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九十一話 第二試合は無詠唱魔法を添えて

 第二試合のフィールドであるリリオ渓流は、リリオ山の各所から湧き出る水がいくつかの小さな川を作り、それらが合流した、流れが早く、水量も多い渓流だ。

 上流へいけば小さな滝や川がいくつかあり、リリオ渓流全体は背の高い木々が生い茂っている。


 教師は渓流を中心に左右分断するような位置に結界を張っているようだった。

 フィールド全体での渓流と森の割合は、上流の滝や川を含めて水辺が三割、森が七割くらいになるだろうか。

 試合のフィールドとしては全体的に視界が悪く、部隊行動するにはなかなかに骨が折れるフィールドである。


 だからこそ、三人で出場する私達に付け入る隙がある。




 教師が結界を張り終わった。

 最初の五分間は自由に移動してから開始となるようだ。

 もちろん、その間は攻撃禁止になる。


「作戦通り、川の上流に沿って移動しながら目的の場所を探しましょう。

 クレアは私と行動、ボブ様は周囲の地形を確認しつつ単独で進んで下さい。

 目的の場所が見つかればすぐに準備をしましょう」


「「了解」」


 私達は早速移動を開始する。

 同じ方向に白盾や黒剣が来たらいきなり作戦が破綻する所だったけど、両チームは川を挟んで反対方向に移動を始めた。


 私達は作戦の条件に合う滝を見つけることが最初の目的である。

 条件とは、私とクレアが滝の裏に隠れるスペースがあることと、木々の間から滝に向かって光が差し込んでる場所であることだ。


 後者は難しい条件じゃないけど、前者に当てはまる場所があるかはかなり不安である。

 最悪、びしょ濡れになることも覚悟しなきゃいけないけど、制服でそんな目に合いたくないんだよね。




 五分が立ち、結界が光を放って試合開始の合図となった。

 川沿いに移動していて、正直私とクレアの進む速度はそれほど早くない。

 ボブ様はスイスイと進んでいらしたから、目的の場所を先に見つけてくれているといいのだけど……。


 後は、白盾と黒剣がどう展開してくるかが問題だね。

 第一試合の高原と違って、木々が生い茂っているから射線は通りずらい。

 だから、遠距離から魔法の撃ち合いが主軸なんてことにはならないと思う。


 川沿いはそれなりに開けているから、射線が通って中距離戦が主軸になる可能性はある。

 一〇人全員で戦おうと思ったら、森の中よりは川沿いの方が行動しやすいし、川を挟めば二チームが撃ち合いをするには十分なスペースもあるのだから。


 魔法の撃ち合いになったら、護石の耐久的に中位魔法を当てればほぼ破壊できる。

 中距離であれば直撃も狙えないことはない。


 当然、お互いそれをさせまいと妨害したり、下位魔法で防ぐことになる。

 ここで問題は一人の生徒が中位魔法を撃てる回数には限りがあり、その生徒も多くないことだ。

 そうなると無駄撃ちはお互い避けたいだろうから、魔法の撃ち合いにはならない可能性は高いんじゃないかな。


 となると、森の中で少人数同士の接近戦が主体となるんじゃないかって私は予想している。

 で、狙われやすいのは三人しかいない私達、銀杯になる可能性がもっとも高い。

 バディ単位の二人もしくは四人のグループを作って虱潰しに探し、見つけ次第全員でフルボッコ。

 うん、あると思います。


 ま、そんなことをさせない自信があるから三人で出場しているわけだけど。

 でもなぁ……ハナビス様、スイフト様、ロラン様は私のことを良く知っているだよなぁ。

 だから、私が考えているようなな展開にならない気もするんだよなぁ……。


 いやいや、考えたって仕方ない!

 私達は私達の作戦を完遂するとしましょう!




 しばらくクレアと二人で川を上って目的の場所を探していると、ボブ様が戻ってきた。

 どうやら条件に合う場所を見つけてくれたようだ。

 結界を見ると、すでに試合開始から一五分が経過しようとしていた。


 急いで目的の場所へと向かう。

 そこはいくつもの川が合流する前の、森の入り口に少しだけ入った所にある水量の多い滝だった。

 木々の間からは太陽の光が差し込み、滝つぼの水面を照らしている。

 条件に合っていることを確認して、私達は準備を進める。


 引き続き、ボブ様には次の目的地である木々がなるべく少ない所を探してもらい、見つけた後は敵に見つからないように、かつ私達と合流できそうな位置で潜んでいてもらうよう指示した。


「クレア、準備はいい?」


「はい、問題ありません! 確認お願いできますか?」


「ん、おっけー!

 それじゃ今度は私ね」


 クレアが発動した無詠唱魔法の光が意図した通りになっているのを確認し、今度は私が無詠唱魔法を発動するため、意識を集中させる。


 ――風探査(ソナー)


 潜水艦が水中で超音波? を出して周囲の状況を確認していそうなアレではない。

 いや、そこからヒントどころか名称も貰っているわけだけれども。


 新しく使えるようになったソナーという無詠唱魔法は、全く新しい魔法ではなく既存の無詠唱魔法を改良発展させたものだ。

 一から無詠唱魔法を作るのはすっごく時間がかかるからね。


 なんの魔法を改良発展させたかというと、盗み聞きの無詠唱魔法がベースになっている。

 元々は誰かが喋っている内容を、風で音の振動を再現することで私だけが聞こえるようにする魔法だった。


 ざっくり言うと、それを広範囲化させたのがソナーである。

 とまぁ全方位、広範囲にそんなことをしたら一発で魔力が枯れ果てるので、色々と調整はしてある。


 ソナーの原理は、まず私を中心として微細の風を周囲に発生させる。

 そして、その風が一定の大きさの振動を受けた時、その場所の振動を私の耳元で再現させるという物だ。


 ぶっちゃけ精度は悪く、欠点も多い。

 改善の余地は多いにあるのだけど、武闘会までに理想の形にはできなかった。


 まず距離。

 私を中心にして約二〇〇メートルちょっとが有効距離になる。

 ぶっちゃけ索敵として使用するなら、普通に目で確認した方が色々早い。

 ただ、今回のように森で視界が悪いのなら使いようはある。


 次に精度。

 なんて表現するのが正しいのかよくわからないけど、音が粗い。

 全方位、広範囲に広げる関係上、振動で音を再現する精度がとても悪く、人が普通に話す内容はほとんど再現できなくて、単語レベルでちょっとわかると言ったくらいだ。

 その上、意図しない音を拾ってしまうこともある。

 例えば動物の鳴き声とか……。


 後は振動を再現できる回数。

 微細な風に乗せられる魔力量的に、振動の再現は三回が限界だ。

 最悪なパターンとして、動物の鳴き声を三つ拾って効果が終わるということもある。


 最後に、密室では使えない。

 私を中心に微細な風を発生させる関係上、屋内だとどうしようもない。

 さらにいうと、今見つけた滝の裏は岩になっているので、滝裏に隠れると後方の索敵はできない。

 なので、今は滝のすぐ横でソナーを発動させている。


 魔力をもっと込めれば色々と改善できる気もするけど、無詠唱魔法に必要なイメージに費やす時間が多くなるし、索敵の魔法に中位魔法並みの魔力量を込めるのも馬鹿らしい。

 下位魔法より少し多いくらいの魔力量で発動できてるけど、もう少し魔力量を減らせたらなとは思う。


 色々と問題はあるものの、今いる森のように木が多く、障害物があるような場所でも実用に耐えうることは確認できている。

 なので、定期的にソナーを発動させることで、視界の悪い森の中でも私達の方が先に敵の存在に気付ける確率は高くなるはずだ。


「うん。今の所周囲には誰もいなさそう。

 川を素直に上ってくるような人達はいないと思うけど、念のため警戒は怠らないでね」


「わかりました!」


 消費魔力も考えて、ソナーは五分に一回発動させる。

 本当は索敵はもっと小まめに行いたいのだけど、こればかりは仕方ない。

 まぁ、今の所怪しい音は拾えてないので、序盤はもうちょっと間隔を広げればよかったと思っていると。


「お姉様! 川の下流から二人こちらに向かってきています!」


 ちょ!? ええ!?

 視界の良い渓流沿いに上ってきたら相手チームに見つかっちゃうじゃん!

 なんでそんな人目につく方から来るのぉぉおお!?

フ)滝のイメージは別府公園 滝とかでググるとイメージ湧きやすいかも!

サ)ベップ? ググル?

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