幕間 風魔法の力で空を飛ぼう!
「ごばっぷ、ぶぶべばぁ!!」
「お嬢様!」
「お姉様!」
「姉様!」
ワオーンドッグ討伐時に考えていた風を内側から出して空を飛ぶ、というイメージを実践しようとして私は地面に向かって盛大に激突し、そのまま地面を猛烈な勢いで十メートル近く滑っていた。
いや、めちゃくちゃ痛い。クレアにホーリーシールドをかけて貰っているにも関わらず、激突の衝撃を全て吸収しきれなかったのか……。
クレアがいなかったらマジで死んでいたかもしれない。
事の発端はワオーンドッグを討伐して数日後、KPTと呼ばれる振り返り会を行っていた時のことだ。
KPTとはKEEP(続けたいこと)、PROBLEM(問題があったこと)、TRY(今後やって行きたいこと)の三要素を参加者がそれぞれ考えて持ちより、プロジェクトなどの振り返りを行う手法だ。
参加者が考えてきた各要素を発表し、それに対してあーだこーだ言うわけ。
ただし、相手を批判してはいけない。お姉さんとの約束だよ!
前世で仕事の区切りで度々実施していた物で、ふと思い出したのでこの世界でも実践してみようと思ったのだ。
参加者は私、サラ、クレア、ノル。
司会進行にお父様とオブザーバーとしてお母様も参加。
そしてなんと守備隊からも一名が代表として参加している。
通常、魔物討伐の反省を行うにしてもトップダウンで決まるか、良くて相談役と話すか、上層部内でやんややんや言うくらいだろう。
なので、守備隊も参加するような誰からも意見を募るようなこんな考え方はこの世界にはないはずだ。
そのため、お父様もお母様も興味津々で参加してくれた。
それぞれ色々な意見が出た。
私の接近戦での対応ができなかったことや、クレアが攻撃手段を持たないこと、お父様と私が意思疎通を取れないことなどなど。
それを今後につなげていく、KEEPの所でノルが何気なしに行った言葉が私の心を揺り動かした。
「僕も、もっと色んな魔法を覚えたいです。エド助祭の影を重くする、なんてそんな魔法があるなんて知りませんでした。攻撃するだけが魔法じゃないんですね」
影を重くする魔法? 単純な物理現象と魔法はまったく異なる……。
改めて考えれば魔法が物理現象と異なるのは当然だけど、風属性で新しい無詠唱魔法を考える時、下手に前世の知識を持っていた私は物理現象に縛られていたのではないか?
そして閃く。
討伐の時に考えた風を受けて空を飛ぶのではなく、風を自分自身が発して空を飛ぶことが、無詠唱魔法ならできるのではないかと!!
そう考えた私はKPTの発案者であるにも関わらず、新しい無詠唱魔法について考え、魔法のことを話し始めてKPTの会をぶち壊すのであった。
で、結局色々なイメージを練り込んで試してみた結果、地面と言う名の滑り台を滑っていたわけである。
スノーボードで転んだ時だってあんな勢いで転んだことないよ!
クレアに回復魔法を掛けて貰いながら、KPTで振り返りを実施することを決めた。
「私は、KPTで無詠唱魔法の常識を変えてみせる! と思ったけど、そもそも常識を語れる程無詠唱魔法は一般的に認知されていなかったわ」
「無詠唱魔法はこんなに楽しいのにもったいないですよね、お姉様」
「常識はともかくとして、振り返りを行うのは良いことではないでしょうか。言葉に、文字にして振り返りをすることはとても良いことだと思います」
「僕もがんばるよ!」
「そうね。みんなドンドン意見を出して頂戴。でも三人に協力してもらっているのだから、何かこの集まりに名前を付けたいわね……。そうだわ! KPTにちなんで、K (風魔法の)P (パワーで)T (飛ぼう)の会を結成するわ!」
「ダ、ダサイです……」
「お嬢様……、さすがにそれはないです……」
「姉様、僕、恥ずかしいです……」
KPTで、私は世界を変える!




