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一〇五話 策をめぐらせろ

 第三試合が終わり、銀杯のみんなでリータ様達を出迎える。

 リータ様を始め、出場した皆さまは項垂(うなだ)れて暗い表情をしていた。


 それも、仕方のないことだと思う。

 銀杯は前評判をものともせず第一試合、第二試合と誰一人失格になることなく試合を終えた。

 そこから、第三試合は五人も失格者を出してしまい、人数差はまた逆転してしまったのだ。


「……すいま「よくやった」……え?」


「第三試合は銀杯があからさまに狙われていた。それなのに、中位魔法を使えるルーリーを逃がしてくれたことはチームとして助かった。特に、最後白盾に狙われた時の作戦は良かったぜ」


「そうだね。リータ様を指揮官にして正解だったと僕も思うよ」


 リータ様の言葉に、エド先輩が割って入り、エリック様も続けざまに褒める。


「……そんな……僕は……」


「自分を卑下するんじゃねぇ。実際、白盾に囲まれた時点で詰んだとオレは思った。だが、お前はそれをひっくり返したんだ。自分を誇れ」


「っは、はい!」


「よかったね、リータ」


 涙ぐむリータ様とリータ様の肩に手を置くフレン様。

 実際、リータ様の作戦は相手の意表を突く良い作戦だった。


 フレン様達が黒剣の護石を一つ破壊した後、リータ様達は広場へと戻った。

 南東エリアに隠れるという選択肢もないこともなかったけど、黒剣は隠れていないか探し回りながら移動していたので、この判断は結果的に間違ってはいなかったと思う。


 今回のフィールドは四つのエリアを分断するように高い壁があったから、別のエリアに移動するためには広場を通るしかない。


 だけど、広場には白盾が待ち構えていた。

 銀杯が逃げるのを防ぐためと、黒剣を待ち受けるという二段構えの布陣であったのだと思う。


 リータ様は白盾が広場にいる可能性に薄々感づいていたみたいに見えたけど、堂々と待ち構えられていてはどうしようもない。

 ぐずぐずしていては黒剣が追って来て、挟み撃ちにされて一網打尽にされてしまうのだから。


 広場に戻ったリータ様が取った作戦は、まさに死中に活を求めるかのような物だった。

 きっと、全員助かることは不可能だと考えたのだろう。


 作戦の内容はルーリー様がフラッドという大量の水を発生させ押し流す魔法を自身を中心に放ち、その勢いで別のエリアに逃げ込むという物。

 リータ様ともう一人の生徒は、その時間を稼ぐために魔法で弾幕を張ったのだ。


 これには殿下を始めとした白盾も呆気にとられただろう。

 お二人はやられてしまったけれど、ルーリー様は無事に逃げ出すことに成功した。


 まぁそんな作戦中々思いつかないよね。

 全滅する前にそんな作戦を思いつくなんて、さすがだなと私も思った。


 最初は暗い雰囲気だったけれど、エド先輩とエリック様の言葉で雰囲気は悪くなくなっていた。

 その後は私達は第四試合のメンバーを選定するために引き上げるのだけど……。


 うつむいたまま動かないアニー様の姿が、私の目に映った。




「次の試合だが、マリアンヌ嬢が第三試合に出なかったってことは、次の試合に出るんだろうな。これは、フロスト対策か?」


「あぁ、多分そうだろうね。マリアンヌ様とロラン様を中心に、白盾は第四試合を魔法戦を主体に仕掛けて来るんじゃないかな?」


「フィールドを考えるとわたくしも同じ意見です。でも、そうなると事前に考えていた魔法で優位を取れるかもという考えは台無しですね」


 今はエド先輩、エリック様、私の三人で作戦会議中である。

 リータ様も参加するとおっしゃっていたけど、エリック様がさすがに休むように言って不参加になった。


 次の試合までの時間は限られているので、お昼を食べながらなのである。

 食事はゆっくりと楽しみたいんだけどなぁ。


 ちなみに、次のフィールドは第三試合が終わってすぐに教師から伝えられた。

 場所は、断崖のダンジョン。

 ゲームのフィールドとほぼ同じであり、私の想定通りである。


 断崖のダンジョンは非活性ダンジョンという、魔物を一度倒してしまえばその後はしばらくの間は魔物が現れないというダンジョンで、教師が試合前に掃討する予定になっているから比較的安全だ。


 その形状は、名が表すように断崖が三キロに渡って続いている場所らしい。

 崖には数か所人が通れる程の穴が空いていて、その奥に貴重な資源があるのだとか。

 断崖の高さは五十メートル近くを誇っているらしい。


 これを登るのは、普通の人には無理無理。

 まぁ普通じゃない人が黒剣にはいるのだけれども。


 例外は除くとして、崖の上に登れないのであれば地上での魔法戦が主体になるだろうと予測していた。

 なので、クレアに防御を一任して中位魔法が使える二年生の方と私を中心に魔法戦で有利、最悪でも五分にして戦うつもりだったんだけど……。

 中位魔法が使えて魔力量も多いらしいマリアンヌ様が第四試合に参加することで、やや不利か良くて五分になってしまったと思う。


「フロストとクレアは事前のプラン通りに参戦確定だ。その上で、オレとリズが出るか、エリックとエリーゼが出るか。

 俺達全員が出ないって手もあるにはあるが、リータの頑張りを無駄にしないためにも、この試合は出来るだけ被害を抑えるか、相手の戦力を削っておきたい」


「第五試合を考えると、エド達は出るべきじゃないと思う。だけどまぁ、僕らが出ても魔法は姉貴も僕も得意じゃないからね。フローレンシアちゃんの考えはどうだい?」


「第二試合の様子は全体を見れてないからわかりませんけど、黒剣にはさほど強力な魔法の使い手はいらっしゃらない印象です。第三試合でメンバー変更はなく、ハナビス様もいらっしゃいますし、黒剣は積極的に接近戦を仕掛けて来るのでは? と思っているのですが……」


「それなら僕達が出て指揮する意味もあるか。それじゃエド、今回は僕達に任せてもらおうか」


「わかった。他のメンバーはどうする?」


「フローレンシアちゃんに魔法戦を任せることになるけど、何か要望はあるかい?」


「特別な要望は特にありません。第五試合との人数の兼ね合いをどうするか、でしょうか」


「第三試合はマリアンヌ様を覗けばそのまま白盾も黒剣も第一試合の生徒がそのまま出場しているから、第四試合も第二試合の生徒がそのまま出てくる可能性が高いかな。となると、どちらも八人。

 僕達もそれに合わせることはできるけど、第五試合の人数が五人になるのはちょっと厳しいね。

 最悪、白盾と黒剣が人数の振り分けを変えてきて第五試合に人数を回した場合、第五試合の人数差はかなり厳しくなるよ」


 第三試合はルーリー様を生存させてくれたのは大きいけど、やはり人数が一気に減ったので今後の見通しが悪くなったのは間違いない。


「そうですね……でしたら、魔法戦は私とクレアを含めて三人にして下さい。

 これでも魔力量には自信がありますから三人でもなんとかしてみせます。その代わりと言ってはなんですが、二年生に水属性の中位魔法を使える方がいらっしゃったと思いますので、その方には参加して頂けないかと」


 第三試合で中位魔法が使える人が二人出てしまったから、銀杯にはエド先輩を除くとその方しか中位魔法を使える方は残っていない。


「バディを崩すのは失格にでもならねぇ限り、オレは賛成しねぇな」


「エド先輩のおっしゃることもわかりますけど……。わたくしとクレアの二人だけでは耐えるだけが精一杯になってしまいます……」


 武闘会のチームが決まってから二週間しか合同で訓練をする時間はなく、練度が高いとは言い難い。

 けど、バディはずっと長く訓練を共にしているから練度が高いのだ。

 最低でも二学期が始まってからの数ヶ月、長いバディならエド先輩とリズ先輩、エリック様とエリーゼ様みたいに一年生からずっと訓練を共にしてきている人達もいる。


「う~ん……あ、ちょっと待って……。いや、うん……黒剣のハナビスって生徒がエース……なら、接近戦で勝負に来る可能性は十分にあるし……耐えるだけでもできれば十分なんじゃ?

 えっと、第四試合はちょっとアイデアが思い付きそうなんだ。スマートじゃないけど、第四試合も僕達銀杯が狙われる可能性は十分にあるし、この試合を僕らで掻き回してみないかい?」


「まぁ! 何だかわかりませんけど、面白そうですね!」


「エリック、まずは人選を先に決めねぇとアイデアとやらも無駄になるぞ?」


「接近戦の方はエリーゼ様もいらっしゃいますし、人選はエリック様にお任せします」


「う~ん、それならシャード兄弟に参加してもらおう。僕と姉貴、シャード兄弟も双子だからね。とっておきのコンビネーションを見せつけてやろうかな」


 エリック様は悪戯っ子のように笑ってそう言った。

 なんだかちょっとカッコ頼もしい。

 そう思ったから、つい口出てしまった。


「はい。エリック様のこと頼りにしていますわ」


「えっ!? あっ、あ、うん! が、頑張るよ!」


「よし、大枠は決まったな。次はエリックのアイデアとやらを煮詰めるか」


 その後も話し合いは試合開始直前まで及んだのだった。

ク)第四試合はしばらく週一で、毎週日曜日更新となります

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