寄ってらっしゃい見てらっしゃい
レディースエンドジェントルマン!
さあさあ、お待たせいたしました。此度ご覧に入れますは本日初公開! いやはや皆様、大変に幸運でいらっしゃる!
これまでの演目、いかがだったでございましょうか。
異形の歌姫? 見上げるような巨人のバトル? 魔獣使いもございました。はい、息を呑むようなナイフ捌き、あれは見事な物でございましょう。
しかし、しかし! これからお見せいたしますは、今までとは一線を画す代物でございます!
えー、突然ですが、皆様は夢をお持ちでしょうかな?
そうです。様々な物を思い浮かべられましたでしょうか。
巨万の富? ええ、ええ。ほう! 世界平和! 素晴らしい! 意中の方と結ばれること。ロマンチックですなあ。わたくし大好きです、そういうの。
ええ、ですが! そういった皆様の素敵な願いと並ぶように、古代より連綿と、時の権力者から下々の民草に至るまで、全員が一度は夢想したことがあるでしょう人類の夢がございます。
そう! 不死身!
この度お見せいたしますは不死身の男!
穴が開こうが、首が飛ぼうが笑って済ます。そんな男がこの世に存在するのでございます。
そんな者、いるはずがない。嘘に決まっている。
はっはー、なるほど。もちろんそれはごもっともにございます。
ですが! ですがですがですが、皆様。皆様はご存じのはずです。
そう、ここに来られるような物好きな皆様。
――おっと失礼。
世界にドラゴンはいないのか! いいやおります。
時速六百キロを超える乗り物は無いのか! いいえ、ございます。
あ、今日はそちらでお越しですか。ええ、速かったでしょう。私にも追いつけるかどうか。
ドラゴンに乗ってこられた方は? はあ、なるほど。私だけ。
――もちろん冗談にございます。笑うところですよ。
横道に逸れましたね。仕切り直し仕切り直し。
博識な皆様はかつて人類の夢幻と言われたそれらをとっくにご存じでございましょう
――ならば! どうして不死身が存在しないと言い切れるのでございましょうか!
これから始まりますは、そんな不死身の男の晴れ舞台。
よい子も悪い子も寄っといで。目を見開いて、義眼の方はようく磨いて。
それでは皆様、とくと、ご覧あれ。
「死にたがりとサーカス」開演でございます。




