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幕間 あるメイドの裏話

 お嬢様をお訪ねになったハナビス様は翌日、リーザリアさんと共にまたお屋敷にお越しになった。

 ワオーンドッグ討伐の話を聞いたハナビス様はなんと、お嬢様ではなく奥様に試合を申し込みに来たという。

 私は急ぎ父に伝え、対応をしてもらう。


 お嬢様のお話しではかなりお強いと聞いているし、リーザリアさんは昨日の戦闘ではまだまだ荒いが、大剣による強力な一撃とカンはかなり良いと感じた。

 けれど、奥様に挑むのはさすがに無謀と言わざるを得ない。


 予想通り、二人掛かりでも奥様の圧勝となった。

 三度模擬試合をし、最後の一戦は奥様が魔法をお使いになった。

 二人掛かりとはいえ、ある程度本気を出して相手をせざるを得なかったということだろうか。

 私との一対一では魔法をお使いになったことはない。


 そんな奥様からハナビス様とリーザリアさんを見送る時に、話しかけられた。


「私ももう年ね。私は老いて、あなた達若い世代がどんどんと成長していく」


「いえ、奥様はまだお若いです。まだまだ教えて頂きたいことが沢山ございます」


「そうねぇ、いつまでもフロストと姉妹みたいって言われたいのだけど……。あと三年で四十なのよ……。でもそうねぇ、あなたには私の技の全てを教えたいと思っているわ。そして、フロストのことを必ず守ってほしいの」


「もちろんです。私の命に代えてもお守り致します」


 四十近いとは思えない若々しさを保たれていらっしゃるが、ご自身にしかわからないレベルで技のキレが落ちているのかもしれない。

 ならば、全盛期の奥様の技を目に焼き付けて覚えるのだ。

 お嬢様のために。


「最近、ちょっと動くとすごく疲れるのよねぇ。だから、後は若い子達に任せたいわ~」


 やはり奥様とお嬢様は親子なのだなと、再認識した。




 私は翌日から奥様に剣の稽古をつけて頂いていた。

 今までよりも長く、厳しい稽古を。


 ハナビス様とリーザリアさんのペアが奥様に魔法を使わせたことが、私には悔しかったのだ。

 何より、二人を見ていてお嬢様を守るべき私が腑抜けていたと思わされてしまった。


 目標を新たに挑むも、結局奥様が魔法を使うことは一度もなかった。

 ただ、今までよりも一段厳しい指導を受け、確かな手応えを感じることはできた。


 しばらくそんな日が続いていたが、大きな問題が発覚した。

 お嬢様は訓練をしたり、色々お出かけになっていたにも関わらず、この夏にお痩せにならないことを不思議に思っていたのだが、真相はクレアがお嬢様に魔法の訓練後や研究中に手作りの梨ジュースやお菓子をたっぷりとお出ししていたのだ。


 当然、ストックは全部没収したが、それを見た奥様が試食され、「あらあら美味しいわね、また作って頂戴クレア」と言うものだから困ったものだ。

 みんなクレアには甘すぎるのではないだろうか。




 ハナビス様の次にいらしたのはスイフトさんだ。

 彼は行商で来たというので、全てベルガモット領で取れ、加工されたものをお出しした。

 召し上がる際にはそれぞれご説明させて頂き、一部仕入れて下さるとのことだった。


 彼が行商で持ってきたもので注目されたのは酒類だが、お屋敷のメイド達は別の物に目を付けた。

 それは化粧品だ。


 お嬢様と彼をお見送りする際、屋敷を出る直前で声を掛けられたのだ。

 お嬢様がお部屋へ戻ると、玄関で商品を広げ、説明を初めててくれたのが、それを別のメイドに見つかってしまい、瞬く間に屋敷へと広がった。

 お手頃な価格の物から高い物まであり、品数は多くなかったが、誰のために用意したのかはすぐに理解できた。

 お手頃な物は私に、高い物はお嬢様に。


 だが、化粧品類はすぐに全て売り切れた。

 多数のメイドと、なんと奥様がほとんどを買っていってしまった。

 私もなんとか自分の分とお嬢様の分を一つずつ確保することができたのは幸いだ。


 お嬢様からアニー様と両思いだと聞いたけど、彼の行動や視線を追えばどうにも腑に落ちないことが多い。

 けれど、私がでしゃばることではない。

 失意のお嬢様にお姉さんぶるのだって、私は嫌いじゃないのだ。



 その後のお二人はと言えば。

 ハナビス様は一週間程ベルモに滞在され、もっと強くなってまた来ると言って出立された。

 スイフト様もその翌日に次の街へ行商へ行くと言って出立された。



 最後にアニー様がいらしてからは落ち着いたものだった。

 少し長めに滞在するから気遣いは不要とのことと、アプリコット家のメイドを連れていらしたので、その方にお屋敷のことをご説明した後は、少々監視するだけで済んだ。




 学生からしたら夏休みはリフレッシュするにはいい機会かもしれないが、専属メイドとしてはお屋敷に帰った方が忙しい上に気を使うものだと初めて知った。


 父に愚痴ったら、学院でたるんだのではないか? と叱られ、次の長期休みは父自らが扱くと約束してくれた。

 はぁ、学院が恋しいですね、お嬢様。

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