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一〇八話 意図と戦況

 あ、そうか。

 銀杯の戦力を大幅に削ってしまったら、後は黒剣と白盾の一騎打ちに近い状態になってしまうんだ。

 だけど、黒剣は生徒の層が厚いとは言えない。

 対して白盾はAクラスの生徒数も中位魔法を使える生徒数も一番多い。


 今までの試合で唯一Aクラス生徒が失格になっているけど、それでもまだ五人も残ってる。

 中位魔法が使える生徒もまだまだいるのだと思う。


 黒剣のAクラス生徒には、魔法が得意な方が少ない。

 スイフト様しかり、ハナビス様しかり、ジョルジオ様しかり。


 白盾は殿下、マリアンヌ様、スージー様、ロラン様と全員が中位魔法を使える。

 黒剣と白盾の一騎打ちになった時、天秤が少しでも白盾に傾けば黒剣が覆すのは難しくなる。

 だから、今回の試合でAクラスの生徒を倒すか、大きく戦力を削りたいのかもしれない。


「僕達も白盾を攻めよう。黒剣の弾幕に合わせて移動するんだ。カーイとセッツにはモロック様を任せる。彼が一人突出しているから、守りの要は彼で間違いないはずだ。頼んだよ」


 Cクラスの生徒とAクラスの生徒には、その実力に確かな隔たりがある。

 いくら二人掛かりとはいえ、普通の生徒なら時間稼ぎになるかどうかも怪しい。


 カーイ様、セッツ様のお二人は魔法を使えず、個々の実力は然程でもない。

 普通なら返討ちに合ってしまってもおかしくないのだけど、このお二人はバディで戦うことでその実力が何倍にも跳ね上がるから、勝算は十分にある。


 その秘密は、独特の戦い方に起因する。

 お二人が使用する武器は、ショートソードを両手に持つ二刀流スタイル。


 サラも二刀流を使うけど、二刀流というのは余程習熟していないと手数は多くなるものの、一撃の威力は低く、防御は受け流しの技術が無ければ貧弱というとても中途半端、というよりバランスの悪いスタイルなんだそうだ。


 なかなかにクセのあるスタイルと言えるけど、お二人が一緒に戦うことで欠点は強みに変わる。


 というのも、双子であるお二人のコンビネーションの素晴らしさはちょっと理解しがたいほどで、初めて見た時はもはや曲芸だなぁって感想を持ってしまったほどだった。


 だってさ? お二人は攻守が巧みに入れ替わって、二刀流が二人いるっていうより、一人が四刀流を使ってるの!? ってくらいめちゃくちゃな動きをするんだよ!


 一人が二本の剣で攻めて、もう一人が二本の剣で相手の攻撃から守る。

 かと思ってたら、いつの間にか攻めていた方が守りになって、守っていた方が攻めているという見てるこっちが混乱してしまう感じなの!


 初めて戦う人はもっと訳が分からないよ! ってなると思う!

 リズ先輩だって、二体一の訓練では時々負けてしまっていたそうだから。


 まぁ、クラス分けは個人の実力で行われるから、万年Cクラスらしいのだけど


「おう、任せろ」

「タイミングはどうする?」


 カーイ様が返事をし、セッツ様がエリック様に問う。


「フローレンシアちゃん、二人にアクセルを両足それぞれに一回分掛けるのにどれくらい時間かかる?」


「お二人で七、八分程でしょうか」


「それなら、片足に一回ずつでいい。三分でお願い。

 その後は僕と一緒にできるだけわかりやすく魔法を発動させて」


「……やってみますわ」


 指揮官は無理難題をおっしゃる!

 自分に掛けるのはイメージがつけやすいのだけど、人に掛けるとなると全然勝手が違うっていうのに!


 ただまぁ私が魔法戦に参加しなければ、何か企んでるって思われる可能性もあるから長い時間は掛けられないってことなのかな?

 何もしないってのも、逆に目立つ時があるもんね。


「クレアちゃん、残りのホーリーシールドは僕と姉貴の分だけだよね?」


 詠唱中のため、コクリと頷くクレア。


「僕には掛けなくていい。姉貴にホーリーシールドを掛けたら、待機。魔法がこっちに来たら防いで」


 再度、力強く頷くクレア。


「姉貴は……僕が何言っても無駄だろうけど、せめてホーリーシールドを掛けて貰って、戦況を見てから行動してくれよ」


「きゅ~るりん☆」



 私達が行動方針を固めている間に、次の魔法攻撃が始まろうとしていた。

 白盾はどう動くだろう?


 このまま銀杯を狙い続けるのか、それとも黒剣に狙いを変えるか。

 あるいは迎撃に集中して、様子見するのか。


 その答えは黒剣に狙いを変えて攻撃する、だった。


 放たれた魔法は四つ。

 さっき私達を狙った時より数が少ないのは、白盾も黒剣の動きが読めないから、黒剣の行動にすぐ対処できるように温存しているのかも。


 対して黒剣が取った行動はチーム全体が前に出ること。

 んん!? 山なりに放たれた魔法を潜ろうっていうこと!?

 しかも先読みしていて魔法が発動される前に行動していた!?


 多少の被弾は覚悟のようで、魔法を魔法で相殺することはしないみたいだ。

 盾を持っている生徒を先頭に、黒剣は白盾との距離を少しだけ詰める。


 結果、二人の生徒が魔法の直撃を受けてしまったみたいだけど統制が乱れることは無く、白盾の魔法が途切れた所で黒剣の生徒四人が詠唱を開始して、白盾に向かって魔法で反撃を行う。


 白盾は三人でこれを迎撃して、残り一発はモロック様が後衛を守る形で凌ぎきる。

 迎撃が三人だったのは次の攻撃のために温存したんだろうか?

 後ろで指揮を取っているだろうマリアンヌ様の考えもまた、読むことはできない。



「今度は白盾との距離を詰めた!? くっ、また予想外の行動だ!!

 でもこれで黒剣の狙いは明確だ。黒剣の狙いは白盾! 僕達はさっきの方針通りに行動する!」


「ホーリーシールド掛け終わりました!」


「フローレンシアちゃん、アクセルは!?」


「カーイ様分は終わりました。セッツ様はもう少し……」


「……白盾が次に魔法が発動したらその隙にカーイだけ先に突撃。

 セッツはアクセルが掛けられ次第カーイを追って」


「「オーケー」」


「ウチが先に行くきゅるり~ん!!」


「ばっ! 姉貴、いくらなんでも早いって!! カーイ、作戦変更! 僕が合図するまで突撃は待ってくれ!」


 エリック様の言葉など関係なく走り出してしまうエリーゼ様。


 身内の行動に私達が動揺している間に、白盾は次の行動を起こしていた。

 またしても三人で魔法を発動させたのだ。


 全員で攻撃をしないのは先程三人を温存させていたから行動が早かったというのと、エリーゼ様が白盾に向かって走り出したことにすぐに気づいたからかな?


 白盾は一度黒剣を牽制しつつ、エリーゼ様を迎撃する準備を整えるつもりなんじゃないだろうか。


 しかしまぁエリーゼ様の単騎突撃には困ったものだ……。

 一人で走って敵陣に向かうなんて、良い的でしかないっていうのに……。


 とはいえ白盾は黒剣と銀杯の動き、どちらにも意識を割かなくてはいけない状況になっている。

 この流れは銀杯にとってそう悪い状況ではない、かな?


 エリーゼ様が動くタイミングこそ早かったものの、カーイ様、セッツ様が時間差で飛び出して行けば、白盾の迎撃に迷いが生まれて攻撃が分散し、結果的にお三方が白盾に辿り着きやすくなる可能性は上がる気がする。




 私が色々と考えている間に、スイフト様が指示を出し、黒剣は白盾の魔法に対して迎撃行動を取った。

 今回は黒剣も魔法を発動して相殺を狙ったのだ。

 狙い通り相殺に成功し、さらに迎撃に参加しなかった生徒が逆に魔法で攻撃を仕掛けようとして……。


 へっ!?


 通常の魔法とは一線を画すスピードで白盾から赤い光が放たれ、魔法を発動しようとしていた生徒に直撃し、吹き飛ばした。


 あれは……ロラン様の詠唱変化させたファイヤアロー!?


 直撃した生徒の護石は破壊されたわけではないけれど、距離が離れているにも関わらず、あの吹き飛び方はかなりのダメージがあったんじゃない!?


 正直、詠唱変化させたとはいえ下位魔法であの威力と速さは両立させるのはちょっとおかしくて、詠唱変化を二つも取り入れた場合、下位魔法だったら四発、下手したら五発分近い魔力を消費するはずだ。

 中位魔法程ではないとはいえ、序盤であの魔法は少々魔力の使い方が贅沢すぎる。


 まぁ、あんな魔法が飛んでくるとわかったら不用意な行動は取り辛くなる。

 牽制として、そこまでする価値はあるかもしれないか。

 実際、さすがのスイフト様もこの魔法には驚きを隠せていなかったし。



 ん~でもなんだろう?

 今のロラン様の魔法もそうだし、黒剣の行動もなんか、納得し辛いっていうか、全体的に違和感があるんだよなぁ。



「カーイ、白盾に突撃! セッツもフローレンシアちゃんのアクセルが掛かったらすぐに追って!」


「先に行ってるぜ、セッツ」

「あぁ、俺もすぐに行く」


 カーイ様が飛び出し、アクセルの効果で六〇メートル以上を一気に進む。

 私より明らかに一歩の距離が長い……。


 さすが前衛というべきか、それとも私が……。

 デデデデ、デブちゃうわっ!!


 カーイ様はその後もアクセルの勢いを殺さずに走って、あっという間にエリーゼ様の右後方まで追いついた。

 セッツ様が合流していないからか、カーイ様がエリーゼ様に声をかけたようで、走るスピードを緩めた。


 白盾までの距離が二〇〇メートルほどに迫った所で、白盾の迎撃行動が始まる。

 まずはモロック様が二人の接近を防ぐためか、一〇メートル程前へ出る。


 その後方から、エリーゼ様とカーイ様目掛けて魔法が放たれた。

 先程まで黒剣に放っていたような山なりの軌道ではなく、低く直線的な物に変わり、らにさ少しずつテンポをずらしてだ。


 まだ距離があるからか、カーイ様が合流して狙いが定まらなくなったからか。

 お二人はジグザグに移動しながら、次々と放たれる魔法を避けながら進むことが出来ている。


「セッツ様、準備できました」


「サンキュー! それじゃ、行くぜ!」


 セッツ様もカーイ様と同様、一気に六〇メートルほどをアクセルの効果で進み、勢いそのままに走る。

 カーイ様と違って、セッツ様はお二人に追いつくまで全力で走った。


 白盾の魔法攻撃の最中、無事にセッツ様も合流され、三人はエリーゼ様を先頭に、カーイ様、セッツ様の並びで斜めに並びながら白盾へと突撃していった。


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