先に決めたとお姉様が知った時、フェアじゃなかった時にお姉様が何を言い出すかわかりません。ちゃんと勝負になるような物にしましょう。勿論、多少の有利不利はあっても仕方ないですけど」


「ん~なんとか(りょく)っていうんだったら、魅力とかどうだい?」

「それなら権力だな」

「おいエド、いつもは嫌がるくせにこんな時ばっかり権力を使おうとするなんてズルいぞ」

「手を取り合って全てに打ち勝つ、あいつが言っていたことだ」

「切り抜き方ひどすぎないか、それ……」


「実力という意味では運も入るのではないか?」


 皆さんから色々な意見が出る中、ハナビスさんの一言で一気に静かになる。


「ごちゃごちゃ言ってっけどよぉ、試合で決めりゃ―いいじゃねぇか。知力も体力も含めたお前らが言ってた力全部使って、一番つえぇ奴があいつと組む。それなら誰も文句はねーだろ」


「「「……」」」


 そのセリフでみんなが一斉に考え込む。

 普通に試合をしたらハナビスさんかジョルジオさんのどちらかが勝つことは明白だ。

 ある意味でフェアではあるけど、結果がわかり切っている試合などみんなしたくない。


「それは、総合力で試合をするっていう意味でいいのかい? さっきハナビスが言っていたように知力も、体力も、魔力も、魅力も、権力も、運も全て使って試合をする。もちろん他にも持てる力があるならそれらも使ってね」


「あぁ? よくわかんねーけど、俺はそれで構わねぇ」


 スイフトさんの提案にハナビス様が了承を示す。


 何か、ある。

 スイフトさんが勝算もなくあんな事を言うはずがないんだ。


 知力、体力、魔力、魅力、権力、運、他の力……?

 スイフトさんがわざわざ他の力を強調する意味って……? あ、もしかして!?


「一ついいですか? 単純な実力勝負だと私には攻撃手段が少なくて勝ち目がないです。例えば複数人で試合に臨んでもいいですか?」


 ふんわりとした私の質問に対し、スイフトさんの目が鋭くなる。


「いいんじゃねーか? 俺は構わないからお前らが細かいルールは決めろよ。もちろん最終的に確認はさせてもらうけどよ」


 スイフトさんが使う力、それはきっと財力だ。

 今回の勝負、一番の強敵はハナビスさんでもジョルジオさんでもない。

 スイフトさんかもしれない。


「うん、わかった。それじゃ僕の方でまずはルールの素案(そあん)を考えてくるよ。フロスト、クレアとモロックさんとの試合をセッティングしたのは僕さ。任せてくれよ」


「待って、下さい。私も考えてきますから、明日一度すり合わせをしましょう」


「待て、オレも参加する」


「……。わかった。それじゃ明日同じ時間にまたここで集まろう。他にも興味がある人がいたら来てくれて構わないよ。意見を貰えるのは貴重だからね」



 スイフトさんが切り出し、私とエド先輩が続く。

 エド先輩もスイフトさんの意図を察したのかもしれない。

 さすがに一筋縄では行かない人ばかりだ。



 勝負のルール、一方的にスイフトさんやエド先輩が有利になるような物にさせてはいけない。

 けど、私の勝ち目を残すように一定の決め事を作りながらも抜け道となる遊びを残さなくては。


 戦いはもう、始まっている。

フ)クシュン!

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