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三十三話 私はまた……

 週明けには期末試験が三日間に渡って行われる。

 クラスや魔法が使えるか否かにもよって試験内容は多少変わるけど、試験科目は多岐にわたる。

 初めて聞いた時はその種類の豊富さに驚いたものだ。


 たとえば、女子であればお茶会の作法あるし、男女問わず挨拶や社交界のマナー、ダンスなんかもある。

 一年生は広く浅い試験になっていて、通常の学科以外の試験は社交界に備えたものだろう。

 進級すれば各分野の専門的な物になっていくみたい。


 学院を卒業した後、領地の跡取りでもなければ進路は大きく分けると二つなる。

 女子であれば三つか。

 王宮に出仕するか、貴族の領地に出仕するか。

 女子の場合は結婚かそれに備えるか。


 大国というわけではないけれど、アデザール王国の貴族はそれなりに多い。

 その子供は男女含めればかなりの数に上る。

 領地を継げるのはほんの一部で、嫡子以外の子どもたちは自領を含めてどこかに仕えるしかない。


 そんなわけで試験に社交界でのマナーなんかも含めて、学生の内から顔を広げろってことなんだと思う。




 そんな試験前にも関わらず、私は週末に部屋から一歩も出ず、試験の勉強や準備すら一切することができなかった。


 クレアは何度か訪ねにきてくれて、バスケット一杯のクッキーを持ってきてくれた。

 いつかと同じように何も言わずにただ傍にいてくれた。

 私は特にしゃべる気にもなれず、ただひたすらクッキーを食べていた。

 何かしゃべった気はするが、正直記憶にない。

 憶えていることは、いつもよりご飯とデザートが豪華で、量が多かったことくらいだ。



 週が明け、期末試験が始まった。


 私は特に誰とも話しはせず、淡々と試験を受けた。

 試験期間中は誰かに声を掛けられても空返事を返すだけ。


 試験自体は可もなく不可もなくそこそこできたんじゃないだろうか。

 決して良くはないと思うけど。

 三日間の試験が終わって、翌日は試験休みとなる。

 教師が採点するためだろう。

 休みの翌日には終業式が行われて夏休みに入る。


 私は案の定、試験休みも外に出ることはなく一日中部屋で過ごした。


 そして終業式の日。

 いつも通りにクレアと学院へと向かう。

 その間、クレアが話しかけてくれていたけれど、私はやっぱり上の空だった。


 まず終業式が行われた。

 学院長が何か話しをしていたけれど全然頭に入って来なかった。

 まぁ入学式の時の話しも覚えていないし、特に実のある話しはしてないでしょ。


 終業式が終わると教室へ戻り、成績表が渡される。

 成績を確認すると、魔法関連と魔物討伐は全て優だったけれど、それ以外は可が四割、良が五割、優が一割くらいだった。

 ぼんやりともっとまじめに取り組めばましだったかなーと思うけど、それだけ。

 特に後悔とかはなかった。




 学院の行事も一通り終わって帰ろうと準備をしていると、私の体が突然宙に浮いた。


「はっ!? えっ!?」


「はっはっはっ! どうしたフロスト。最近元気がないじゃないかっ! 肉食うぞっ、肉っ!」


 なんと、私はジョルジオ様に抱え上げられたのだ。

 それもお姫様抱っこでっ!!


「いえ、わたくし、帰ろうかと……」


 お姫様抱っこなんて嬉し恥ずかしな気持ちで顔が真っ赤になるが、何か言わなければと必死で紡いだ言葉がこれだ。

 我ながら情けない。


「いいから俺に付き合え! 俺はお前を必ず守ると言った。キングからお前を守り切れたつもりだったんだが、お前がその調子では実は怪我をさせてたのではと不安で仕方がない。

 お前が俺に守れと言ったのだろう? 最後まで面倒を見させろ。

 よしんば怪我をしていてももう治ったとは思う。が、心配毎があるなら聞こう。言いたくないのならせめてお前の気がするまで一緒にいよう。

 俺は約束は果たす。だから、お前も俺のわがままくらい付き合え、フロスト」


「わたしくはあの時ジョルジオ様に守って頂きました。わたくしはそのことでジョルジオ様に思うことは何一つありません。そ、それにこの恰好は恥ずかしいです……。降ろして、下さい……」



 ――もう嫌だって、こんな思いしたくないって思っても



 そういうとジョルジオ様は私を降ろし、ジョルジオ様の大きな体を私の目線に合わせて言う。


「そう邪険にするな。俺がいつでもお前を守ってやる。だから元気を出して、俺に付き合え」


 !?


 改めてジョルジオ様の言葉を反芻する。


 よくよく考えたらお前を守ってやるだなんて、女子が言われてみたいセリフベスト十位くらいには入ってそうな言葉、前世でも言われたことないっ! たぶん。

 それにこの流れで付き合え、だなんてまさかそういうこと!?



 ――それは突然やってきて、私の心を奪って行くんだ



 さらに顔が熱くなっていくのがわかる……。

 息が、苦しくなってきた……。


 ジョルジオ様の目から、目を離せない……。

 その真摯な目に、言葉に引きつけられる。


「……。はい、お付き合い致しますわ。・・・・・(どこまでも)


 最後の言葉はかすれるように。



 ――たったの一回、たったの一瞬で、心はドキドキと音を奏で出す



「そうかっ! 気分が落ち込んだ時は肉を食うか訓練のどっちかがいい! まずは肉だっ! うまい肉を食わせる店がある! そこに行くぞ!」


「えぇ! お伴致しますわっ! どこへでもっ!」


 私は伸びたジョルジオ様の手を取り、走り出す。



 ――だから、私はまた恋をする。









☆おまけ クレア視点


 お姉様という目標があった私は、なんとかお姉様に恥ずかしくない成績を納めることができたと思う。

 お姉様に報告をしたいと思ったけれど、ジョルジオさんと連れだってどこかへ行ってしまった。


 報告以外にも元気のなかったお姉様のために打ち上げをしようと部隊のみんなで思っていたのだけど、当てが外れてしまい、みんなで途方にくれてしまっている所だ。


「まさかジョルジョルにフロストが拉致されるとは思わなかったぜ」


 ハナビスさんが呆れるようにそう溢すと。


「参ったね。商会の店を貸し切りにしておいたんだけど……」


「あらー。残念だったねぇ、スイフト。あなたいつもどうやってフロスト誘うか悩んでたのにねー」


「ばっ! ばっかニー! フロストとは商売の話しをしたいだけだし! そういうアニーだって夏休みにフロストの領地に遊びに行こうとか言ってたじゃないかっ!」


「それはそうよ~。大事な友達だもの。フィアンセの所でしばらく過ごしたら遊びに行きたいんだけど、予定を聞きそびれちゃったな~」


 今日もお姉様は大人気です。

 何でもできて、誰にでも隔てなく接することのできるお姉様はやっぱりすごい人だと改めて思う。


 上級の貴族、アルヴァン殿下やマリアンヌ様にも言うことはしっかり言える人だし。

 考え方も柔軟で何をするにしても刺激を受けるのは、他の人たちもきっと一緒なんだ。


 とはいえ、最近ずっと元気のなかったお姉様はやはり心配だ。


「私からメイドのサラさんに明日の予定を聞いておきますから、明日に変更というのはどうですか?」


「あぁ、俺も明日はとりあえず空いてるぜ」


「う~ん、僕は商会の仕事を手伝わないと行けないから明日は参加できそうもないな」


「え~? どうにかならないの~?」


「アニーみたいに嫁ぎ先が決まっている人と違って、僕は将来のことを今から勉強しなきゃいけないからね。でも、お店だけは貸し切りにしておくから時間が空いたら顔を出すよ」


「あ~何それ~!? あたしだって花嫁修業的な何かがあったりなかったりすんだよ~?」


「いやお前にそれは無理だろ」


「ハナビスまで~っ!」


「それにしてもよ、アニーにフィアンセがいたなんて知らなかったぜ。クイーンと戦ってる時はてっきりお前らができてると思ったんだがよ」


「や~、スイフトはないわ~。お金のことになるとすっごいうざいし~」


「こっちこそこんながさつな女はごめんだよ。カレーの時なんかフィアンセに食べさせる前の実験台とかいって、僕だけアニーの不格好な野菜を食べさせられたんだからな。まぁでもバディだから、ね」


「そ~そ~。バディは命を預ける相手だからね。バディが死んだら次に死ぬのは自分だって習わなかった~?」


「あー、そうだったか? 俺は一人だから聞いてなかったぜ」


「そうですよ! 私もお姉様がピンチだったら何があっても助けに行きますし! それに、お姉様が逆の立場でもきっとそうして下さいます!」


「あーかもなー。まぁ、俺には関係ねーか」


「あっはっはっ、ハナビスとバディ組んでくれる人いなさそ~だもんね~。でも、フロストなら二学期に組んでくれるんじゃない?」


「あーまー、あいつならっていうか、お前らが組んでくれるってんなら組んでもいいけどよ」


「ハナビスがデレた!?」


「あぁ!? スイフトてめぇ何いってんだ!?」


「まーまーみなさん、落ち着いて。それより明日ですよ? アニーさんは予定大丈夫ですか?」


「あたしは大丈夫~。ちょっと早めに帰るかもしれないけど」


「わかりました。それじゃあサラさんに私からお姉様の予定を確認して、問題なければ私が責任を持って連れ出しますねっ!」




「なぁ、それにしてもよ。人間ってのは一週間でああも体型が変わるものなのか?」


「あぁ……。モロックと揉めてたくらいの時の体型に戻ってるよね……」


 そう、お姉様の制服はパツパツになっていて、以前の体型に戻りつつあるのだ。


 私としてはそれくらいの方がくっついていると気持ちいいし、笑顔がとても優しく見えるから好きなんだけど。

 何はともあれ、明日からは夏休み。

 

 これからもお姉様と沢山思い出を作れるといいな。

フ)私の恋はこれからだっ!

サ)お嬢様、それ終わっちゃう奴です。

フ・ク・サ)何はともあれ、ここまでお読み頂きありがとうございました!一学期完結になります!


ク)お姉様のお話しはここまでの予定だったんですよね?

フ)当初はそうね。でも、私達を応援してくれた人がいてとても嬉しかったの。

サ)ですから、もう少しだけお嬢様のお話しにお付き合い頂ければと思います。

ク)次は夏休みのお話しです!


フ)ここまで面白かった、今後も楽しみ!と思って下さったら、ブクマ・評価をお願いします!

フ・ク・サ)それでは、夏休み編でお会いしましょう~!バイバイ!




改めて、ここまでお読み頂きありがとうございました。ブクマ・評価を下さった方々本当にありがとうございます。とても励みになりました。

この後の物語もお楽しみ頂けますと幸いです。

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