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三十八話 弟が可愛すぎて辛い

「僕も行く!」


「ダメよ。ノルにはまだ早いわ」


「なんでですかっ! 姉様も僕の年の時には何度も魔物討伐に行っていたじゃないですかっ!」


 教会との交渉を終えて、ワオーンドッグの討伐を翌日に備えた我が家では、弟のノルが自分も討伐に行くと騒いでいた。


 ノルは今年十三歳になる。十歳になった時、ノルも無事に精霊の祝福を得ていた。私と属性は違って、火属性で上位精霊から祝福を得ている。


 精霊王から祝福を頂けるのは滅多にないことだけど、上位精霊から祝福を得られる人もまた少ないらしい。というわけで、ベルガモット家の子供たちは魔法に愛されているのです!


 ……ではなくて。


 ノルは体がすごく細くて、弱い。


 たぶん、いやどうだろう、気のせいかな? でもなぁ、もしかしたらだし、可能性の問題なんだけど、私のせいだったりするかもしれないかもかも。


 私は元々細かった。けれど魔法を使えるようになってから徐々に太っていく私を見て、ノルは恐怖したそうだ。自分も魔法が使えるようになったら太ってしまうのではないかと。


 そんな恐怖心から、ノルは十歳になってから急に食が細くなってしまった。そのせいで体力がなく、激しい運動をすればすぐに息が上がってしまうような子供に育った。激しく動いた後、酷い時には翌日寝込むこともある。


 だから、お父様やお母様を含めて領館の人間は、ノルを魔物討伐に連れていったことがない。


「……。確かにわたくしはノルの年頃には何度も討伐に出ていたわ。でもね、それはダイエットの一環だったのよ。あなたには必要ないでしょう?」


 うぅぅ! 身を切るような嘘だわっ! 本当になんか痛い! なんか涙が出てくるくらい痛い! なんだろう、吐きそう!


「え!? そうだったの!?」


「坊ちゃん、嘘ですよ」


 サラッ!?


「え!? 嘘なの!?」


「お嬢様はお痩せにならなかったじゃないですか。討伐が終わればそれ以上にご飯を食べてましたからね」


 いや、さすがにこの場面でそういうの無しじゃない!? 確かに討伐後はお肉食べまくってたけどさぁ!


「ですが、お嬢様の実力は本物でした。坊ちゃんは当時のお嬢様と同じくらい強いと、自信を持って言えますか?」


 落として上げてくるパターンっ!?


「!? ……ううん。僕じゃあの時の姉様には敵わないと思うよ……」


「でしたら、坊ちゃんは明日初陣を飾るよりもまず、ご自分の実力を上げることが最初の戦いではないでしょうか」


「……うん! わかった! 絶対姉様より強くなって、僕もベルガモット領を守るんだっ!」


「えぇ。サラは楽しみにしています。坊ちゃん、お嬢様。差し出がましいことを申しました。お許し下さい」


「えぇ、いいのよ、サラ。後で一回デコピンさせてね」


「いえ、お断りします」


「くすぐりの方がいいと?」


「ひぇ!? 謹んでデコピンをお受けします……」


「でもお姉様、ノルさんももう十三歳なのでしたら、お姉様の素晴らしい活躍を見て貰うのもいいんじゃないでしょうか? 見ることで勉強になることも多いと思います」


「クレアさん!」


「う~ん、それも一理あるわね……。ノル、あなたはどうしたい?」


「姉様が実践で魔法を使う所、見てみたい!」


「絶対に魔物と戦わないって約束できる?」


「約束する!」


「わたくしが魔物に殺されそうになっても?」


「え!? 姉様が……。ごめんなさい、約束、できません……。僕が役に立たなくても、姉様が危険な目に合うのをじっと見てられないかもしれません……」


 思わずノルを抱きしめてしまう。ん~我が弟は素直でかわいいわっ!


「ありがとう、ノル。冗談よ。わたくしは強いし、サラにクレアもいるわ。クレアは光属性の魔法が使えるからちゃんとわたくしやノルを守ってくれるわ。それに、今回の作戦のキモはクレアなのよ? ちゃんと見て学んで、魔法の奥深さを改めて知るといいわ」


「わかりました! 姉様!」


「それじゃ早速、特訓をしましょうか! ノルの魔法を見るのは久しぶりね! それと剣の練習もちゃんとするのよ?」


「まかせてください! それでは準備してきます!」


 そう言ってノルはパタパタと自分の部屋へと駆け出していった。慌てて転ばなければいいんだけど。




 私達は日が暮れるまでノルと魔法の特訓をしたり、ノルの剣術の練習を見て付き合った。


 結果から言うと、ノルは手のひらで火を起こすだけだけど無詠唱魔法が使えるようになっていて、中位の詠唱魔法も一つ使えるようになっていた。私の弟ってばすごいわ!


 剣術の方は、うん……。剣に振り回されていたけれど……。


 魔法の腕前だけみたら、今回の魔物討伐でも十分に活躍できると思う。今回の討伐で色々と学んでくれれば、魔物討伐にノルが参加するようになる未来もそう遠くないかもしれない。


 ただし、平野であれば。


 火属性の魔法は慎重に使わないと危ないのだ。特に魔物がよくでる山の中では。強すぎる魔法は山火事を起こしてしまうかもしれないから。


 ノルはまだそこまで考えられていないように思う。使った詠唱魔法は見た目が派手なものばかりだった。それは私に良い所を見せたいからかもしれないけど、だとしたらやっぱり周囲を良く見るって思慮は足りないと思う。


 私にアピールしたいなら、それこそ地味だけどちょっと変わった魔法を見せたほうが興味を惹かれるのだから。




 とはいえ実際、派手な火属性は魔物に対する効果はかなり高い。生物である以上、人も魔物も一定以上の温度に触れればダメージを受けるのは変わらない。


 だからこそ、周囲を見て、慎重に運用することが必要なんだけど……。まぁこういうのは一度痛い目を見るか、身近な人が失敗しないと学ばないものよね。






 翌日、ワオーンドッグを討伐するため、ベルガモット家の領館前に討伐隊が集まっていた。


 メンバーはベルガモット家から私、お父様、お母様、サラ、クレア、ブライアンとベルモの街の守備隊が五人。戦力としては数えてないけど、ノルも一緒だ。


 領主一家が勢ぞろいで大丈夫か? って思うかもしれないけど、この世界では領主の一族が率先して前線に出ることは珍しくない。何せ、魔法が使えるのはほとんどが貴族だから。戦力を遊ばせておけるほど、魔物の脅威は小さくないのだ。


 教会からはエド助祭、リーザリアさん、傭兵さんが二人だ。平時であればベルモの街に傭兵がいないこともザラだ。けれど、今回の騒ぎを聞きつけてきたのか、傭兵が滞在してくれていた。


 位階は二人とも四位とのことだった。もう一人いたのだけど、位階が五位だったので今回は不参加にさせて貰った。まぁこんな片田舎に傭兵が来てくれるだけありがたいのだけれど。


 ベルガモット家、教会の人員の内、主力となってワオーンドッグと戦うのは、私、お父様、守備隊の内三人、教会からの応援四人の計九人である。現在確認できているワオーンドッグの数は十三匹なので、一人一匹か二匹を各自討伐すればいい計算になる。


 クレアはお母様のサポートを受けての光の耳栓や回復などバックアップ全般を行う。


 そのお母様はクレアのサポートもするけれど、基本的にはサラとブライアン、守備隊二人を率いた遊撃隊兼、ワオーンドッグを逃がさないように包囲する役目を担ってもらう。人数の割りにカバー範囲は広くて困難に思えるけど、お母様がサラやブライアンを率いているならきっとなんとかしてくれるだろう。


 あ、ブライアンはウチの執事長で、サラのお父さんです。




 討伐をするにあたって問題が一つある。ワオーンドッグを一気に殲滅できるか? である。


 ワオーンドッグは最初こそ十五匹確認できたものの、その後はこちらを弱らせることが目的なのか、少数で街の外から吠えるだけだった。


 一昨日に二匹を私達が討伐したことで警戒したのか、昨日は現れなかった。何もしなければ今日も現れないか、現れても少数になってしまう可能性がある。


 はてさてここで、ヨーネローネの実の出番である。

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