10.問題点の解明と謎のゴブリン
大変遅れました。ちゃんと生きていますよ。死ぬかとは思いましたが。
事故にあい、骨折や打撲、完治後の仕事の復帰等で忙しく、投稿が遅れました。心配おかけしました。
感想にてタイトルがよろしくないと指摘を受け、ついでだからと捻りなくゲームタイトルに改名しました。これからよろしくお願いします。
もはや見慣れたハーストン南口。人一倍多く死に戻り、人一倍多く南口の門を出入りしているので、今や衛兵とも手を挙げて挨拶する仲となっている。名前はギャリンという。
最初は仕事してないと思っていたが、実は魔物や犯罪者がハーストンに入ろうとしてきた場合に衛兵が撃退するという仕事で、素通りを許しているのは問題ない人物ということ、犯罪者…わかりやすくプレイヤーキラー(通称PKer)などが通る場合、識別がされているのか待ったを掛ける。大人しく牢屋に入るか、抵抗して倒されて牢屋に入るかの2択になる。
この2択は間違いではない。魔物は召喚士やテイマーの連れている魔物なら特に反応はないが、敵性の魔物や犯罪者は問答無用で撃退する。ちなみに衛兵のレベルは150だった。つまり勝ち目は無い。
現在オープン開始早々なので犯罪者もいなく、取り締まりもないし、魔物も周辺では一振りで死ぬため、緊張感もなく、とても暇なんだそうだ。もはや城壁は要らないじゃというぐらいの強さである。
―――とまあ、ギャリンとは軽いやり取りをする仲になったが、NPCなので俺がもし犯罪者になれば問答無用で牢屋にぶち込まれるだろう。なる気は毛頭ないが。
さて、ギャリンとの経緯もほどほどに、今は問題があるのでそちらを突き止めなくてはならない。問題点は<テイム>が発動しなかったことだ。
やり方は一定範囲内に対象がいる時、<テイム>を発動し、その状態で戦闘を終了させるという流れのはず。なぜ<テイム>が不発となったのか、それは魔法陣が途中で霧散したことで不発を感知できた。なぜ霧散するのか、予想はつく。
MPが足りていなかったというのが濃厚だ。
「あっ」
普通に<テイム>を調べればいいということに気づいた。前にさらっと鑑定はしたと思ったが、見落としがあるかもしれない。ステータスを開き、<テイム>の詳細を開いた。そして驚愕した。
「まじか…。発動できない訳だよ」
【テイム】…テイム可能の魔物に発動可能。別の対象に発動すると、以前の魔物のテイム効果が切れる。戦闘終了、或いは特殊な状況下にてテイムが成功する。なお、戦闘時は最後に残るようにしなければならない。テイムする魔物が増えるほど、消費MPが増える。 消費MP:50
ビンゴでした。あと10のMPが必要だったようで、MP不足により魔法陣が霧散してしまったのが原因だった。MPを上げないとテイムもできないのか…。俺の場合、単純に半分になっている弊害がある所為でもあるが、問題は今からレベルを4レベル上げなければならないことである。元のMPが80なので、1レベルで5上がる計算なら、レベル6で使用できるようになるが…。
時間のかかる狩りをひたすら続ける必要があり、レベルも上がれば上がるほど時間がかかるようになる。しかも、テイムの数が増えるほど必要MPが増えるので、次のテイムも怪しいものである。また、装備によるMP補正もあるが、防具にしても要求ステータスは存在する。つまり、LUK以外のステータスが初期値の俺は現状最強装備の初期装備しか装備できない。
まさかこんなところで立ち往生するとは思ってもいなかった。しかし、文句を言ってもレベルは上がらない。レベル6までやるしかない。
考えてもしょうがないので、更にレベル上げという名の修行へ向かうことに。門を通過する際、ギャバンが頑張れよ~と呑気なエールをくれた。しかし、俺のやる気は上がらなかった。
――――――――
陽は落ち、辺りは闇に包まれていく中、エータは未だ戦いの中にいた。あれからレベル上げを昼飯も時間も忘れてひたすらに行っていた。一度も死なず、最初の頃と違い連戦連勝である。現在のエータのレベルは5。レベル4までは直ぐ、ではないが、まだ上がりが早かった。しかし、4から5、5から現在まで、かなりの時間を所要していた。それは必要経験値の増加と、一定の狩り速度によるものであった。
しかし、目標であるレベル6まではもう目の前に迫っていた。集中してアドレナリンが放出されているのか、疲れはあるものの、まだ余力があった。無論、上がりきるまでは狩り続けるつもりだ。
作業の如く、目の前のゴブリンを斬り伏せる。勿論、回避チャージは最低限行っている。ゴブリンが光の粒子となる中、俺は今日買ったランタンの灯りを点けた。これにより、視界が一定保たれた状態になった。
ランタンを腰にぶらさげ、次なる獲物を探していく。何気にランタンを灯しての戦闘は初めてなので、少々不安ではあったが、案外ランタンはしっかりとしていて、激しい動きで揺れまくることは無かった。
夜になると、視界による難易度増加だけではなく、魔物も複数で出現するようになる。ここ南周辺では、主にゴブリンが複数で現れることが多い。しかし、ゴブリンも夜に目は利かないようで、松明を持って動いている。はっきり言って丸分かりである。しかし、それはあちらも同じである。
少し歩むと、複数の灯りを発見した。その数3。まだ視界は真っ暗では無いため、辛うじてゴブリンだということが分かる。俺は武器を出し、ゴブリンに近づいて行く。まだ1対多の経験はないものの、ゴブリンの動きは単調だ。愚直なまでに向かってきては持っている装備で殴り掛かるだけ。場所を把握し、注意していればそうそう攻撃が当たることはない。
こちらもランタンの灯りがあるため、ゴブリン達はその灯りにつられてこちらへと近づいてくる。変わらず、武器を振り回しながら。
俺は今までと変わらず、まずは回避のスタンスをとる。高性能のランタンのため、意外とはっきりとゴブリン3匹を捉えることができた。視界については問題なくなった。あとは対複数が初めてなので、捌き方を身につけなくてはならない。とりあえず練習の為、ゴブリンたちに付き合ってもらうことにした。
ゴブリン3匹はやはり真っ直ぐに武器を振り回して俺めがけて走ってくる。ゴブリンA、B、Cと名付けよう。ちなみに松明とは別に棍棒をもち、こん棒だけを振り回してくる。松明も振ればいいのに。
Aが一番俺に近く、続いてB、Cの順だ。Aの攻撃を横にステップして躱す。Bが軌道を変え、さらに攻撃を横にステップして躱す。Cが更に軌道を変え、こちらを攻撃。それをナイフによって弾き、後ろに跳び退いた。Aが体勢を整え、こちらに向かってくる。それを回避するというループだ。ゴブリンはスタミナ切れを起こさないため、こちらが大きく距離を広げなければリズムはほとんど変わらない。
回避と弾きを一定のリズムでやるため、物の数分で簡単に捌けるようになった。続ける事15分。とうとう物足りなさを感じ始めてすら来た。もっと変則的なヤツがいればまた違うのではと思ったが、ここにはそんなやつは出ないので、何かないかなーと思いながら辺りを見るが、特にめぼしいものは――――あった。少し離れた所に、灯りが2つ。そう、ゴブリンである。俺はABCの攻撃を捌きつつ、徐々に近づいていく。そして、やはりこちらへと来るゴブリン2匹。
ゴブリン5匹となり、難易度も上がったところで、また"作業"を繰り返す。回避、弾き、弾き、回避とこちらのパターンも変えつつ、ゴブリン達の動きや軌道を変えていく。そんなことを繰り返していくこと15分。やはり慣れてしまい、また物足りなさを感じ始めてきた。
エータの悪い癖、それは集中しすぎるとそれに没頭することである。
2000ピースのジグソーパズルを買い、始めると完成までやってしまう。流石に生理現象には抗えないが、誰かに止められない限りは延々と続けるぐらいには没頭する。しかも物足りなくなると、難易度を上げていく。ゲームで言えば両手を使うゲームで片手プレイしたり、足プレイしたりと、限界まで突き詰めていくタイプである。
今日一日、飽きもせずに戦闘(笑)をしていたのもコレが原因となっている。だから調子に乗ったエータは難易度を上げていき…。
――――気が付けばゴブリンは15匹になっていた。
ゴブリンが全員松明を持っている為、すでにかなりの明るさとなっていた。ランタンを消しても問題ないぐらいである。そして、絶え間ないゴブリンの攻撃を捌き続けるエータ。最初の3匹から既に2時間は経っていた。ちなみにゴブリン達は4匹すでに倒れていた。エータは何も攻撃を加えていない。ゴブリン同士による殴りによるダメージによるものである。当然経験値は入らない。これにより魔物同士でのフレンドリーファイアもあるということが判明した。しかし、味方を倒したゴブリンはレベルが上がっていた。何と、レベル5である。南では1~4までしかいなかったが、こうやってフィールドレベル上限を突破したゴブリンは、少し様子が変わったようだ。
ゴブゴブ言い始めた5ブリン。突然の発声だった。その声に呼応したのか、ゴブリンたちの動きが変化した。真っ直ぐな動きから、迂回を始めるようになったり、タイミングを合わせてきたりするようになった。
それらを上手く捌きながらも、5ブリンを凝視してみた。
【ゴブリンリーダー Lv5】 テイム可能
【HP】600/620
【MP】50/50
どうやらリーダーと化したようだ。動きがよくなったことから、こいつがゴブリン達をまとめ始めたと推測できる。流石に15匹相手はこの状態だと厳しいので、数を減らすことにした。 攻撃してきたゴブリンを弾き、たて続けにナイフで攻撃をお見舞いする。今まで溜まりに溜まったチャージが炸裂し、過剰ともいえる一撃によりゴブリンが1匹、光となって消えた。
しかし、まだ14匹と数が多い。回避のチャージも戻り、溜めなおしながら捌いていかなければならない。だが、数が多いことで回避の頻度もまた多い為、直ぐに致命のレベルに到達ができる。
「<脱兎>」
動きが変わったことで、思わぬところから攻撃が来ることが多くなった為、<脱兎>を発動して回避・迎撃を繰り返す。MPが少ない為、乱用はできないが。
一撃必殺を繰り返す内に、ゴブリンの数はメッキリと減っていき、ついにはリーダーだけとなった。このリーダー、最後の1匹になるまでゴブゴブと指示するだけで、自分は動いていなかった司令官タイプだった。統率は戦いの中でも大切なことであるが、もはや残り1匹の手下ゴブリンになっても指示だけとは。普通は加勢するでしょう。
と、ゴブリンリーダーの感想は置いておき、まだリーダーが残っているし、何をしてくるか分からないため、気を引き締めていく。
ともあれ倒すには攻撃を回避しなければならない。ナイフを構えゴブリンリーダーの動きをみる。しかし、ヤツは武器を構えていない。それどころか武器を手放し地面に頭を擦り付けゴブゴブと悲鳴?を上げていた。一体どういう事だ……。
困惑している俺、命乞い?をしているゴブリン。よく分からんが、これはもしかするとテイムの流れではなかろうか。しかし、今の俺はレベルが足りず、テイムが発動できない。ともあれば、諦めるしかない。
ナイフをしまい、命乞いゴブリンから離れるべく踵を返した。戦闘時に対象から一定距離離れれば、戦闘は終了するのだ。どうせ油断させるための罠だろうと思ったが、何より無抵抗のヤツに攻撃するのも気が引けた。それでゴブリンから離れることにしたのだが…。
ヤツはあろうことか俺を追ってきた。武器は持たず、一定の距離を保ちながら、だ。俺が走ればヤツはその短い足で必至に一定距離を保とうとする。
俺が止まればヤツも止まる。逆に近づいてみれば、ヤツはカモンとばかりにその場に止まっていた。何ならちょっと嬉しそうである。意味が分からん。取りあえず様子を見るか。
立ち止まり様子を窺うも、依然として距離を保つゴブリン。敵意はないようだ。ついでにミニマップもヤツを示すマーカーがすでに赤色から青色になっていた。所謂味方である。そして、青色になっている為か、戦闘は終了していた。気がつかなかった。そして何故青い。
そして、戦闘終了により経験値が入り、俺のレベルが6になっていた。なんとテイムが可能になりました。これでスライムがテイムできるぜ!と内心ガッツポーズをした。




