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一〇六話 思てたんとちがう

 断崖のダンジョンの入り口は、河川跡地の一角にぽっかりと空いた穴の中に存在していた。

 地下室に向かうような階段があって、階段を降りきった後は整備された通路になっている。


 既知の非活性ダンジョンで、有用な資源が取れるから整備されているらしい。

 通路はさほど長くなく、すぐに通路の先に光が見える。


 二学期の最初に向かった始まりのダンジョンと同じく不思議空間で繋がっていて、全く違う場所に出るのだと思う。

 あの時は何も知らなかったからただただ驚いたけど、今回はどんな光景が広がっているのか、ゲームでなんとなくは知っていても割と楽しみである。


 通路を抜けると、砂浜と奥に海が広がっていた。

 空は青く、砂浜の白と海の青に光が反射して、とても素敵な光景に目を奪われる。


 ダンジョンだから外海に繋がっているとは思えないし、正確には海ではないかもしれないけど。

 とはいえその光景は美しく、感動のままグルリと周囲を見渡して後方を見ればギョッとする。


 後方、ダンジョンの入り口がある方向には崖がそびえ立っている。

 かなりの高さがあり、首が痛くなるほどでとても登れそうもない、想像していた以上の、まさに断崖絶壁だ。

 ゲームではここまでの崖はイメージできなかったし、海もなかったはずだけど戦いとなるフィールドは概ね予想通りといった所。


 正気に戻って周囲を見渡せば、既に白盾は一か所に集まっている。

 予想通りに第二試合の生徒にマリアンヌ様を加えた八人のようで、それぞれに準備をしているみたいだ。


 私達銀杯は二番目に入っており、黒剣のためにも入り口にいては邪魔だろうと場所を移動して入り口を空ける。


 このダンジョンは他の皆様も初めてのようなので、周囲を全員で観察する。

 基本的な作戦は決まっているけど、戦闘の最中、咄嗟の判断をするためにも少しでも情報があるに越したことはない。


 正直、黒剣が三番手で良かったなと思う。

 スイフト様は作戦立案、指揮がとても優秀な方である。

 こういった誰も知らない場所でスイフト様の情報収集、考える時間が減ってくれるのは、ある意味それだけでメリットじゃないだろうか。


 まぁ敵のことより、自分達のこと。

 エリック様を中心に、私達は周囲を観察して気づいたことを確認し合う。

 試合開始までさほど時間はないので、基本的にはダンジョンに入るまでに考えた作戦を実行するわけだけど、ここで気づいたことを作戦に組み込みブラッシュアップすることは重要だ。


 例えば、思ったより砂に足を取られて素早く動けそうにない、風はほぼ無風などを確認して、作戦に影響はないかなどを確認し合う。


「この崖を登るのは普通に考えて無理だね。上に登られて一方的に魔法を撃たれるようなことにはならなそうだ」


 このフィールド、基本的には崖を背にして戦うのがセオリーのように思える。

 障害物がなく、開けた場所では魔法の撃ち合いが開幕から起こりやすい。


 魔法同士がぶつかり合って視界が悪くなることはたまにあるのだけど、開けた場所だとその隙に周りこまれることも警戒しなくちゃいけない。

 でも、崖を背にすれば少なくとも後方の警戒しないで済む。


 当然なんだけど、三チームすべてがこのセオリーに従うことはできない。

 三チームが一直線に並んでしまったら、一チームだけ他の二チームから挟まれる形になって、集中狙いをされてしまうから。

 なので、普通に考えれば試合開始前に与えられる移動時間が重要となる。


「あっちの海の所まで行けるのかな? 海なんて滅多に見れないし、時間があればあっちまで行ってみたいね」


 にも関わらず、エリック様は崖を背にすることを否定した。

 これはもちろん事前の作戦通りなので、否やはない。


 エリック様の言葉を聞いたシャード家の双子でいらっしゃるカーイ様とセッツ様がクレアちゃんの水着がみたーいなどと言っている。

 クレアが困り顔だったので、お二人には私がめっ! と言っておいた。




 最後に黒剣がダンジョンへと入って来る。

 私はそれを見て、驚愕する。


 人数が八人ではなく、七人だったのだ。

 その中に、ほぼ間違いなく出場してくると考えていたハナビス様の姿が無かった。


「ん? 黒剣はなんだか少ないきゅるりん?」


「……一体どういうことなんだ? ハナビスってあの一年生がエースだろう?」


「あの……ハナビスさんが居ないのなら、試合が楽になるんじゃないんですか?」


「接近戦での脅威は減るよ……それどころか、接近戦だけなら僕達の方が有利かもしれない。でも、それじゃあ僕達の作戦は成り立たなくなる。何より、黒剣の狙いが見えない」


「……ハナビス様を意識し過ぎて予想できませんでしたけど、黒剣も魔法戦主体で来るのでしょうか……」


「だとしたら、最悪だ。今回のメンバー選定は完全に裏目に出た」


「そう……ですね……」


 第四試合の銀杯の狙い。

 簡単に言ってしまうと、乱戦を作ってしまおうと言うものだった。


 第三試合は完全に銀杯が狙われていたけれど、第四試合も引き続き狙われる可能性は十分にある。


 白盾は魔法を中心で、黒剣はハナビス様を中心に、接近戦と魔法をバランスよく取り入れて攻めてくる。

 そんな風に予想していた。


 だから、序盤はクレアの魔法を中心に防御を固めて魔法を防ぐ。

 守るだけではジリ貧だから、隙を見て、私がアクセルで白盾に詰め寄って混乱させる。


 ハナビス様が銀杯に攻めて来たのであれば、エリック様達が混乱させた白盾側に逃げればおのずとハナビス様もついてくる可能性は十分にある。

 そうなれば黒剣もハナビス様を援護せざるをえないので乱戦ができあがり! という寸法である。


 これなら銀杯だけ戦力を消耗することはなく、三チームに消耗を強いて痛み分けにできるという作戦だった。

 ちなみに、私とクレアは今後の試合も考えて、危なくなったらアクセルと光の翼で逃げる手筈になっていた。


 希望的観測であるのは否めないけど、ハナビス様は魔法が使えず、しかも接近戦は無類の強さを誇る。

 そんなハナビス様を作戦の中心に据えるはずだと思っていた。

 ワンチャン最初から白盾狙いで黒剣が接近戦を仕掛ける可能性もなくはないわけで、その時はハナビス様に追従するだけでよかった。


 ハナビス様の援護はしないで、ハナビス様が自由に行動するってパターンも想定していた。

 その場合はハナビス様を集中的に狙えばいい。

 ハナビス様を倒せるなら、多少の犠牲どころか半壊になっても釣り合いが取れるくらいだと思う。


 そんなこんなでハナビス様を巻き込むことを前提に考えていたから、作戦自体が崩壊というわけだ。



 さらに悪いことは、ハナビス様が出場しないという事は黒剣も魔法戦主体の方針かもしれないことだ。

 銀杯は接近戦に備えてメンバーを選出しているので、これが完全に裏目に出てしまっているのだ。



 今回のフィールドは遮蔽物がなく、開けた場所。

 状況を総合して言えることは、開けた場所のセオリー通り、少なくとも序盤は魔法が中心の試合になるということ。


 魔法戦に付き合わなければならない状況に追い込まれてしまった銀杯は、かなり不利だ。

 魔法戦で一番重要なのは、魔法が使える人数なのだから。

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