三十二話 報奨ゲットだぜ!
「コレヤバッ! メッチャ美味しい! 二人とも食べて食べて!」
「お嬢様、言葉遣いが乱れすぎです。落ち着いて下さい。あ、コレもすごい美味しかったですよ。はい、これをお持ち下さい」
「私のオススメはコレですっ! はいどうぞ、お姉様」
「ん~っ! 幸せっ!」
私、クレア、サラの三人は今王城にいる。
そう、国王陛下がいらっしゃるお城である。
具体的な場所は貴賓室――今日は使う予定がないことと、他にいい場所がなかったから使わせてくれている――になる。
そこでまさに贅の限りを尽くした宮廷料理を頂いているのだ。
給仕をしてくれているメイドさん曰く、こんなに贅沢な料理は王族でも普段は食べていないらしい。
そんなお料理を私は頂いている。
幸せだ。
なんでこうなったのか。
話しを少し戻そう。
キングロックホーンを倒した後の話だ。
キングを倒したのを見届けた後、次に目を覚ましたのはサーマの村だった。
また知らない天井は嫌だなぁと寝返りを打って目を開けると、目の前にクレアの顔があった。
すごくドキドキした。
ちょっと、ちゅ、ちゅー、しそうになった……。
戦いの後、私とクレアは一緒に運ばれて村長の家に運び込まれたらしい。
そして、一足先に目を覚ましたクレアが私の腕や体に回復魔法をかけてくれたんだそうだ。
そして、また魔力が切れてしまったクレアは私と同じベッドで眠ってしまったらしい。
改めて天使のような寝顔だったね。
新たな世界に目覚めてしまう所だったよ。
ベッドから出るとスイフト様がずっと待っていてくれたみたいで、状況を教えてくれた。
アルヴァン殿下を始め、学生も教師も全員生きて帰ってきたらしい。
もちろん全員が無傷というわけには行かないけれど、回復魔法で傷は癒せる範囲のものだったそうだ。
最初に倒したクイーン同様、キングの体はボロボロだったそうだけど、丸ごとサーマの村に運び込んでいた。
角は無傷だし、蹄なんかも色んなものに加工できるから。
毛はほとんどボロボロになってしまって使い道はなさそうだけど、お肉なんかは食べられる程度には残っていた。
体すごい大きかったもんね。
村長の家から出ると教師にお礼と謝罪を受けた。
本来教師達がキングの所に行くべきだったのに、読み間違えて私達をキングの元に向かわせてしまったことへの謝罪だ。
あの時は仕方なかったと思うから、謝罪を受けて終わりにした。
山の浅い方にキングがいるなんて誰も思わないよね。
浅い所までキングが来てしまった理由は、アルヴァン殿下たちが山の奥の方でクイーンを二体倒したというからその報復だったんじゃないかと思う。
実際に、クイーンの断末魔が響いてしばらくしてからキングが現れたというし。
その後、サーマ村で一泊して王都に戻ると、なんやかんやあって報奨を頂くことになった。
アルヴァン殿下の救助とキングロックホーン討伐の報奨だ。
キングロックホーンは滅多に出ることはないけど、確認された場合は正規の騎士団が討伐することになっている。
とはいっても大勢でゾロゾロというわけではなく、十人隊長が率いる部隊が三つ前後で討伐する。
もちろんこの人数には安全マージンが含まれているけど、それでも私達学生が一部隊の人数で討伐したという快挙を達成した。
王子救助の功績と相まって、望んだ物をできるだけ手配してくれると言われたわけだ。
私が望んだのはベルガモット領への物資援助だ。
具体的な物資についてはお父様から要望を上げて貰うことにして了承を頂いた。
ではなぜこんな素晴らしい料理を頂いているかというと、クレアの希望だった。
クレアはジョルジオ様が使って壊れてしまった盾を新しく新調することを望んだんだけど、それだけでは報奨としては不足だったらしい。
クレアに助けられてジョルジオ様の陳情もあり、追加報奨としてこの料理が振る舞われているわけだ。
クレアがジョルジオ様を助けに行かなければジョルジオ様はおそらく死んでしまっていただろうから、それは騎士団にとっても損失だっただろうし。
さらに言うなら、ジョルジオ様がいなければ私たちだけではキングを討伐できなかっただろう。
私達がやられてしまい、いたずらに被害を拡大させたか、撤退してもサーマ村に多大な被害が出ていただろうことは容易に想像できる。
そんなわけで、討伐の翌日が休暇となっていたのを利用して、私達三人を豪華お食事会にご招待頂き、王城見学ツアーまで開催して頂く運びとなったのである。
私とサラは王城に行くことになると知ってビクビクしていけれど、クレアはなぜか堂々していた。
さすが主人公である。
「ふぅ~。お腹いっぱ~い! もう食べられないよ~」
「今日は私も、自制が効きませんでした。お嬢様のことを言えませんね」
「お姉様、食後のデザートはどうしますか? ケーキとフルーツの盛り合わせがあるみたいですよ」
「あ、両方食べる~。スイーツは別腹だし~」
「お嬢様……。正気、ですか?」
しっかりと両方完食した私達は紅茶を飲みながら少し休んだ後、腹ごなしに王城見学ツアーに出かける。
最初に向かったのは庭園だ。
そこには色とりどりの花が咲き乱れていた。
私が見たこともないような花や木が沢山あった。
クレアは食事よりもこの庭園を気に入ったようだ。
他にも書庫や騎士団の駐屯所や訓練場にも行った。
訓練場ではジョルジオ様が訓練をされていた。
まだ学生にも関わらず、騎士団の方たちと模擬試合をして連戦連勝されていた。
プレイヤーキャラ最強の名は伊達じゃない。
模擬試合や訓練を眺めていたらジョルジオ様に発見されてしまった。
そりゃ女三人は場違いなことこの上ないのだから目立つか。
「フロストにクレアじゃないか! なんだ? 訓練するのか?」
「いえ、そういうわけでは……」
「そういえば王城で料理を振る舞ってもらうことを望んでいたんだったな! それで、そちらは?」
「わたくし付きのメイドでサラと申します。今後お目にかかることはそう多くないとは思いますが、お見知りおき頂ければと」
「そうか。それにしても今日はやに態度が固いな! あれほど激しい戦いを生き残った仲間同士だというのに! まぁそれは良いとして、サラと言ったな。君は良い主人を持った。これからもフロストを支えてやってくれ」
「私の人生をかけて」
余談だけど、この後サラは終始ご機嫌でジョルジオ様をやたらと褒めていた。
他にも案内されたけど、特に印象に残るものはなく、私達の王城見学ツアーは終わった。
なお、このツアーのガイドはアルヴァン殿下だった。
彼はしきりにクレアに話しかけていたけど、クレアにはスルーされていた。
おい、王子をスルーして大丈夫か……。
でも、なんだろう? いつかみたいにまた違和感を感じたんだよね。
なんか、クレア個人をちゃんと見てない気がするっていうか……。
クレアもそれを感じ取っていたのかもしれない。
まぁ下手な勘ぐりは止めておこう。
どうにかできるような身分の人でもないし。
寮に戻ってクレアと別れると、私はすぐに部屋でダラける。
魔物討伐が始まってからずっと大変だった。
ようやく心と体を休められる。
そう思って、魔物討伐期間中にあったことを全部サラへと話し始めた。
それで、忙しさや大変さを理由に思い出さないようにしていた事実を思い出してしまう。
スイフト様とアニー様のことを。
きっと二人は思い合ってる。
二人とも私にとって大事な人だ。
だから、私は何もなかったように今まで通りに二人と接するんだ。
蓋をして、忘れてしまおう。
この気持ちを。
……。
…………。
忘れられるわけ、ないじゃんっ!
好きなんだっ!
太ったからって見捨てられたり、貴族の令息令嬢からは相手にされなかったりした私を、普通に扱ってくれた!
商売の話しで盛り上がって、もっと話していたい、一緒にいたいって言ってくれた!
優しくしてくれた!
そんな人、クレアとスイフト様とアニー様とハナビス様、部隊のみんなしかいなかったじゃん……。
みんなが大好きだよ……。
その部隊のきっかけになったのが、スイフト様とアニー様なんだよ……。
私をみんなと繋いでくれた大切な二人……。
なのに、なのに、こんなのってないよ……。
二人とも、大好きだから……。
涙が止まらない。
私はサラに自分の思いを全部打ち明けて、抱きしめられながら泣き明かした。




