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7話:問題

 柿渋事件は寺野のおかげで、とりあえず本物の柿渋を確保できたという事で解決に終わった。しかし、湯田は生クリームしゃぶしゃぶの影響で数日ほど口の中は甘ったるくキツかったらしい。それもしてしまったことに対しては苦かったけど罰は甘すぎた、と言った方が良いだろう。


 部活対抗リレーの打ち上げから数日後、寺野は柿渋を貰うべく、ランニングシューズを履いて走り去った。そしていつもの日常に戻る中、放課後に石角、鶴居、富林、下原、湯田、欅が生クリームの匂いが微かに残る部室へ来た。


「生クリームの匂いまだする!誰のせい?これ…」


 わざわざ分かりやすく苦情を言った下原はすぐにお前だろ!とツッコミが入る。


 石角はむしろ尊敬していた。やり返すつもりが下原の活躍で全て良い方向へと進んでいるからだ。


「ま、まぁ生クリームしゃぶしゃぶの件は良いとして津波が来た時の耐久度を見ながら強化していこう!打ち上げの時に言えばよかったけど、鶴居さんも体育祭の演舞お疲れ様!今度は爪楊枝大会と忙しいけど頼むね!」


「ちょっと悔しいところあったけどありがとう!物理部に貢献できるように演舞で参加できなかった分を取り戻せるように頑張る!」


 石角と鶴居のやり取りが終わった後、爪楊枝大会の作業は佳境へと入る。


 津波も強化される度に爪楊枝の作りも強化していけるというゾーンへと入り出し、ついにM5.0の地震に耐えれるほどのタワーが出来た。


「流石欅!気になる女の子の住所特定が趣味の欅や!サイコパスながらも計算は緻密で最高!」


 下原の空気読めない発言には欅は動じない。下原は欅以上に悪事を働いているからだ。


 ドアが開く音が聞こえて怒号を飛び散らかしながら入る。


「おい下原!前貸した分のお金返してくれんか?もう1ヶ月経とうとしてるよ!本当に…伸ばしに伸ばしてやった僕の優しさに感謝しなさい!」


 小太りな男の子が入ってきた。


 彼の名前は前山孝。下原のクラスメートでいつも下原に奢ったりお金を貸したりする1人。高額なものだと、ゲームソフトを真顔で贈る。趣味は近くの女子校に気に入った人を見つけては後をついていくストーカー。ただ生欲が無く、ミステリアスで不気味な人だ。


 下原はその怒号を聞くとすぐに言い返す。


「ごめんって!俺、喬林からも借りてるからさ…返済日過ぎると2割ずつ増える仕組みになってて今100万の借金してることになってるからさ…(笑)」

 

 一同は吹き出す。下原は金遣いが悪く、誰かの財布に付いてくる寄生虫のような物だと喬林が噂している。


 そして、また1人被害者が現れた。


「下原ーまだ返せないの?もう僕やばいからさ前山に借りてるから前山に返してね!もうそれだけ待ってるんだから」


 彼の名前は朝葉夜。前山と下原、喬林のクラスメート。主に前山といることが多く、趣味はパソコンで動画編集。スポーツも足が速いのですぐに抜擢されるが、時におっちょこちょいな一面が多い。


 下原の逃げ場は無くなった。欅は、高校生とは思えない提案をする。


「もう潔く返せないと認めて自己破産すれば良いんじゃね?対処できんけど…」


 下原の立場はまさに、闇金から逃れる人のようなものだった。しかし、下原は最後の最後に空気の読めない爆弾発言をした。


「じゃあ、出世払いで!」


 鶴居は演舞で鍛えた足で下原の尻を蹴りまくる。下原は女の子にまで軽い気持ちで借りてるその喬林が下原に対してするだろうということを鶴居はヤンキーのように蹴った。


 優しい気持ちを持つ前山は鈍い音が聞こえた後に下原を庇う。


「流石にもうやめな?いくら蹴ったところでも何も変わらないし、今ここで怪我をしてしまっては爪楊枝タワーの作成にはこいつが必要なんだろ?下原のことは許せないけど、やり過ぎだ!お金返せないから怒るのは分かるが今やってることは完全な暴力だから、暴力を振るったところで解決にもならないぞ」


 朝葉も言いたいことを言ってくれた前山に向かって笑っていた。鶴居は、笑いながら息を弾ませていたが前山の説教に蹴ることをやめた。


 下原の手を掴んで立たせた前山だが、


「今回は助けたが次はもうないぞ。そして、返せる時が来たら返せよ!俺の場合はだけどな。他の人のは早めに返さねぇとさっきの鶴居みたいに蹴られてやられるぞ」


 前山の言葉に下原はオロオロしたものも、彼の考えを受け入れる。その後、前山と朝葉はいつものご飯屋で食事を取ってそのまま習い事へ向かった。


「てか、下原!お前やばいだろ…どうするつもりだ?流石にこれは俺たちじゃ解決できるような問題じゃないぞ!」


 石角は警告を告げる中、寺野が走って帰ってきた。息はゼェゼェと整えようとしていたが、妙に違和感を感じた。足に多くの木くずが付いていたのを鶴居は見つける。


「お帰り!おーこれが柿渋か…石角君が作りたがってたやつね。たしかにこれは熟成度が違う…。でも、寺野の足どうしたの?木くずだらけで何か突っ込んだりしたの?」


「ただいまー!そうなんだよ…帰る途中に知り合いが作ってる宮廷建築の床を壊しちゃった!そして、ちゃんと謝ったけど怒ってた(笑)」


 バカヤロー!とツッコミを入れた部室内だが、反省の頭文字もない寺野は下原三世だろと思われた瞬間だった。


 彼は他にも音楽室のピアノを破壊したり、教室の机を自慢の脚力で潰してしまったことで過去に有名人となる。その支払額は下原を超えるものだった。


「お前バカやろ…。なぜ床壊したの?どうせまた足に力を入れすぎて板が壊れたってとこだろ?ダサすぎやろ!」


 下原のボヤキに流石の寺野も罪を認めざるを得なかった。そして下原は前山の話をしたところ、寺野は他人事のように笑う。どっちもどっちだろと思ったが似た者同士で仲が良いのも彼らの強みなのかもしれない。


 石角は何故か怒るどころか感心していた。


「とりあえず、柿渋手に入ったことだから塗ってその上から塩酸14%に調整した溶液を垂らしてみよう。きっと、酸化しにくいはず!」


 その通りに柿渋を爪楊枝に塗って乾かした後、酸性雨を想定した塩酸14%の雨を降らした。その通りに柿渋による効果で酸化しにくくなっていた。流石物理部部長の石角!と思った。


 後日、物理部に来た人たちと先生にその効果を見せる。部室内は拍手喝采でその凄さを目にする。


「流石石角!これで優勝は間違いない!この技術なら優勝の水素自動車は貰える」


 喬林はフラグを立てた。彼女もよく言うフラグ建築士で言ったことが本当に起きるというスキルを持つ。


 先生は何も言うことがなかったのか頷きながら話を聞いて石角の肩を2回叩いた後、職員室へ戻る。


 物理部の2人寺野と下原は多額の借金をしてしまったが、2人はちゃんと返済することができるのか。下原はちゃんと朝葉と前山と喬林にきちんと謝ることが出来るのか。


 高校総体も目前となっている今は最後の最後まで全力で取り組む、と物理部一同は誓った。

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