11.初テイム
遂にレベルが6となり、すぐそばにいるゴブリンリーダー(敵意なし)を置いて喜んでいたエータだが、ふとこの状況を思い出し、ゴブリンリーダーを見つめた。
やはり期待するような表情で待っているゴブリンリーダー。俺の脳裏にはこんなワードが流れている。
『ゴブリンリーダーがついていきたそうにこちらを見つめている。テイムしますか?』
俺は葛藤していた。本音を言えばスライムをテイムしたい。しかし、目の前には心なしか目を潤わせて祈りのポーズといわんばかりに両手を組んでいるゴブリンリーダー。俺の良心に訴えかけるような仕草だ。
「ここでスライムをとれば、人としての何かを失うような気がするな…でも、人型だし装備使えるかも」
そこらにいるゴブリンはこん棒ばかりだが、他の武器をあまり大きくないものであればゴブリンだって使えるはずだ。俺が装備できないものを代わりに使わせるということも可能だ。最初の時は金かかるし見た目がいやとも思っていたが、こうして目の前のゴブリンを見るとなんだか可愛く見えてきた。
よし、ここはもうこいつをテイムしよう。次はスライム…スライムをテイムしよう。
「<テイム>」
ゴブリンリーダーを対象に、テイムを発動する。魔法陣が形成され、今度は霧散することなく最後まで行けた。ゴブリンに魔法陣が向かっていき、そしてゴブリンを通過した後に消えていった。これで対象はテイム待機状態となり、何かしらの後に成功か失敗が判断されるが…。
《ゴブリンリーダーをテイムに成功しました。名前を付けてください》
一瞬で成功した。また戦闘になることもなく、待ってましたと言わんばかりのタイムでテイムは終結した。まあ、テイムする前からなんかアイコン青くなってたし。理由はわからんけど…。逆に抵抗されたらそれはそれでショックだが。何にせよ、成功してよかった。
名前を付けることになったが、俺はセンスが無いらしい。どれぐらいといわれればあるゲームで希少なモンスターにまさしって付けて友達と交換するときに何ていうか、うん、やっぱいいやって言われるぐらいである。まさしに罪はない。
見た目は緑、耳は尖っていて、そして小柄。そこから俺が導きだした名前は―――――
「よし、お前の名前はたかしだ。よろしくな」
「ゴブ?ゴブッ!!」
たかしは嬉しそうに跳ねている。気に入ってもらえたようだ。
俺は満足し、次にたかしのステータスを見ることにした。
【名前】たかし Lv5
【種族】ゴブリン
【職業】リーダー Lv1
【HP】620/620
【MP】50/50
【STR】7(+0)+0(7)
【VIT】9(+0)+1(10)
【INT】32(+0)+0(32)
【MND】14(+0)+0(14)
【DEX】8(+0)+0(8)
【AGI】9(+0)+0(9)
【LUK】4(+0)+0(4)
【ジョブスキル】<指揮 Lv1><応援 Lv1>
【アクションスキル】
【パッシブスキル】<判断 Lv1><打術 Lv1>
【称号】<同族殺し><生きる術を知る者>
【称号スキル】<同族キラー Lv5><強者の庇護 Lv5【主:エータ】>
【装備】
メインウエポン:なし
サブウエポン:なし
頭:なし
体:ボロ布
手:なし
足:なし
装飾:なし
あれ、なんか想像と違うゴブリンだな…。ステータスは知的なタイプで、構成内容も概ね武力タイプではない。戦闘で指揮だけしてたのにも納得がいく。【称号】は<同族殺し>はその場でみていたから分かるが、<生きる術を知る者>はまあ、あの青くなったことに関連してるかもしれない。<称号スキル>がそれを物語っている気がするし。
分かったことは、たかしは武力向けではないということ。もうちょっとこう…そう、魔法的なものがあればよかったな。これでは魔法使い(魔法使えない)だ。ここはレベル上げて様子を見るしかないな。
だが、俺はこんなステータスでよかったと思う。個性が出てるし育成方針も定めやすいからね。まあ、飛び出た所をさらに伸ばすだけだけど。
次は、スキルの説明をみてみるか。ちょっと気になるスキルもあるしね。
<指揮>…PS:パーティーリーダー時に効果適用。メンバーとの意思疎通が浸透しやすくなる。メンバーの【INT】【DEX】【AGI】が上昇する。
<応援>…AS:MP10消費 パーティーメンバーを応援し、5分間メンバーの【STR】【INT】【DEX】【AGI】が上昇する。 CT:30秒
<打術>…PS:打撃武器での攻撃力・命中増加。レベルが上がるほど扱いも上手くなる。
<判断>…PS:状況を見て判断することができる。レベルが高いほど的確な判断ができるようになる。
<同族キラー>PS:自分の【種族】と同じタイプに与えるダメージが1.1倍。レベルが上がる毎に+0.1倍が加算される。
<強者の庇護>PS:自分が【主】と認めた者から守られるようになる。双方が攻撃する度【主】のヘイト値が上昇し、自分のヘイト値が下がる。
まずはジョブスキルだが、先ほどの戦闘では<指揮>は有用だったが、今だと俺がリーダーってことになるよな。じゃあ効果は無いか。中々優秀なスキルだけに勿体ない感がすごい。たかしをリーダーに出来ればいいけど…ゴブゴブと指揮されても分からんわ。職業リーダーなのにリーダーじゃないのもなんだかなー。
続いて<応援>だが、こちらはかなり使えるスキルだろう。どれぐらいの上がり幅かは分からないが、ステータスの底上げができるのであって損ということにはならないはず。ただ、現状では俺に【DEX】と【AGI】ぐらいしか恩恵が無いぐらいだろう。
続いて、【AS】は応援しか無いため、【PS】となるが…。<打術>は打撃武器の扱いが上手になるスキルで、<判断>はAIの強化といった所か。これは期待できそうなスキルだな。
<同族キラー>はたかしなら対ゴブリン種にダメージ増といったところだ。若干局所的なスキルだが、ないよりはマシだ。
そして、<強者の庇護>これはたかしの【主】が俺になっていて、たかしか俺が敵に攻撃するほど俺にヘイトが溜まっていき、たかしは狙われにくくなるスキルか。うん、マジか。
「俺は囮か!俺が死んだら全滅だぞ!」
思わず叫んでしまった。これではたかしにメリットはあれども俺が危機にさらされてしまうのだ。そして俺が死ねばたかし諸共街に帰還だ。叫んでしまうのも無理はない。だが、テイムモンスターが先に死ねば運が悪ければ消滅してしまう。それを天秤を掛けたらこれでいいやと思えてきた。
要は、俺が死なないように気を付ければいいだけだ。まあ、これが一番キツイ壁なんだが…。
さて、一通り確認もしたし、最初のクエストを終了させなきゃな。それに疲れたし、俺もレベルがあがってるけど、いまはハーストンまで戻ろう。なんにせよ、まずは言っておかないとな。
「これからよろしく頼むよ、たかし」
「ゴブッ!」
今日からソロは卒業だ。俺とたかしはクエスト報告の為、ハーストンへと歩を進めた。
――――――――――
ハーストン テイマーギルド(馬小屋)
「それで、そこにいるゴブリンがエータのテイムしたモンスターか?」
「ああ、ゴブリンリーダーってやつだ。なかなか面白いスキルを持ってたよ」
「ゴブリンリーダー? それってレアですよ!」
あの後、一直線にテイマーギルドに向かい、ベイカーとロイにクエストであるモンスターを1匹テイムしてくるという内容をクリアしたので報告した。ロイがちょっと興奮している。そんな大事ではないだろうに…。たかしってレアなのか?たしかにゴブリンらしからぬステータスという意味ではレアだが。
「ゴブリンリーダーってレアなのか?」
「ええ!この周辺では北口付近の森に稀にゴブリンの集団に交じってるんですが、統率がとれていて厄介なんですよね」
北口といえば推奨レベルが20ぐらいだったと思う。そこで稀にいるぐらいなんだから、レアなんだろう。でも、普通にたかしは目の前で進化してたんだが…なにか条件とかあるのかもしれないな。
「俺の場合は目の前で進化してたんだが。そういうことってあるのか?」
「何?戦闘中に進化したのか?そいつは聞いた事ないな。その時の状態はどうだったんだ?」
質問したら質問で返ってきた。まあ、聞いた事がないんじゃ分からないだろうしな。俺はその時の状態を説明したが…。
「アンタは何やってんだ…。自殺行為も等しいぞ。まあ、生きて帰ってる時点でかなりの腕だが、そういう状態で帰還すれば周りに迷惑が掛かるということを肝に銘じておくことだ」
呆れられてしまった。まあ、確かに15匹も連れて回って突然いなくなれば周囲にプレイヤーがいたらなだれ込んでくる。それでそのプレイヤーが死んだらMPKだ。プレイヤー間ではやってはいけないものの1種だ。俺の悪い癖が引き起こした結果俺にしわ寄せが来ても文句も言えない。今度から気を付けよう。
「結論から言うと、魔物同士で殺しあったりはあるし、それによってレベルアップすることはある。だが、進化するケースは聞かない。俺たちの職業に上位が存在するように、魔物にも上位は存在する。だが、魔物の詳しい生態は分からないし、進化するタイミングも不明だ。レベル、あるいはステータス。もしくは特殊な状況下での発生が挙げられるが、断定はできないな」
ベイカーは照明に照らされる頭を一人納得したり、考えるように上下左右に振っている。あ、まぶしっ!
「まあ、レアということは分かったよ。それで、クエストは完了でいいんだよな?」
「ん?ああ、アンタが優秀なテイマーと分かった。依頼はクリアだ」
《ギルドクエスト:テイマーとして1/3を達成しました。》
報酬金:1000DIL
報酬品:スキルポイント1
お、スキルポイントが貰えた。1/3だから、あと2つのクエストが残っているみたいだな。
「次の依頼なんだが、今度はテイムしたモンスターについての事になる。召喚モンスターは最悪魔力だけで補えるんだが、テイマーにはそれがない。つまり、テイムしたモンスターのケアもやっていく必要がある。人間と同じように腹も減るし、ケアもやらないと反抗的にすらなりかねない。依頼前に渡した調教セットと食材セットがあると思うが、今回はそれを使ってそのゴブリンを世話してみろ」
《ギルドクエスト:テイマーとして2/3を開始します》
内容:テイムしたモンスターを世話する
次はモンスターの世話か。ベイカーの言う通り、前にもらっていた調教セットと食材セットを取り出した…が、使い方がわからなかった。ちょっと説明を見てみるか。
【調教セット】…テイムモンスターをしつけるための道具セット。言うことを聞かなくなったら使用してみよう。
【食材セット】…テイムモンスターの空腹を満たすための食材セット。基本そのまま食べれるが、調理も可能。
本当に簡単な説明だった。取りあえず調教セットは要らない、たかしは賢いしな。ということで、食材セットを使用したが…果物やら野菜やら、一部ウィンナーのような加工された肉があった。まあまあ入っていたが、たかしの好物が分からないため、たかしに食材を見てもらうことにした。
「たかし、この中で食えそうなものを出してくれ。食えなさそうなものは入れといていい」
「ゴブッ!ゴブッ!ゴブ…ゴブッ!」
肉・野菜・果物と全て取り出していき、結果残ったものは空になった容器だけだった。雑食でなんでも行ける口か。若干加工肉に躊躇いはあったが…普通は喜ぶと思うけどなー。
「この中から好きなもの食っていいぞ。腹が一杯になったら返してくれ」
「ゴブ…ゴブ!…ゴブッ!」
たかしは果物1つを手に取り、残った食材セットを俺に返してきた。そんなんで足りるのかたかしよ。
「…大分賢いゴブリンだな。大半は平らげる勢いで食っちまうぞ」
「まあ、たかしは賢いんで。後先考えて行動するタイプなんだ。中々優秀だろ?」
「すごい!こんな賢いゴブリン見たことありません!ていうか名前たかしっていうんですね!変わった名前ですね!」
「そうだろ、いい名前だr…え、変わった名前?」
褒められて気が良い所に聞き捨てならない言葉が飛び込んできた。変わってるわけないだろう。ああああよりましだろう!
「いや、いい名前だろ?たかしも気に入ってくれたんだ」
「まあ、他人がつけた名前にケチつける気はないが…変わってるのは確かだな」
「くっ…あんたらもなのかっ!?」
《ギルドクエスト:テイマーとして2/3を達成しました》
報酬金:0DIL
報酬品:簡易調理セット
クエストが終了するのと、俺の心にダメージを負ったのは同時だった。何故だ…そんなに俺はセンスないのか…。ごめんよたかし。それとたかしに罪はない。
エータのネーミングセンスが変わっていました。これから命名されるモンスターの運命や如何に…。
全国のまさしさんとたかしさんに罪はない。
【名前】エータ Lv6
【種族】ヒューマン
【職業】テイマー Lv1
【所持金】26450DIL
【所有スキルポイント】6
【所有ステータスポイント】20
【HP】175/175(175/350)
【MP】50/50(50/100)
【STR】5(+0)+0(5)
【VIT】5(+0)+0(5)
【INT】5(+0)+0(5)
【MND】5(+0)+0(5)
【DEX】5(+0)+0(5)
【AGI】5(+0)+0(5)
【LUK】60(+55)+6(66)
【ジョブスキル】<テイム Lv1>
【アクションスキル】<付与:LUK Lv1><ギャンブルアーマー LV3><脱兎 Lv7>
【パッシブスキル:適用3/10】<幸運 Lv1><弾き Lv8><回避 Lv10>
【パッシブスキル:控え0/99】
【称号:適用3/3】<回避を極めし者><死を恐れぬ者><弾きを極めし者>
【称号:控え0/99】
【称号スキル】<回避チャージ Lv10><ペナルティカット Lv10><弾きチャージ Lv10>
【装備】
メインウエポン:なし
サブウエポン:冒険者のナイフ
頭:なし
体:冒険者の服
手:冒険者の指貫グローブ
足:冒険者の靴
装飾:なし
【名前】たかし Lv5
【種族】ゴブリン
【職業】リーダー Lv1
【HP】620/620
【MP】50/50
【STR】7(+0)+0(7)
【VIT】9(+0)+1(10)
【INT】32(+0)+0(32)
【MND】14(+0)+0(14)
【DEX】8(+0)+0(8)
【AGI】9(+0)+0(9)
【LUK】4(+0)+0(4)
【ジョブスキル】<指揮 Lv1><応援 Lv1>
【アクションスキル】
【パッシブスキル】<判断 Lv1><打術 Lv1>
【称号】<同族殺し><生きる術を知る者>
【称号スキル】<同族キラー Lv5><強者の庇護 Lv5【主:エータ】>
【装備】
メインウエポン:なし
サブウエポン:なし
頭:なし
体:ボロ布
手:なし
足:なし
装飾:なし




