八十七話 霧の中の混戦:三人称視点
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サ)2022/8/7 二話目投稿となります。
銀杯、白盾両チームによる魔法砲撃が空中でぶつかる。
火属性魔法と水属性魔法がぶつかり合い、大量の水蒸気を発生させリズ、エリーゼ、サファルに降りかかる。
水属性魔法の方が数が多いのか、水蒸気は冷やされて濃い霧を作り出し、風属性魔法の影響で霧は最前線を覆い隠していった。
「はあぁああ!!」
その視界の悪い中、リズは大剣を構えてサファルへと迫る。
サファルはエドのシャドーバイトによってやや動きに精彩に欠けるものの、持ち前の目の良さでなんとか防ぐ。
しかし、カウンターを狙う余裕はサファルにはなかった。
カウンターは本来、大ぶりな攻撃と相性がいい。
大振りな攻撃であれば相手の攻撃の起点から軌道まで予測しやすく、カウンターの成功率が上がる。
同じ程度の実力であればカウンターを狙った方が、試合で有利になることは多々あるのだが。
二人の授業や訓練での勝率はリズの方が随分と高い。
リズは大剣で強力な一撃を放つことはもちろんのこと、大剣の扱いが巧みでコンパクトな振りもできたからだ。
ただでさえ負け越している相手に、魔法による制限と二体一という状況。
普通に考えれば絶望的だ。
それでも、彼は笑う。
「あっはっはっはっ! 一番最初の試合、一番最初の戦いでこんな舞台を用意するなんて、神様も粋なことをするじゃないか!」
「頭おかしくなったきゅるりん?」
「ダンスの続きをしようって言ってるのさ! 僕は躍りきってみせる!」
「お遊戯はお外に出てからにしなよ!」
リズは大剣を大上段に構え、一気に振り下ろす。
当たれば確実に護石が割れるだろう一撃を、ギリギリの所でサファルは避ける。
そこをカバーに入ったエリーゼが蹴りを放つが、サファルは後方に跳ぶことでダメージを最小限に抑えた。
「あぁ観客よ! 僕のダンスを見ているか!? おてんば姫達と躍るこの僕をっ!」
「こんな霧じゃ見えるわけないきゅるりん。なんだかイライラしてきたきゅるりん」
「奇遇だね、あたいもだ。そろそろ決着つけようか」
リズは先程とは違い、大剣を横に構えて走り出し、エリーゼもそれに合わせる。
今のサファルなら、剣で防ごうとしても剣ごとサファルを斬れる自信がリズにはあった。
カウンターを狙われても今のサファルなら致命傷になるような攻撃にはならず、逆にエリーゼの攻撃で致命傷を与えられる。
大剣のリーチを活かして、サファルの攻撃が届くか届かないかのギリギリの位置から大剣を横に振るう。
横に振るわれることで広い線の攻撃となった大剣を上に飛んでサファルは避け、さらに大剣が通りすぎる一瞬の間にその大剣を踏み台にして後方へと下がる。
逃がすまいとエリーゼは蹴りをヒットさせるが、両手で防がれてまたしても致命傷には至らなかった。
「は、はは! どうだい!? 君達二人を相手にしても僕はまだ倒れていない! 僕はもっと輝ける! もっともっと僕を見ておくれ!」
サファルに取って不利な状況。
それが逆に彼の神経を尖らせ、かつてない程の集中力と動きをもたらしていた。
「あぁ~まいったね。あいつはただ目立ちたいだけで、勝ち負けどうでもいいんじゃないの?」
「やっぱり頭おかしいきゅるりん」
リズは内心、焦っていた。
自分達がやられることはないが、時間稼ぎに徹せられたら二人がかりでも時間が掛かる。
そうなれば、いずれ白盾の増援が来る可能性が高い。
「最悪。このまんまじゃ後でエドにぐちぐち言われるわ……。一気に決めよう、エリー……」
そんな未来はごめんだと、多少無理をしてでも倒しに行くと心に決めてエリーゼに声を掛け。
「もう我慢できないきゅるりん! ぶん殴ってくるきゅるりん!」
「ゼェエエエ!?」
先にエリーゼが飛び出し、慌ててリズも飛び出す。
予定は狂ったが、エリーゼが隙を作れば自分が確実にダメージを与えていけばいいと考えなおし、リズは腋を締めて大剣を持ち、コンパクトに振るよう構える。
「きゅーるりん!」
エリーゼは飛び上がってサファルとの距離を一気に詰め、今まで一番早く、鋭い跳び蹴りを放つ。
想像以上の早さだった蹴りを、サファルは上半身を斜め後ろに倒すことによって避ける。
上半身の重心が後ろに逸れて動きが制限された所に、距離を詰めてきたリズが大剣で鋭く突き、サファルはまともに食らって後ろに大きく吹き飛んだ。
「お生憎様だけど、あんたじゃあたいを引き立たせるには役不足みたいだね」
「ぐふっ……! ダンスパートナーの足は踏まないようにって、教わらなかったのかい?」
「さ、次でお遊戯は終わりにしてやるよ」
リズは大剣を肩に担ぎながら、サファルだけでなくエリーゼの挙動にも目を光らせる。
ここまでしてエリーゼに台無しにされたのではたまらない。
「サファル! 下がれ!」
「クレセントウォール!」
「ロウェル様! スージー様!」
スージーの土属性魔法クレセントウォールにより、リズ、エリーゼとサファルの間に三日月状の形をした壁が隆起する。
「ちっ! 遅かった!」
壁に阻まれ、倒し損ねたことでリズは撤退を視野に考えを巡らせる。
「うぉぉおお! 俺に続けぇぇえええ!!」
今度はサファルやロウェルが居た方とは違った方角から叫び声が響いてきた。
ジョルジオが数名を引き連れて霧の中に突入してきたのだ。
「もうなんなのさ! これで黒剣にサファルの護石を破壊されたらあたいがみんなに怒られるじゃないか!
エリーゼ! 黒剣を止めるよ!」
「ジョルジオ様にはいつもの模擬試合の借りを返させてもらうきゅるりん!」
「来いっ! エリィィゼェェ!!」
最前線では銀杯と黒剣の戦いへと移っていった。
時間はリズがエリーゼと合流する前に遡り、銀杯チーム陣営。
「ちっ。白盾の立て直しがはえぇ。こっちは水と風、白盾は火と風が主力のせいで霧が出たな……。
まさかリズの奴がやられるとは思わねぇが、俺が援護に行く。前衛二人ついてこい!」
白盾が銀杯の魔法を相殺しだしたのを見て、エドは舌打ちしながら次の行動を決める。
「後衛は引き続き魔法で援護だ! 黒剣を狙っていた一年も白盾に変更!
エドが辿り着くまで弾幕を張って!」
「一人ヤルまでは戻ってこねぇ。準備を頼むぜ、エリック」
「あぁ、任せておいてくれ」
短いやりとりで意思疎通を済ませ、エドは最前線へと向かう。
同時刻、黒剣チーム陣営。
「どうするの~ジョルジオ~。このままじっとしてるのなんてあたし嫌だよ~」
「霧で様子はわからないが、先に護石を破壊したチームが圧倒的に有利になるルールだ。エドとエリックがこのまま座して待つとは思えんな。
よし、横から仕掛ける。どちらのチームでもいいが護石を一つでも破壊できれば撤退だ。アニー行くぞ!」
「待ってました~! コマール行くよ!」
「ルビィ~は~……」
「ルビーはここで待機だ」
「ごめんなさい~ジョルジオ様~」
兄であるサファルの行動を止めようと中位魔法を二回も使ってしまい、魔力が少ないルビーは申し訳なさそうに謝罪する。
「大丈夫だ、まだ時間はある。今は魔力の回復に努めて後半に備えておけ」
「はいぃ~」
「シーサ、ソイ! 俺に続け! 他の者は霧から抜ける奴がいたら魔法で一斉に叩け! 行くぞ!」




