四十九話 しかしまわりこまれてしまった
二学期二日目。
最初のホームルームをたっぷり一時間使って二学期の主なスケジュール、ゲーム的に言うとイベントの説明が行われた。
最初のイベントは二年生との合同訓練と部隊編成。
バディの変更は任意みたいで、一学期と同じ人同士でもいいし、一年生同士でも二年生とでも組み直しても良いみたい。
部隊は二年生との混成にすることが必須で、一学期と全く同じ部隊で組むことはできない。
部隊編成後、少しして新しい部隊でのダンジョンアタックを実施する。
比較的安全な非活性ダンジョンと呼ばれる所へ、新しい部隊で経験を積むのが目的になる。
ゲーム的にも二学期のチュートリアルで行われていたもので、最深部にボスがいないフリー探索できるマップだ。
十一月に入ると二学期の目玉、アデリオン武闘会が行われる。
武闘会は一年生と二年生を三等分し、分けられた生徒の中で部隊を組む。
そして、その部隊で他のチームと戦い、三つのチームで優勝を争う催しである。
前世のノリで言うと……、体育祭的な?
武闘会の試合は三つの部隊が同時に入り乱れて戦う形になる。
ゲームでは一度やられてしまったキャラは次の試合から欠場となってしまうかなりシビアなものだ。
欠場となったキャラの代わりに別のキャラを部隊編成できるけど、最終戦以外は連戦不可となっているため、チームのバランスを考えて編成するのが大事だった。
一見面白そうなイベントなんだけど、このイベントは大きな問題を抱えていた。
一番最初に三つのチームが分けられる時のキャラが完全ランダムで、弱キャラばかりのチームになると開始時点で優勝を諦めなければならないというケースが結構な確率で発生するのだ。
もちろん、ここで優勝するのがグランドルートの条件だ。
いや、ホントに乙女ゲームとは思えなくない?
ちなみに、攻略サイトでみた情報では、この時点で四人しかいない攻略対象の内、バディを含めて三人いるか、二人の場合はチーム全体の平均ステータスが高くないと優勝は難しいらしい。
なかなかにプレイヤーを悩ませたイベントと言える。
武闘会の細かいルール説明はなかったので、この世界ではゲームと違ってどうなるか分からない。
お祭りみたいな物だし、無詠唱魔法がどこまで通じるかを試すチャンスにもなりそうだから楽しみだ。
ちなみに三年生は一年生と実力差がありすぎたことが過去にあったようで、三年生は三年生だけで普通に部隊戦をやる予定だそうだ。
十月、十二月は魔物の発生状況に応じて魔物討伐の命令が部隊単位に出される。
魔物が発生するかもわからないし、発生した場合は状況に応じて教師がどの部隊を討伐に行かせるか決めるらしいので、今考えても仕方がない。
ただ、ゲーム的には必ず起こるものだから、クレアは巻き込まれてしまうかもしれない。
ホームルームが終わり、授業を挟んだ後は午後に二年生達とのご対面である。
二年生の知り合いはというと。
夏休みに知り合ったエド先輩とリズ先輩。
そして、ロラン様が二年生にいらっしゃる。
なんかちょっとソワソワする。
ロラン様は婚約破棄されたとはいえ知らない仲じゃないし、挨拶した方がいいのかな……。
ロラン様は私のこと無視するんじゃないかな……。
とか、色々と頭の中がグルグルとしだした。
「お姉様、大丈夫ですか? 顔色が悪いみたいです。ヒールしますか?」
「……あ、うん。だ、大丈夫よ。ちょっと考え事をね……」
ヒールで悩みもなくなっちゃえば楽なのにね。
とはいえ、クヨクヨ悩んでいてもどうしようもない。
二年生だって三十人近くいるんだから、ばったり会うことはないかもしれない。
顔を上げてフンッ! と気合いを入れて私は集合場所へと歩き出した。
一年生と二年生を合わせると五十人を超える大所帯となる。
集合場所は部隊で訓練も行える訓練場で、最初は一年生は一年生同士、二年生は二年生同士で固まっているのでごちゃごちゃした感じはそれほどない。
一年生同士が固まっているから、見渡せば見知った顔に当たる。
アニー様だ。
「やっほ~! フロスト、クレア~」
二学期になって最初の顔合わせだけど、夏休みの最後はアニー様がベルガモット領に来てくれていたから、久しぶりという感じは全然ない。
「ごきげんよう、アニー様」
「こんにちわ、アニーさん」
アニー様と談笑していると、二年生の方から一人の女性が歩いてきた。
「よ~、フロスト、クレア。元気だった?」
「リズ先輩、お久しぶりです」
「こんにちわ、リズ先輩」
以前ベルモで見た露出した格好ではなく、普通に制服だ。
逆に違和感があるなぁ。
「フロスト、こちらの方は?」
「紹介しますわね、こちらはベルモの魔物討伐でお世話になったリズ先輩。こちらはわたくしの部隊でご一緒していたアニー様ですわ」
「あ~! この人なのねっ! あたしはアニー・アプリコット! よろしく~」
「あたいはリーザリア。リズって呼んでくれ」
「すっごい大きい剣を使うんだって? すごいね~」
「こいつらやハナビスと同じ部隊だったんだろ? それじゃアニーの実力も期待できそうだな!」
あらやだ二人は陽キャだわ。
違和感なく普通に会話を始めてるし。
そのうち模擬試合始めちゃいそうな雰囲気すらある。
リズ先輩がいるってことは近くにエド先輩がいるのかなぁ~と辺りを見回すと、なんと遠くにいるロラン様と一瞬目が合ってしまうが、ロラン様は私の視線からすぐに外れていった。
もう好きという感情はないけれど、やっぱり素敵な方だなと、少しだけそう思った。
私がぽけーっとしていると、いつの間にやらアニー様とリズ先輩が盛り上がり、本当に試合を始めそうになった所でエド先輩が登場した。
「おいリズ、迷惑をかけるな。オレに。なんでオレがお前の面倒見なきゃいけねーんだ。立場が逆だろうがっ」
さすがに学院ではベルモの時のようにずっとフードを被っているわけには行かないので、エド先輩はその中性的で綺麗な素顔を晒している。
あんな綺麗な顔してぶっきらぼうな感じが、一部のプレイヤーには大人気だった。
まぁなんというか、私もすっごくよくわかる。
いいよね、ギャップ萌え。
私達以外にもみんながざわざわとしだした所で、教師から声がかかる。
叱られるかなぁと思ったらそんなこともなく、一年生と二年生で混合で部隊を組むことになるので、好きに親交を深めろとのことだった。
色々な人と話すことはもちろんだが、訓練場だけあって模擬試合もして良いそうだ。
部隊を組むならお互いの実力は知っておいた方がいいもんね。
部隊だけでなくバディも一年生と二年生で組んでも良いから、早い内に交流を深めたい人もいることだろう。
教師が早々に退場し、その後は各々が好きなように行動を始めていた。
ん~、私はどうしようかなぁとは全然悩まない。
バディは二年生と組む気は全然ないのだ。
私はジョルジオ様と組むんだから。
せっかくエド先輩やリズ先輩がいるのだから、バディは組む気ないけど部隊を組めそうな二年生を紹介してもらうというのも悪くないかなぁ。
なんて考えていたら、知らない人から話しかけられた。
「キミらが噂の英雄ちゃんか?」
「あ、私が話しかけようと思ったのに~」
「いや、僕がさきに……」
「リズ! その子達紹介してくれよ」
「え? あ、あ、えぇ!?」
「へ? は、えぇ!?」
二年生を紹介してもらおうかと思っていたらいつの間にやら囲まれていた。
にげ……、られない!
何を言っているかわからないと思うが、私が一番わからない。
何がどうなっているのか、他の部隊メンバーに助けて貰おうと周りを見渡すと、ハナビス様もスイフト様もアニー様も二年生に囲まれていた。
あ、ハナビス様が逃げ出そうと……、しかしまわりこまれてしまった!
あたふたとしている私達を見かねてか、エド先輩が助けてくれた。
「お前らうるせーぞ。オレとリズが先約だ。お前らは散れ」
「なんだよ、エドが相手か~」
「エドくんなら譲ってもいいかぁ」
なんなのっ! なんなのよっ、もう!
「二年も一年と組まなきゃいけないから、有望な子と組みたいのさ。王子様達は優秀だろうけど、さすがに一緒に部隊組むのは気が引けるから、あんた達に白羽の矢が立ってるってわけ」
他の二年生がいなくなると、リズ先輩がそう教えてくれた。
なる、ほど?
つまりさっきのエド先輩の先約というのは……?
「というわけでさ、あたい達と部隊組もうぜ。バディはさすがにエドと組むかもだけど、部隊くらいはいいだろ?」
あ、はい。




