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四十五話 運がない女

 光の導が私の目の前でグルグルと円を描く。


 お父様とリーザリアさんに向かった光の導は、二人の前まで行くとそれぞれ別の軌跡を生む。


 リーザリアさんの方はすぐにワオーンドッグへ向かい、すぐに右へ。


 お父様の方はツーテンポくらい遅れて、ワオーンドッグへ向かい、すぐに左へ。


 そして、そのタイミングで私の前で円を描いていた光がワオーンドッグへ伸びる。




 二人には一撃離脱で気を逸らしつつ、私が魔法で攻撃をするって感じ?


 ストームアローなら確実に致命傷を与えられると思うけど、連携がとれない中で中位の詠唱魔法を当てるのは発動タイミングを合わせ辛く難しい。


 やっぱり風魔か改良型バレットだけど……。


 風魔は阻害やサポートには使いやすいけど、一撃のダメージは高くない。かといってバレットでも連射はできるけど、一発一発の威力は致命傷を与えられる程でもない……。


 もう一段階アレンジ、する?




 リーザリアさんが行動を起こすまでに準備しないと間に合わない。あまり考え込んでいる時間はない。


 リーザリアさんに視線を向けると、タイミングよく彼女がこちらに、後方に目を向けた。


 でもそれは私を見たわけではなく、エド助祭を見ているようだ。


 連られて私もエド助祭の方を見ると、彼は頷いていた。そして、詠唱を開始する。


 リーザリアさんはエド助祭の護衛だと言っていたから、お互いの手の内は把握済みで連携も取りやすいのだろう。


 恐らくエド助祭の魔法が発動してからリーザリアさんは行動を開始するはずだ。


 私はそれまでにアレンジした無詠唱魔法のイメージを固めよう。無理そうなら早めに連射型に切り替える必要がある。




 うんうんとイメージを固めようと唸っている間に、エド助祭の魔法が発動する。


 黒い塊がエド助祭から放たれ、ワオーンドッグに当たると思ったその時、なんと黒い塊はワオーンドッグの影へと吸い込まれていった。


 んん!? どゆこと!?


 リーザリアさんは自分から動くことなく様子見をしていたので、お父様も動けずにいた前線の拮抗状態が、エド助祭の魔法によって動きだす。


 目に見えてワオーンドッグの動きが遅くなったのだ。


 闇属性の魔法はレアなのでどんな魔法かわからなかったけど、動きが遅くなる闇魔法はゲームで心当たりがある。


 シャドーグラビティ。敵の素早さを下げ、行動速度を遅くするデバフ魔法だ。


 フレーバーテキストで書かれた説明はうろ覚えだけど、影に質量を与えて動きを阻害するとかだった気がする。


 実際にワオーンドッグは何か重りを付けられたかのように先程までの俊敏さが影を潜めていた。


 それを確認したリーザリアさんが斬り込む。大剣を上段に構え、ジャンプしながら渾身の一撃をワオーンドッグの頭に向かって振り下ろす。


 しかし、当たりこそしたもののワオーンドッグの肩口を切り裂くに留まリ、致命傷を与えることはできなかった。


 聴覚によってリーザリアさんの行動を把握していただろうワオーンドッグは重たい体をなんとか動かし、致命傷を避けたのだ。


 リーザリアさんが放った渾身の一撃はあまりの威力に大剣が大地に突き刺さる。リーザリアさんは的にならないよう、大剣の腹を思いっきり蹴りつけ、引き抜くと同時に横に転がる


 そして今度はお父様がハルバートを頭上で回転させ、勢いを乗せてワオーンドッグの頭目掛けて薙ぎ払う。


 ハルバートの重さと遠心力で直撃すればちょっと見たくない映像になりそうだったけれど、それもワオーンドッグは渾身のバックステップでギリギリ掠る程度で避けた。


 だけど、シャドーグラビティによる自重のズレか着地で大きく態勢を崩していた。




 今がチャンス!!




 私は両手を握り、一つの拳銃を形作る。


 両手の指先にさっきよりも大きくて長い銃身を螺旋状にしてイメージする。


 狙いをつけやすいように銃身の先頭についている照準みたいのもつける。


 実際には魔法で強引に軌道修正するから必要ないっちゃないんだけど、大まかに狙うことで魔力のロスを少なくできる、と思う。


 そして、気分だ。片目瞑って狙いながら撃ったほうがかっこいいと思うんです。たぶん。



 最後に風の弾丸を。


 正直今までは弾丸の形状を考慮していなかった。


 だけど、今度は本当の銃弾の形をイメージする。


 銃身に見合った大きな弾丸を。


 私は両手で狙いを定めて魔法を発動する。



 ――バレット・マグナム!!



 発動した魔法は私の両手を跳ね上げた。銃を撃った時、その反動で腕が上がったり後ろによろめいたりするってドラマやアニメであるけど、まさにそんな衝撃が私を襲っていた。


 想定していなかった衝撃に私はバランスを崩し、ゆっくりと後ろに倒れていく。その時考えていたことは、私って本当に運がないなって。


 発動直前に、ワオーンドッグは体の向きを変えていたのだ。私から見てちょうど横向きに。バレット・マグナムは直撃してお腹を貫通したけど、一撃で倒すことはできなかったのだ。


 キングロックホーンの時も感じた自分の運の無さを嘆きながら、そのまま後ろに倒れて盛大に尻餅をつく。


 お父様もリーザリアさんもさっきは渾身の一撃を振るっていたので、態勢は立て直せていない。私達の攻撃に一瞬の空白が生まれる。



 その隙に今までにないほどの音量でワオーンドッグが吠える。


 光の耳栓をしていたから音は聞こえなかった。でも、大気を振るわせる程の衝撃が襲って来た。


 その衝撃によって、尻餅をついた態勢で私は硬直してしまう。


 ワオーンドッグは自分の腹に穴をあけた私に向かって、死力を振り絞って襲い掛かってくる。


 今までにないスピードで私に詰め寄り、直前で飛び上がってその牙と爪を私に向ける。



 やばっ! ワオーンドッグの進路を変えないと!



 私は咄嗟に風魔を最大出力で浮き上がった体に叩きつけた。


 ヒヤッとしたけれど、なんとか態勢を崩すことができ、ワオーンドッグは私の左後方へ着地し、そのまま走り抜ける。


 が。



 もっとやばっ! そっちにはノルとクレアがいる方向だっ!!




 急いで起き上がるけど、ワオーンドッグは既にノルとクレアの目の前に迫っていた。


 クレアはとっさに光の耳栓で耳を覆っていたようだ。


 だけど、ノルまでは間に合わなかったようだ。ノルはワオーンドッグの吠え声によって尻餅を付き、完全に硬直していた。


 クレアはそんなノルを背後に隠してワオーンドッグを睨みつける。


 ワオーンドッグは無慈悲にも、二人に向かって爪を振り下ろした。


 その瞬間を正視できなくて、私は目を瞑ってしまう。



 何秒たったのだろうか、音の聞こえない世界では何が起こったか目を開けないとわからない。


 私は勇気を出してゆっくりと目を開け、呆けてしまう。




 バ、バスケット(籠)(結界)だー!!




 クレアが両手を広げ、ノルを守ってる!!


 クレアのバスケットは鉄壁だと信じられるけど、光の耳栓に光の導を連発しているから魔力量が心配だ。


 以前にキングロックホーンと戦っている時にどれだけの時間結界を展開できていたのかわからないけど、今の魔力量だといつ魔力が切れてしまってもおかしくない。




 ここで、倒さなきゃ!


 クレアの結界に気を取られている今なら確実に魔法を当てられる。クレアの結界なら巻き添えにしても傷一つつかないだろう。


 それなら、切り札(エアーズガーデン)でっ!!




 私は一つ息を吸い込み、エアーズガーデンのイメージを固める。


 まずいっ! 魔力がギリギリかも……。でもここで倒さないと二人が……。


 くっ! このまま、発動するっ!


 ――エアーズガーデン!!




 私は二人が襲われていて、冷静ではなかったんだろう。


 魔力量の見極めを失敗したエアーズガーデンは不発に終わった。




 魔力が切れて倒れそうになる意識をなんとか繋いで、ワオーンドッグを見る。


 エアーズガーデンは第一段階の風の檻を作っていたけど、第二段階の風の刃が一つしか発動しておらず、致命傷を与えるには程遠い威力だった。




 三度、私の魔法で傷を負ったワオーンドッグが怒り狂い、再び標的が私に移る。



 ……。



 二人を助けられて、良かったな。


 でも、もう避ける気力もないや……。


 みんな、ごめんね。




 目を閉じてその時を待つ。


 音が聞こえないからかその瞬間がやけに長く感じる。




 そして、生暖かい感触が私を襲った。

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