完成した俳句
・二十九で嫁ぐ従姉や福笑い
「一気に俳句みたぁになっとるし!」
「俳句みたいじゃなくて俳句なんだよ!」
「でもわたし、中七の『や』がな何なんかよぉわからんのやけど……」
「その『や』は『切れ字』って言って、俳句の意味をそこで一旦切る働きがあるんだよ」
「意味を切る?」
「さっきの『従姉は嫁に』だと、下五の『福笑い』と意味がつながっておかしくなっただろ?」
「ほぉやね。やもんでわけのわからん事になってまって……」
「そこで切れ字の『や』を入れて、中七と下五を区切ってやったんだよ」
「ほえぇ……。中学のころは聞き流してたけど、ユート本当に俳句できるんやね」
「……」
「ちなみにこの詩の意味は——」
「目の前に29歳になる従姉がおって、結婚できるのを喜んどりゃあすんやら。それで最後に福笑いをやっとる所が出てきておめでたいなぁってことやない?あ、しかも従姉も笑顔になっとりゃあすって意味にななるんやない?」
「……驚いたな。自分で詠んだ詩とはいえ、ちゃんと鑑賞できてるじゃんか」
「自分で俳句は作れんでも、ユートの詩をずっと聞いてきとったでね!」
(くっ!な、なんでこんなに顔が熱くなるんだよ!聞き流してたとか言ったくせに)
「ユート?どぉしたの?」
「なんでもないよ!」
「ほぉ?……ほれじゃあ約束守ってね」
「約束?なんだよそれ?」
「ユート、幼稚園の頃に言ってくれたやら?『アイカがちゃんと俳句詠めるようになったら俺の嫁にしてあげる』って」
「はぁ!?誰がそんな事……
『アイカちゃんが僕といっしょに俳句詠めるようになったらお嫁さんにしてあげるよ!』
『はいく〜?わたし馬鹿やもんでよぉそんなのやらんよ?』
『だったら僕が教えてあげるから、アイカちゃんはしっかり聴いてて!』
『うん。わかった!』
「……」
「あ!その顔は思い出したんやら!」
「な、なんのことだか……」
「うそこけ!しっかり顔に出とるし!」
「か、仮にそんな約束してたとしてもだな、そんなのもう時効だ!!」
「なんやの?こんなにナイスバデーに育った幼なじみと結婚したないの?」
「付き合いもせずに結婚とか気が速すぎるだろ!」
「そぉか!ユートは私と付き合ってから結婚したいんやね」
「どうしてそうなった!?」
「とにかく!その約束が生きてたとしても!今の俳句は俺がいたから作れただけであって、決してアイカがちゃんと作れるようになったわけじゃない!」
「う〜ん……ほれじゃあ私がちゃんと作れるようになるまでユートが面倒見てね」
「どうして俺がそんなこと……」
「『僕が教えてあげるから、アイカちゃんはしっかり聴いてて!』やったっけ?」
「うわぁあ、なんでそんなしっかり覚えてんだよ」
「だって初めてのプロポーズやったんやもん。ほれじゃあこれからもよろしくね、ダーリン♥」
ここまで読んでくれて本当にありがとうございました。
年末年始に忙しくしてたらなぜかこの話が思い浮かんで頭から離れなくなり、暇のできた今日一気に書き上げてしまいました。ですのでこれから先アイカとユートがどうなるかは私にもよくわかりません。
しかし俳句集団「いつき組」の一員として、一日一句を目安にこれからもエピソードを作っていけたらなと考えています。もし俳句に関する感想や質問、指摘、「私の句を作中で使って」などがありましたら『感想』や『メッセージ』をご利用ください。
それでは『東濃弁女子と学ぶ俳句』をこれからもよろしくお願いします。
次回、ユートはアイカとの約束を守るのか!?