神の瞳は真実を映し出す
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虹色の瞳、それは神の瞳。虹色の瞳の前では嘘はつけない、それは死を意味するからだ。虹色の瞳は心を読み真実を告げる。虹色の瞳は最も尊く、呪いだ。
アンネス・シュネルス王女、私は呪いとも言える神の瞳を宿して生まれた。私を利用しようとする者は皆死ぬ。例外なく私の目の前で。父も兄も母でさえ私に嘘をつき目の前で死んでいった。残る王族は私だけ。十歳という年齢で私は初となる女王として即位した。神の瞳を持つ神の子として。
皆、神の子として敬意を示すがその心には恐れが必ずある。もし、私が「私が怖いか」と尋ねるとしよう。そこで否定する事は嘘になる。だから皆沈黙で返すだろう。そして沈黙は肯定だ。皆んな死にたくは無いだろう。
私は幼心に父や兄、母の心に怯えを見てしまい聞いてしまったのだ。「私のこと愛してる?」と父達は沈黙で返せばよかったのだ。そうしたら死ぬ事など無かったのに。
私は事切れた父達を前に心を凍らせた。私を愛する者はどこにもいない。私は神殿へ行き、私の瞳と同じ色をした宝石が埋め込まれている神の像に林檎をぶつけ続けた。
その行為を止めたのは父の側近である若き将軍、アシュレイ・タナトスだった。銀色の髪に、一瞬女性かと思うほど綺麗な顔をした将軍だ。
(何故陛下達は沈黙で返さなかったのだ)
アシュレイの心には私を哀れだという気持ちと父達を愚かだという気持ちが見える。
「アシュレイ将軍、貴方は私を恐れている?」
「いいえ……ただ哀れだとは思います」
「アシュレイ将軍は正直者だね……お父様達は何で嘘をついたか分かる?」
「私には分かりかねます」
「私から解放されたかったんだって。いつも側にある神の瞳から……神の子である私を虐げる訳にもいかず……私がこんな呪われた瞳をしてなければ!!」
ボロボロになった林檎を神の像の顔に力一杯投げつけると林檎はぐしゃりと潰れて床に落ちる。そして私は自分の目を抉り出そうとするがアシュレイ将軍に押さえつけられ止められる。暴れるがびくともしない。私は暴れるのを止め、項垂れる。
(どこまでも哀れな王女だ、神の子等と言われ、敬われながらも恐れられる……王女が言う通り、神の瞳は呪いでしかない)
「アシュレイ将軍って心の中ではお喋りだね」
「……全て見えているのですね」
「見えるよ……悪意も、怯えも、恐れも、哀れみも!!全部!!全部!!」
「アンネス王女……私が貴女の側にいます。どうか心を鎮めて下さい」
「……ふふっ、なら貴方が私を愛して?今すぐとは言わない、私が成人する時に聞くわ。『私を愛してる?』って」
(「分かりました」)
「……え?……死ぬかもしれないんだよ?」
「私は死にません」
アシュレイ将軍の腕から解放され心を見るが何も見えない。アシュレイ将軍にとっては今言った言葉が本心だからだ。
私はその言葉を信じる事が出来ない。神の瞳ではそれが真実だというのに。
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それから六年、私は今日成人を迎える。
執務室がノックされ返事を返すと、アシュレイ将軍が入って来た。私は幼い頃言った言葉をアシュレイ将軍に言うかどうか迷っていた。アシュレイ将軍はあの日から心に思った事を素直に私に話すからまるで普通に接してもらえてる気になっていたのだ。
「アンネス女王陛下、聞かないのですか?」
「……何を?」
苦し紛れに忘れたフリをするがアシュレイ将軍の前では意味をなさない。
「六年前、貴方が仰ったのです「やめて!!見たくないの!!お願い!!もう愛する人が目の前で死ぬのは見たくない!!愛する人を私は殺したくない!!」
私は椅子から降り、床に座り込んで耳と目を塞ぐ。こんな事をしても意味がないというのに。 成人したというのにまるで子供が怯える様に震える。
そんな私の手を取りアシュレイ将軍が見つめてくる。
(愛している、貴女の心を守りたい)
アシュレイ将軍の心は愛を語る。私は震える声でアシュレイ将軍に問いかける。
「アシュレイ将軍……貴方は私を愛してる?」
「はい、アンネス女王陛下に不敬かと思われるでしょうが、私は貴方を愛しています」
アシュレイ将軍は私に愛の言葉を紡ぐ。偽りのない言葉で。私の心の氷が溶けるように私は一筋の涙を流す。そして目の前のアシュレイ将軍に抱きつき泣き叫ぶ。王としては失格だが、この時ばかりは許して欲しい。
ずっと、ずっとアシュレイ将軍が死んでしまわないか不安だった。でも、アシュレイ将軍は嘘偽りない言葉で接してくれていた。周りが私を尊敬と畏怖を向ける中、ただ一人私のそばに居続け、飾らない言葉で接してくれた。
呪われた瞳をもつ私を愛してくれた大事な人。最初は哀れみだったのかもしれない。だけどこうして私を愛してくれた。私はもう孤独じゃない。
「アシュレイ将軍……この先も私を愛してくれる?」
(「ええ、アンネス女王陛下が嫌がっても愛し続けますよ」)
心と言葉が一致して見える。これほど嬉しい事はない。私はアシュレイ将軍の腕の中でまた泣いた。愛する人を殺す事がなくて良かった。
神の瞳は呪いの瞳、でもこの瞬間だけは神の瞳を受け入れる事が出来た。
この先もアシュレイ将軍の心が変わってしまわぬ様に私は祈ることしか出来ない。




