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八十八話 連携の年季:三人称視点

日曜日にブクマ100件記念で二話投稿しています。

まだお読みでない方がいらっしゃいましたら、そちらを先にご覧下さい。

 「どうなってんだこりゃ……」


 最前線のフィールド中央。

 エド達がそこに辿り着くと、リズとエリーゼはサファルではなく黒剣と戦っていた。

 白盾が陣取っている方角には三日月状の壁がそそり立ち、奥の様子は伺えない。


「まだ結界は護石が破壊された反応を示してねぇ。つまり、サファルは無事ってことだ。

 黒剣が漁夫の利を得に来たか? いや、この霧の中で状況が見えてたとは思えねぇな……。

 ジョルジオが戦場の勘を働かせたってとこか……?

 二人はエリーゼを援護。オレは魔法を発動させてから向かう。無理はするなよ!」


「「了解」」


 リズは司祭・僧兵志望の二年生を相手取って戦っており、エリーゼはジョルジオと戦っている。

 その二人は以前にフロストが部隊を組む際に紹介していた司祭・僧兵志望の二年生で、名をそれぞれシーサ、ソイという。

 魔法こそ使えないが、Bクラスの中位に属する実力を持っている。

 そして、アニーはバディであるコマールと白盾の方に追撃を仕掛けているようだった。


 エドはシーサとソイに狙いを定めることにした。

 シーサとソイの二人は入学してからずっと一緒に訓練していた経験から、抜群のコンビネーションと大剣に負けない棍を使ったリーチの長さで、二体一とはいえリズと拮抗した勝負をしているが、どちらか一人を崩せればそのまま倒せると判断したからだ。


 ジョルジオは確かに脅威であるが、守勢を得意とし、相手の攻撃を受けきろうとするクセがあるため、エリーゼがすぐに撃破されることはないと判断していた。


 相手の素早さを下げるデバフ魔法であるシャドーグラビティの詠唱を開始する。

 詠唱が終わる直前、持っていた棍を力強く二度地面に叩きつけてから発動させる。


「シャドーグラビティ」


 エドを長く護衛しているリズはエドの地面を叩いたのが魔法の合図だと気付いていた。

 そして、魔法発動と同時に射線を開けるため、後方へと一気にに下がる。

 その動きに不自然さを感じたソイも同様に下がったが、シーサはそれに気付けなかった。

 そして、シャドーグラビティの魔法をまともに食らってしまう。

 その効果に驚き、シーサは逃げようとしたのだが。


「逃がさないよ!」


「お二人の好きにはさせません!」


 すかさずリズが止めを刺しに前に出るが、ソイが間一髪それを防ぐ。

 純粋な力比べでは分が悪いが、シーサが逃げるまでの時間を稼げばいい。

 そう判断したソイは、長いリーチを活かした突きでリズを牽制することだけに意識を集中する。


 リスクを犯せば、リズは二人を倒すことは可能だと確信していた。

 だが、護石にダメージを蓄積した状態で黒剣、白盾どちらかに追撃されれば、今度は逆に自分が護石を破壊される可能性が出てきてしまう。

 慣れないルールに捕らわれて、攻めあぐねていたリズの横をエドが通り抜ける。


「スイッチだ」

「了解」


 短いやりとりでリズは右に軽く飛ぶ。

 入れ替わるようにエドがリズがいた位置に飛び込むと、ソイが放った突きを同じ武器である棍で薙ぎ払う。


 それを確認したリズは一気にシーサとの距離を詰め、動きが遅くなっているシーサへ大剣による強力な一撃を叩きつけた。


 大剣の一撃を正面から受けてしまったシーサは吹き飛ばされ、パキリと護石が砕ける音が小さく響いた。

 するとシーサの体は宙に浮き、結界の外へと弾き飛ばされてしまう。

 シーサが結界の外に出ると結界の色が銀色へと変わり、銀杯が護石を破壊したことを知らせた。


「あんた達とは年季が違うんだよっ!」


「よくやったリズ! 全員撤退だ!」


「まだやれるきゅるりん!」


「バカがっ! リズ、時間を稼いでくれ。二人はそいつを殴ってでも連れて来い!」


 エドは撤退しやすいようにジョルジオの動きを阻害するため、シャドーグラビティの詠唱を開始する。

 それを見たジョルジオは不利を悟って素直に下がっていった。


「離せきゅるりーん!!」


「暴れたりねぇなら後でオレ達十七人全員で相手してやる。もちろん、休みはなしだ」


「きゅるっ……!?」


 ジタバタと暴れていたエリーゼは大人しくなり、全員で撤退を開始する。

 いつの間にか銀杯からの援護は止んでいて、霧を抜けると黒剣から魔法による攻撃を受けたが、距離が遠く狙いが大雑把であることと黒剣の魔法に気付いたエリックが再度援護をしてくれなんとか切り抜けることができた。

 数発くらった者もいるが、下位魔法であり、距離による減衰もあってか大したダメージにはならなかった。


「準備は!?」


「ほとんど終わってる! 大外を回って合流してくれ!」


 エドはエリック達と距離がある場所から問いかけ、エリックは答えながら右側を手で指しながら叫び返す。

 エド達はぐるりと遠回りをしてエリック達に合流した。


「悪いけど、あっちも頼めるかな?」


 合流した後、エリックは水属性の魔法が使える一年生にそう告げると、前線に出ていたメンバーに水を渡す。


「戦果は上々みたいだね。サファルを撃破したの?」


「いや……サファルは倒せなかったよ。けど、黒剣の横槍をあたいが跳ね返してやったのさ」


 リズが胸を張ってそう言った途端、結界は銀色染まった。


「あれ、今更? もしかしてシャドーバイトの効果が残ってて、サファルの護石を削り切った?」


「これは……まずい状況かもな……」


「そうだね……」


 リズ、エド、エリックの順で困惑しながら呟き、今後の展開に頭を悩ますことになった。






 シーサを撃破され、撤退まで許してしまったジョルジオはアニー達と合流した。


「アニー、無事か? こちらはシーサがやられてしまった」


「あたしは平気だけど……。サファルを倒し切れなかったよ……」


 ロウェルが盾となり、サファルはスージーと共に本陣に戻ってしまった。

 途中、ファイヤーボールの魔法放つも、サファルに掠らせるに留まった。

 直撃していれば破壊できるほどサファルの護石はダメージが蓄積していたのだが、結果的に銀杯を援護した形となってしまっていた。


「あの状況では仕方がない。俺もエリーゼの護石を破壊できなかったしな。

 状況は厳しくなったが、シーサの仇を討つためにも一度戻って全員で銀杯へ攻めるぞ」


「りょ~かい」


 ジョルジオは自軍に戻り、シーサが撃破されたことを部隊員に告げる。

 士気の低下を懸念していたジョルジオだが、逆に仇を討つとばかりに全員の戦意は向上する結果となった。

 銀杯に攻めに行くことに全員が賛同し、白盾と鉢合わせてして遭遇戦が起こらないよう遠回りをして銀杯の元に向かう。



 黒剣が銀杯の目前まで来ると、すでに銀杯は迎撃の準備を完了させていた。

 高原にはなかったはずの大小様々な大きさの岩が点々と存在し、大きめの岩に銀杯の部隊員が数名隠れていることが見て取れる。

 それを見てもなお、黒剣部隊員の戦意は高かった。


「俺、アニー、コマールで前に出るぞ。他の者は後に続いて相手の中位魔法を潰すことに専念だ。

 ルビー、魔力は回復したか?」


「はい~。一回なら使えると思います~」


「お前のクイックキャストが切り札だ。相手の隙を見つけたら迷わず撃て」


「任せてください~」


 ふんすと気合いを入れるポーズを取ってルビーは頷いた。


 ジョルジオ、アニー、コマールが前へ出て、しばらくしてから他の部隊員が続く。

 そろそろ魔法で狙われるだろう位置まで来ると、ジョルジオは足を止めた。


「やってくれるなっ」


「どうしたの~、ってうわ! これはひどいな~……」


 ジョルジオとアニーが踏みしめる足の先で、グチャリと音がした。

 銀杯は岩による防壁だけでなく、地面にまで細工をしていたのだ。


 大量の水によって水浸しにされた地面はぬかるみ、走れば足を取られるのは間違いない。

 ここまでのぬかるみを作るのは容易ではない。

 恐らく、エリーゼとリズが前線に出た時から準備をしていたのだろう。


 前に出ている三人なら全力を出すのは難しいが、ある程度戦える。

 だが、それに続く者達が魔法で攻撃を受ければ一気に崩されるかもしれない。


 攻めるべきが引くべきか、ジョルジオは思案した結果、三人は一度引くことにした。

 状況を伝え、どう攻めるかみんなが思案している最中、とある生徒が詠唱を開始して魔法を発動する。


「サンドブラスト!」


 サンドブラストは砂の塊を飛ばし、着弾すると周囲砂をまき散らす魔法だ。

 ぬかるみに放たれたその魔法の効果は高く、普通に歩ける程度にはぬかるみはましになった。


 土属性の魔法が使えるのは、この中ではジョルジオを含め今サンドブラストを発動した二人のみ。

 進むにしても歩みはゆっくりとなり、魔法の集中砲火を浴びることになる。

 それでも、ジョルジオ自身が的になればいいと彼は考えた。


「やられっぱなしは(しょう)に合わん。それに、シーサの仇も討たなければならない!

 みんな、俺に付いてこい!」


「「「おお!」」」


 ジョルジオ、アニー、コマールに加え、サンドブラストを使える生徒を加えてゆっくりと前線を押し上げる。

 銀杯から魔法は断続的に放たれたが、三人は魔法や盾で防ぎ、避け、武器で跳ね返して行った。


 そうして銀杯との距離が中間地点に差し掛かった所で、彼らの後ろに白盾が姿を現した。

フ)ベイルアウ サ)お嬢様、それ以上は危険です

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