四十八話 サラVSジョルジオ
クレアがホーリーシールドを二人に掛け、準備が整った所で訓練場の中央で向かい合う。
ジョルジオ様もサラも、いつになく真剣な表情をしている。
う~ん、ジョルジオ様の精悍な顔つきは素敵ねっ!
サラも今日はとってもカッコ良く見えるわ!
そんな二人の装備だけど、ジョルジオ様はロングソードと大楯の装備だ。
キングロックホーンの時も、私とクレアと試合する時も同じ装備だから、ジョルジオ様の基本装備なんだと思う。
対してサラはレイピアと逆手に持ったダガーの二刀流。
魔物討伐の時はレイピアをベースとした、突きだけじゃなく斬れるようにもした少し大きい特注の剣を使っているけど、この訓練場には勿論ないのでレイピアを使うことにしたんだろう。
勿論、二人とも木製の武器だ。
ジョルジオ様の戦闘スタイルは大楯で堅く守り、じっくりと攻めていくスタイルだ。
私とクレアのペアで試合する時はこちらの攻撃を全て受けきってから反撃をしていたし、キングロックホーンの時も防御を重視していた。
対してサラは……。
う~ん、正直対人戦のスタイルは私にもよくわからないんだよね。
魔物と戦う時は大体速攻で倒しちゃうし。
少なくとも私との訓練ではそのスピードと手数が印象的だから、魔物ならいざ知らず対人戦では一撃で倒すというよりは速さ、手数、巧さで戦うスタイルなんじゃないかな。
それにお母様との特訓の成果も気になる所。
私との訓練じゃ本気を出してなんてくれるはずもないし。
でもなんだろう? 今日はいやに立ち姿に違和感を感じるなぁ。
まさか王者の風格? なんつってぃ!
何にしろ、どちらも実力者だということは疑いようがない。
う~ん、それにしても私はどっちを応援したら良いのだろうか……?
試合開始の合図は私がすることになっている。
二人の邪魔にならないよう十分に距離をとって、声を上げる。
「試合、開始!」
私はすぐにピョンピョンピョンと後ろに飛び、さらに距離を取る。
そのわずかな間に、サラが一気にジョルジオ様との距離を一気に詰めていた。
さすがにアクセルよりは遅いけど、六、七メートル近くある距離をあっと言う間に。
「はぁぁ!」
「くっ!」
先制攻撃はそのままサラが。
距離を取っている私が目でギリギリ追えるスピードで、ジョルジオ様が剣を持っている方の肩目掛けて気迫を乗せたレイピアによる鋭い突きを放つ。
が、これはジョルジオ様もしっかりと反応して右肩を後ろにずらすことで躱す。
「まだまだっ!」
だけど、右肩を後ろに下げてしまったことでジョルジオ様はすぐに斬り返すことができなかった。
そんなジョルジオ様に向かってサラがさらに剣戟を次々と繰り出す。
しかも狙いを絞らせることをせずに、剣を持った手や腕、足など大楯で隠しきれない部位を両手に持ったレイピアとダガーで次々と責め立てる。
大楯はその名の通り、とても大きい盾だ。
その大きさは物によって結構差があるんだけど、小さくても半身を隠せる物がほとんどだ。
ジョルジオ様が持っているのは大楯の中でも大きい方だと思う。
盾を地面につけた状態でジョルジオ様のお腹くらいまで届いていたはず。
そんな大楯に守られているはずなのにも関わらず、サラの攻撃はジョルジオ様に既に二度当たっている。
わずか二分くらいの間にだ。
「す、すごいですね、お姉様……」
いつの間にか私の傍に来ていたクレアが感嘆の声を洩らす。
「そうね……。サラがお母様と特訓してたのは知ってたけど、ここまで強くなっているなんて思ってもいなかったわ……」
「ジョルジオさんもサラさんの動きになんとか着いていっていますけど、段々と押され始めてますね……」
そう、サラの攻撃の凄さに目が奪われがちだけど、ジョルジオ様も実際凄い動きをしている。
確かに二度攻撃を食らってしまっているけど、サラの攻撃している回数はもう数十回に達している。
それを剣で、盾で、体捌きで躱している。
それでも苦戦しているのは、今回のルールが攻撃の当たった回数で勝敗が決まるというルールのせいだ。
サラの攻撃は速く手数が多い。
けれど、鎧を着た通常の試合だったなら、サラの攻撃の大半は相手に致命傷を与える物ではない。
要は、速いけど軽いのだ。
もちろん致命傷を与えられるような鋭い突きも混ざっているが、それはジョルジオ様はしっかりと防ぐか躱すかをしている。
何にしろ、そのルールがあるからこそジョルジオ様は苦戦をしている。
もしこの試合が相手を倒せばいいというルールだったら、ジョルジオ様が相手の攻撃を全て受けきるスタイルでなかったら、こんな展開にはなっておらず、むしろジョルジオ様が押していた展開になっていたかもしれない。
そんなことを考えていると、ふとサラの違和感の正体に気が付いた。
レイピアを利き手じゃない左手に持っているんだ!
それに、レイピアの攻撃は剣同士で打ち合うことはあっても、一度も大楯に触れていないんじゃない!?
いやいや、それとんでもなくない!?
サラはずっとジョルジオ様の大楯を持っていない右手側を、先手を取りながらひたすら攻撃し続けているってことじゃん!
凄いのは左手のレイピアの扱いだけじゃない。
右手に持ったダガーの扱いもすっごく巧みだ。
右側への攻撃を嫌がったジョルジオ様の盾による押し込みでのポジションチェンジを狙った攻撃もあるけど、それは右手のダガーで捌きつつ、自分の有利なポジションをずっとキープしている。たぶん。
「これでどうだっ!」
「させません!」
あぁ! ジョルジオ様が盾を動かそうとするタイミングで逆手に持ったダガーを盾の端にひっかけて引っ張ることで防御を崩してる……!
「うぉぉおお!」
「そこぉ!」
ジョルジオ様が盾で代えられなかったポジションを右手の剣でむりやり変えようとすれば、その出だしを逆に攻撃してる!?
これは、スピードと立ち回りがサラの方が数枚上手だからできる芸当に違いない。
それにしてもこんなに気迫の籠ったサラを見るのは、私は初めてだ……。
その後もサラの圧倒的スピードと立ち回りによる攻勢が続いた。
「んんんぅん、俺の負けだ!」
そして程なくして、ジョルジオ様から敗北宣言が発せられた。
その言葉は悔しさを確かに滲ませていたが、何故かすっきりとした声色にも聞こえた。
ってゆーかサラ、あなたいつの間にそんなに強くなったの……。
想像を遥かに上回って強いんですけど……。
ってゆーかサラ、私のメイド辞めて戦いに生きる女になるつもり……?
「ありがとうございました」
「はっはっはっ! 何を言う、礼を言いたいのはこちらの方だ! 世の中にはまだまだこんなに強い奴がいるのだなっ! 俺ももっともっと訓練せねばならん!」
「いえ、ルールが私に有利になるものでした。それに、私が目標とする方はまだ遠く。あの方から一本取るまでは修行あるのみです」
あ、お母様に勝つつもりなの……?
それならあの気迫も納得かもしれない。
お母様に勝つつもりなら他の人には負けられないもんね。
「そうか、お前がそれほど言う人物は余程強いのだろうな。そうだ! それなら騎士団に入らないかっ!? 訓練する相手には困らないし、俺が責任を持って推薦するぞ!
なぁに騎士団も男ばかりではない。多くはないが女性の団員もいる。それにお前ならすぐに十人隊長に任じられるぞ」
「ありがたいお言葉ですが、私には仕えるべき主がおります。この生ある限りそれが変わることはありません」
「そうか、残念だがその忠義は見事! 本当に騎士団にほしい人材だな!」
サラに目をつけるなんて、ジョルジオ様はお目が高い。
でも、ウチのサラはそう簡単には上げられませんのよっ!
フ)祝☆ブクマ50!
ク)いつもお読み頂きありがとうございます
サ)ブクマ、評価はとても励みになっています
ク)100を目指して頑張りますので、これからも応援よろしくお願いします!
フ)お祝いに今週は土曜日も更新する予定~




