天才詩人川田妙子のぐるぐる人生相談2
2とついてるからって続いてるというわけではない。
インタビュアー…コレステロール高峰
回答者…川田妙子
ー…とのご相談なんですが、いかがですか?
「うん。たまにさ、頭の中で音楽を完全に再現できるとき…再現というか、頭の中のジュークボ…携帯音楽プレーヤーとかスマホで選曲すると、まるでイヤホンをしてるみたいに脳内に響いて聴こえる感覚あるでしょ?」
ーわざわざ言い直さなくてもジュークボックスでいいじゃないですか!笑
「おれの読者、若い子がおおいんだよ」
ー若い子だってジュークボックスのたとえぐらいわかりますよ。かたちは変われど現役のものですしね。雑貨屋さんとかにも小さいのありますし。むしろ知らない方が変ですよ。
「へえ。若い子にとってのジュークボックスなんて、おれらぐらいの年のやつにしてみれば…木炭車みたいなもんじゃないの?」
ー…SLですか?
「いや、ガソリンの代わりに炭をたいて走らせるの」
ー石焼き芋の軽トラみたい、な?
「そんな大袈裟なもんじゃない。車体はまあ普通の車。おれがガキの頃にはもうそんなの走ってなかったけどね。年長者から話は聞いてたよ。そんな感じじゃないの?」
ーはあ。ま、ジュークボックスは若い子だってわかるはずです。
「若い子って、8歳前後も含まれるのよ?」
ーなんでそんなにジュークボックスの認知度にこだわるんですか! しかもなんですか8歳前後っていう括りは。笑
「おれは仕事の幅が広いから。半年前に赤ん坊の読み聞かせのための詩だって書いて本にした。好評なんだよ。読みはじめるとなにかむずかしい顔してすぐ寝るって。読み聞かせの時期の赤ん坊なんて、なんぞわからんお経でもちょっとはキャッキャ言うっての! むずかしい顔してすぐ寝るって、読み聞かせになってないじゃん! 喋るの遅れるよ。笑 だから1年後ぐらいが怖いんだ。うちの子まだ喋らないんですけどってクレームきたらどうしようって」
ーあはは。笑 話を戻しまして、脳内で音楽が響く、とは? 鼻歌のようなものではなく?
「ふだんは、頭の中で音楽かかるときって、なんか実際に聴くものよりも、なんだろうな、膜がはっているというか、高い再現性があってもリアルではないし、記憶があやふやだと自分でメロディを補填したり、なんなら歌手の歌声が自分の声だったりするじゃん?」
ーまあ、はい、そうですね。
「でもなんだろう、ふとした瞬間、完全に自分の思考が介在しない、自分でイジれない、完全に独立した、まさしくイヤホンで聴いてるようなホンモノが鳴るときあるでしょ?」
ーえー、ちょっと何言ってるかわかりませんが…汗
「え? ないの?」
ーはい。記憶にございません。笑
「君、めずらしい人だね」
ーどうなんでしょう、私だけその能力が欠落してるのかどうか。完璧に再現ですか…。
「そう。完全に頭の中で思考や想像とは独立した音で、記憶の中にある音楽が完璧な形で鳴る。映像はなくてね。たぶん、おおくの人はその感覚がわかる」
ーそうなのでしょうか…。絶対音感というわけではなく?
「ちがうよ。おれ絶対音感じゃないし」
ー音の直感像記憶能力みたいなもんですかね。
「いや、だから、そんな特別視するようなもんじゃないって。笑 なに? 元シンガーソングライターのプライドがそうさせるの?」
ー元じゃないですよ! いまもです!
「いまもって、君いまだに楽器のひとつも弾けないじゃないか」
ー楽器はリコーダーで諦めましたからね。穴を半分だけ塞がないとでない音があるってなんですか。そんなの男のやることじゃない!
「どういうことよ。笑」
ー楽器は女体なんですよ! もっとガバッとさせろ!
「下唇だけをはむなんて女々しいことやってられるか、と。笑」
ーそうです! ガバッといって歯をガチガチ当たらせながら歯ぐきの裏をベロベロいきますからね!笑
「そんなんでよく作曲できるね」
ー楽器のできる知り合いに、大まかなイメージを言ったり書いたり、鼻歌で伝えると、後日できてるんです。
「できてるんですって君。笑 例のゴーストライター騒動とだいたい同じだよね」
ーええ。でも僕は隠してませんから!
「クレジットはしてるんだろ?」
ーしたり、しなかったり。笑
「え? 金の流れはどうなってるの?」
ーそんなことを心配するほど売れないから大丈夫です!笑
「そうか。笑 でも、一曲だけそこそこ売れたんだよな。なんだっけ、あのクソみたいなやつ」
ーひどい!笑 あれは作ったというよりテレビ番組の企画で作らされてやけになったもんですから、まあ、どうでもいいんですけど。
「そんな言い訳ばかり口から出すから、大成しないんだよ。おれだって世に出たとっかかりは似たようなもんだ」
ーでも、タイトルが、へっこき節考、ですよ? それは決まってましたから。コント番組のコントで、大事なところで屁をこく美人ってのがありまして、その女のテーマソングです。
「うん。思い出した。娘とよくみてたよ。娘はテレビが好きでな。あれだろ? むかし、小さな村が大きな合戦に巻き込まれたときに一発の屁をこいて村を救ったという美人の伝説がへっこき節となって今世まで伝わっていてってやつ」
ーそうです。現代を舞台に、その伝説の人物の生まれ変わりとされる美人が屁をこくことにより諸問題を解決していくってコントです。それをなんでか劇場版にするっていうんで、なんでか僕に話がきたんです。
「どんなのだっけ?」
ーぷっぷくぷっぷく屁をこいて〜締まりの悪い女だよ〜
「あー。いまじゃOKでないよな」
ー当時も、ギリギリ…というか綱渡りでしたよ。結局医師会かなんかからのお堅いクレームでそのコント自体終わりましたしね。笑
「生理的に無理、じゃなく、生理学的に無理、か。じゃあもうどこかで曲がかかるってことはないんだ。笑」
ー一発屋の一発がいわくつきになるっていう…。笑
「あ!」
ーはい?
「ちょっと黙って」
ーは、はい。
「………あー、これだよねー」
ーえっと?
「うん。いまちょうど鳴ったんだ」
ー屁がですか?
「ちがうよ!笑 まあでも、屁なんだけど。いまね、頭の中で君の…なんだっけ?」
ーへっこき節考?
「そう、それが完璧に鳴ってた。久しぶりだなこの感覚は」
ーそれは光栄ですね。
「せっかくの楽しい感覚を台無しにされたようでまこと苦々しくおもう。おれの脳内という文学史上比類なき聖域に、何をしてくれたんだ君は」
ー僕のせいですかそれ?笑
「君もあれか? え? おれのこのかわいい脳みそになんらかの影響を与えようとして、通りすがりに禅問答みたようなことを仕掛けてくる輩のたぐいか? え?」
ー先生がかってに思い出しただけでしょ!笑
「…娘と一緒にそのコントを観に映画館へ行ったことあるな。男子一生の不覚だ」
ー先生があんなものを観に行ってただなんて、大事件ですよ!笑
「娘といえば、そういえば、ナボナってわかる?」
ーえ? あのお菓子のホームラン王の? どら焼きの中にクリームが入ってるようなお菓子の…。
「そうそう。それで、あれがナボナなのかどうなのかわからんけど、ナボナっぽいやつがコンビニのレジ近くなんかで売ってるでしょ。ナボナそっくりのやつ。そっくりなのかナボナなのか…あれは…ナボナ?」
ーいやちょっとわかりかねます。笑 でも、ありますね。あれ。
「あれをたまに買うんだけど、毎回がっかりする」
ーどういうことです?笑
「おれね、それこそ君が言ったような、生クリームどら焼きとか、大福の中にクリームが入ってるやつが好きなんだ。あんこも最近好きになったんだけど」
ーはい。生クリーム系のスイーツの差し入れをもらってる先生の姿をよくみます。笑
「くれるのはありがたいんだけど、それはそれで困ってるんだよ。だいたい個人的に親しくない相手方に生クリーム系の生菓子を先方の了解なしに差し入れとか手土産にしちゃダメだろ。笑」
ー差し入れはともかく、仕事関係の手土産でとなるとそうですね。それがよくあるってことは、完全にあいつには生クリームを与えておけというマニュアルが流通してますね。笑
「許されるならカタログギフトがいい。ああいう宝くじの少額当選金を換金しに行くような、やったら得するのはわかってるけど面倒くせえなと巷で思われてる作業を、おれはまったく苦にしない。どうせマニュアル化されるならそっちがいい。一番安いやつでいいから。近ごろのは募金なんかもできるんだよ」
ーはは。笑 それで、ナボナの…。
「ああ、あれをたまに買うんだけど、一口食うたびにがっかりする。あれ嫌いなんだ」
ーじゃあなんで買うんですか!笑
「だっておいしそうじゃない?」
ーいやいや、おいしそうですよ?
「でも、食べる前にイメージしてた通りの味がしない。おいしいどころかむしろ嫌いな味がする。モサモサしてるし」
ーえー、ちょっと意味がわかりません。ならなんでそんなのたまに買うんです?笑
「だから、おいしそうじゃない?」
ーでも、嫌いなんですよね?
「うん。一口食べたら激しく後悔するね。まただまされた! って」
ーじゃあなんで買うんですか?笑
「だっておいしそうじゃん」
ーええ?(困惑)
「ま、君の言いたいことはわかるよ。おれもさすがに学習してね。あれはおれの好物どんぴしゃりの見た目をしているが、イメージとは別の味がするぞ、手にとってはいけないぞ、だまされるなよ、って喝をいれてる。そしたら最近娘が、ダイエットでもしてるの? ってきいてきた。してないよって言うと、え? でも好きなあれ全然たべてないよね、どうしたの? って。愕然としたよ。誤解されてたんだ。誤解されたままだったら、おれの死後、仏前にしょっちゅうあれが供えられてたんだと思うと、ちょっとふるえるね。笑」
ーきっと生前の好物として、後年になってもファンは墓前にあれを…。笑
「桜桃忌とか石榴忌とか、あとなんかいろいろあるでしょ。文学忌っていうの? 作家の命日に名前つけるやつ。そうなるとおれの場合、ナボナみたいなやつ忌、になってた可能性すらある」
ーいひひひひひ。いいじゃないですか! ナボナみたいなやつ忌!笑
「死んだあとにどうなろうと別にいいっちゃいいんだけど、君だって自分の墓に君の代表作としてへっこき節考の歌詞が彫られたら、釈然としないものがあるだろ?」
ー死後に、おいっ! ってツッコミを入れられるんならギャグとして成立するんでかまわないんですけどね。笑
「君の墓の場合はそれで済むけど、おれの場合娘の気持ちを考えるとツッコミいれられる自信ないな。笑」
ーよかったですね! 誤解がなくなって!笑
「ほんとよかった」
ーそれで、肝心のご相談に関してなんですが…。
「妻が我が家で育てているサボテンに名前をつけようとしているが、1年間悩んでもこれという名前がつけられない。理由をきいていくとどうやら過去に名付けた我が子の名前に後悔している様子。是非名前をつけて欲しい。またはなにか命名のヒントとなるものを。ps…子供の名前は川田妙子なる詩人の詩集のなかから妻が拾ってきた言葉です。といった内容の、34才一人息子のパパさんからのご相談だったね?」
ーええ。
「相談内容があまりにも悲しくて、ついつい現実逃避のために無駄話をしてしまったよ」
ーでしょうね。笑
「なにかな? ものによってはウンコとかけっこう出てくるけど…」
ーなんとも言えないものがありますね。
「ここはあれかい? しかしその川田妙子なる詩人はけしからん! とか言ってお茶を濁すパターンかね?」
ーそんなことおおっぴらに相談されても困ります。笑
「そのぐらいの年代の女の方に人気があるのは『南瓜饗応詩』なんだけど」
ー先生が女にモテたくてつくったと言ってはばからない詩集ですね。
「うん。ほんとは、かぼちゃのレシピ、ってタイトルだったんだ。新妻が料理本とまちがって買うんじゃないかって。笑」
ー出版社の社長さんから、ほんとにまちがわれたらどうするんだ! って理由でNGでたんですよね。笑 ほんと、先生は天才のくせして発想がセコい!
「一応、販売する側にまちがわられたらってことらしいんだけどね」
ーあれ、海外でも人気らしいですね。
「そうなんだよ。アメリカのどっかの市から、ギネス記録の世界一でっかいかぼちゃから採れたタネです、なんてものが贈られてきたよ。その市の公式な文書で。でもおれかぼちゃは好きじゃないんだ。笑」
ーただ女にモテたくて。笑
「うん。そのころにはすでに世が天才だと認めてたし、結婚してるし、それまでモテてこなかったってわけじゃないんだけど、なんというかな、当時日本の詩をとりまく業界にはいろいろと思うところあって、個人的に嫌気がさしてたんだよね。笑」
ーなるほど、ある意味料理本として売ってしまった方がよかったと。
「そういうところもある。笑 でも、モテたいがためにつくったのはウソじゃない。そのためにずいぶん試行錯誤した。モテるために苦労したことはないけど、これをつくるのにはずいぶん苦労したもんだよ」
ーえー、それで、回答の方は…。
「ご自愛してくだされば幸いです。以後、気をつけます」
ーまあ、そういうしかないですよね。笑 サボテンの名前の方は?
「名前? おれ名前をつけるの苦手なんだよ。娘の名前もかみさんがつけたし」
ー以前飼われていた犬のジグはどういった経緯で?
「ジグは尻尾がちょっとおかしな曲がり方をしててね。それを見た娘が、ジグザグのジグみたいな尻尾だね! って言うから、まあナンノコッチャわからないんだけど、じゃあそれでって」
ーサボテンの写真もなくて種類もわからないんですよ。
「じゃあ、持ち越しだね。笑」
ーえー、ということで、ぐるぐる人生相談初の持ち越し!笑 34才一人息子のパパさん、またよろしくおねがいします!




