悪夢から覚める
また、あの夢だ。
私は教室にいる。
皆泣き叫んでいる。
目の前の二人が私の方を見て笑っている。
君だけ知らないふりをするんだね、と言うように。
そして、一人はこちらに向かって歩いてくる。
血まみれで、笑いながら。
私は怖くなって、教室から出ようと走り出す。
教室のドアを開けると、暗闇だった。
私は暗闇の奈落にのみこまれていく。
必死に叫んだ。
気がつくと目が覚めていた。
重だるい体を無理やり起こす。
洗面所で顔を洗った。
鏡に映った私の目にはしっかりと隈があった。
こうも同じ夢を見るとは。
あの時のことを忘れる瞬間はない。
どんな時もあの出来事が思い出される。
リビングに行くと、酔いつぶれた父がテーブルに突っ伏して寝ている。
朝ごはんを作ろうとキッチンに向かうと、
「理佐、今日も学校か。ああ、頭が痛いな。水くれ。」
と父に話しかけられた。
昨日も遅くまで飲んだのか。
私は父と二人で暮らしている。
母は、私が五歳の時に出て行った。
父の酒癖の悪さや金遣いの荒さに愛想をつかしたらしい。
母は父と喧嘩したことはなく、不満をためこんだ結果家出してしまった。
私は母に愛されていた記憶もあまりないため、母がいようがいまいがどちらでも良かった。
父は典型的なダメ親父だが、私は本当は優しいことを知っている。
「お父さんは今日仕事ないの?しっかりしなよ。」
私は水の入ったコップを父の前に出しながら言った。
相変わらずお前は隈がひどいな、と父に言われた。
私は父のことは気にせず、朝ごはんを食べ支度をした。
行ってきます、と言おうとしたら、父はまたテーブルで寝ていた。
父の朝ごはんを冷蔵庫に入れてから、家を出ることにした。
学校は最寄り駅から三つ目の駅のすぐ近くにある。